逢魔が時の神隠し

ほの

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僕のこと

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時が止まったかと思った。それくらい衝撃的だった。僕とこの鬼が初対面じゃない?

「う、うそ。だって、あなたみたいにカッコイイ人忘れるわけがない。」

自分で言うのもなんだが、僕は記憶力がいい。初対面の人の名前を覚えるのが大の得意で、中学や高校でクラス替えが行われた際、誰よりも早くクラスメイトの名前を把握していた。

「最高の褒め言葉だな。そうか。俺はかっこいいか。」

鬼が嬉しそうに笑う。なんて破壊力のある笑顔なんだ。心臓がドキドキと音を鳴らす。仕方ない。これは不可抗力だ。この鬼が魅力的すぎるのが悪い。

「また顔が真っ赤だ。あぁ。唯は本当に可愛いな。可愛すぎてなんでも答えたくなってしまう。だが、これに関してはもう教えることはない。自分で思い出してくれ。」

鬼が、俯く僕の顔に触れ、顔を覗き込んでくる。触れられているところが熱い。こんな感情はじめてだ。なんで?恐ろしい鬼なはずなのに。僕とこの鬼との出会いについてもっと詳しく聞きたかったのに、言葉を紡ごうとしてもドキドキして声がうまく出ない。

「俺のことを意識してくれてるのか。嬉しいな。ずっと見ていたいが、そうはいかない。なぜ唯を連れ去ったのかを説明して、唯の安全を早急に確保する必要がある。蓮花は唯を連れ去る時なにか言っていたか??」

変に意識してしまって声が出ない僕の頬を撫ぜながら、鬼が問いかけてくる。ずっとこのままではだめだ。いったん意識しないようにして、ちゃんと僕の状況を知らないと。それが知りたかったんだろ。しっかりしろ、僕。

「蓮花ちゃんには、僕が美味しそうだから連れてきたと言われました。でもどういうことか分からなくて。」

長い時間をかけながら鬼の問いに答える。

「はははは。言葉が足りないのは蓮花らしいな。そうか。それは分からなくて当然だ。ちなみに、自分の両親のことはどこまで知ってる?」

「何も知らないんです。」

昔から両親のことを聞かれるのが苦手だった。両親のことを何も知らないことが、両親について答えたくても何も答えられないことが、無償につらくて、泣きたくなるような気持ちになるから。

「そう悲しそうな顔をするな。答えにくいことを聞いて悪かった。唯が両親のことを知らないのなら、唯の安全を守るために、周りの人間に意図的に隠されていたんだろう。知らなくて当たり前だ。恥じることではない。」

鬼が紡いでくれる言葉一つ一つが温かく、僕の心を満たしていく。両親について聞かれた時「自分の両親のことはあまり知らない。」と答えると高確率で、詮索され、不思議そうな顔をされてきた。でも、この鬼は僕が知らないことを、恥じることではないと肯定してくれる。ずっと欲しかった言葉をくれる。

「知らないのなら今から知ればいい。唯。驚かずに聞いてくれ。単刀直入に言う。唯は純粋な人間じゃない。母親は人間、父親は妖。唯は人間と妖とのハーフだ。」

温かい気持ちになっていた時、衝撃的な鬼の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。
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