逢魔が時の神隠し

ほの

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僕のこと

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「は?」

一生懸命言葉を紡ごうとしてでたのは、この一言だった。確かに、ラーメン屋のおじいさんから、僕が混じっていると言われた時、父親について色々な想像はした。でも冗談のつもりだった。まさか、本当に妄想の中のようなことが現実に起こるなんて、思ってもみなかった。

「驚くのも無理はない。だが信じて欲しい。俺は唯に嘘はつかない。唯の父親は人間ではなく、妖だ。」

この鬼が僕に対して嘘をつかないということは、なんとなくわかる。根拠はないけど。

「でも、なんでそんな、妖と人間って、まずどうやって出会うんですか。」

「出会うのは簡単だ。逢魔が時おうまがとき、人と人ならざるものの世界が交差する時間。この時間に、あやかしが門をくぐり、人間界へ渡ればいい。」

「門??」

妖鬼山ようきさんという里山は知ってるな。あの山はこっちの世界にもある。人間界と俺達の世界の共通点。逢魔が時に、妖鬼山ようきさん妖鬼門ようきもんという門が現れ、妖達はそこを渡って人間界にいく。」

〝原因不明、逢魔が時に起こる神隠し”

最近話題になっていたニュース。催眠術にたけた犯人の仕業ではなく、あれは本当に妖達による神隠しだったんだ。

「全ての妖が人間界へ渡るわけではない。妖が人間界に行くにはリスクがつきものだ。元々、人間の世界と妖の世界は、神がわけて作った、交わることが許されていない世界。人間界で妖の姿を晒してしまえば、天罰が下り、呪われる。実際に、天罰がくだり、死にたくても死ねず、もがき苦しむ妖達を、俺は見てきた。」

鬼の言葉に息を呑む。そんなにリスクを背負って妖達が人間界に行く理由はなんなんだろう。

「妖達は、なぜ、人間界へ渡るのですか?そのような大きなリスクを背負う価値が、人間界にはあるのですか?」

「人間界に行くことに価値があるわけではない。人間に価値がある。俺たちにとって人間は、最高の治療薬なんだよ。昔から、俺達の世界では、人間を食った妖は、不老不死になるといわれている。」

人間が妖達の最高の治療薬??じゃあ、人間は知らず知らずのうちに、妖達に食われるリスクを背負いながら生活しているってこと??想像したこともなかった。まって、隼人はやと。隼人が人間界にいる。助けに行かないと。隼人は妖鬼山に興味を示していた。近づいちゃダメって言いに行かないと。

「唯、大丈夫だ。案ずるな。妖達にとっての最高の治療薬が人間だというのは、何も今わかったことじゃない。でも、唯の世界で、神隠しが話題になり始めたのは最近だろう?それは何故だと思う?妖達は食いたくても人間を食えないんだよ。過去に、大怪我をした妖が、人を食い、あっという間に怪我を治したという事例がある。でも、その妖は、人間を食って、すぐに死んだ。人間を食べたことに神が怒り、天罰がくだったんだ。」

恐怖で震え始めた僕の体を撫でながら、鬼がいう。確かに、原因不明の神隠しがニュースになり始めたのは、最近のことだし、過去に人間が跡形もなく攫われたなんて事件はなかった。じゃあ今になって何故、急に妖達は動き出したんだ??

「過去に天罰が下り、人は食べられないと分かったはずなのに、今になって、妖達が動き始めたのはなぜなんですか??」

「妖達は探してるんだよ。混血の血を。」

鬼は僕の目を見ながら、ゆっくりと語り出した。
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