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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-3 ダンジョンの厳しさ
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「先輩、それってラビワンのどこの階層で出るの?」
「ああ、もう最奥の底に近いところだな。
その深奥まで潜れるパーティというのは年間で一つか二つといったところか」
ダンジョンの深奥とは、そこまで難易度が高い物だったらしい。
そこは俺なんかには縁のない凄まじい場所だったのに違いない。
「げ、それはうちのパーティでは無理だったわ」
「しかも、その部屋に入ったら生還率五十パーセントといったところだろうな。
それで当たりは百に一つ程度と言われるのだから敬遠もされるが、あれを敬遠しているようでは踏破者にはなれん」
「そんな下層の下へ行けるような凄いパーティでも⁉」
「ああ、下層はお前が想像するよりも奥が深いぞ。
あのダンジョンの全体の七割くらいが下層と呼ばれる。
だからラビワンの協会ではダンジョンの半分を、安全のために、もう深層として区切るべきではないのかという議論さえある」
普通ならば、もっと区切り方が違うのだろうが、さては多くのパーティから見て厳し過ぎるから、下層をそういう配分にしてあるんだな。
俺は上級冒険者パーティと一緒でも、あのダンジョンの三割程度しか行けてなかったわけだ。
自分としては、もっと下まで行っていたつもりだったのだ。
「うっわあ、ドン引き~。
そんなもの、さっさと区切っておけばいいのに」
「区切ろうが区切るまいが、そこまで到達できるパーティ自体がそうそういないので必要ない。
まあ協会としても、毎回議論の度にそういう結論を出すようだ」
「うはあ……」
こいつは、そこを潜り抜けて踏破者になった怪物なのだ。
俺って最初に先輩に会った弱い頃に、よく殺されずに生きていたな。
この人が弱い者に興味のない、妙に拘りのあるタイプのストイックな変態で本当によかった。
弱い物は容赦なく踏み潰していくタイプのバトルジャンキーも中にはいるそうだから。
「お前、下層はどこまでいった?」
「ほんの上っ面だけだよ。
そうか、ブライアン達はそういう話も知っていたんだな。
どうして上級者パーティなのに、いつも下層三層までで引き返すので不思議に思っていた。
メンバーの誰に訊いても首を竦めるだけだったんで」
だが先輩は、彼にしては珍しく愉快そうに、豪快で楽しそうな笑いを上げた。
あれ、今のそんなに笑いのツボに入るところだったのかな。
「賢いな、お前のいたチームは。
ブライアン、死なすには惜しい男だったか。
お前のように美味しい男を育ててくれる、いいマネージャーだったのに」
「それが、あんたの冒険者パーティ・マネージャーに対する唯一の評価なんだな……」
そういう話の流れからすると、つまり下層四層が相当ヤバイのか。
「リクル、下層の四層はいわば上層の五階に当たるのさ」
我が親愛なる師匠のエラヴィス閣下から、そう注釈が入った。
ああ、なるほど。
新人にとってのオークに相当する、上級冒険者にとっての第一の鬼門なのか。
そして強者のドワーフでもあるバニッシュからも、そこにいる魔物は高い評価のようだった。
「そこの魔物はのう、まず魔法が通用せん。
その上、また強いのなんの。
上級冒険者になった強者でも一対一で相手をするのを嫌がるほどの相手、それがドラゴナイトじゃな」
ドラゴナイト!
それは俺が知る限り、人型魔物の中では圧倒的な存在だ。
協会の資料で見た事があるだけで、俺もまだ実物を一度も見た事がない。
とにかく固い、とにかく強い、魔法は無効で打撃もなかなか受け付けない。
まるでドラゴンの皮を着た人間のような魔物で、向こうは魔法を使い、圧倒的なパワーで『魔法武器』さえも使いこなすと言う。
「まあ、そいつが洗礼代わりにオークの如くに群れをなしてやってくる。
ちょうど、お前が上層の五階でやられていたみたいに応援も呼ばれるしのう」
「げ!
あのレベルでドラゴナイトが出てくるの?」
それこそは、まさにデスパレード以外の何物でもない。
うちのパーティでは実力に見合わなかったな。
ここみたいな本当の上級冒険者チームは、俺のようなヒヨッコなど連れ歩かない。
「まあ、そういう事だ。
上級冒険者ともなれば、当然強力な魔法使いが前面に出てくるわけだが、それがあそこでは仇となる。
たまに魔法使いしかいない阿呆な上級パーティがいるが、そんなものは全滅必至のパターンだな。
リクル、鍛錬は大事だぞ」
結局それが言いたいのか、マロウス。
そうか、それでブライアン達は有用なスキルを持ったメンバーを集めてからチャレンジする予定だったのだな。
道理であれだけ壮絶に肉弾戦闘で扱かれたわけだ。
「それじゃ、どうやってそこを突破するんだよ」
「それは基本的には数パーティでレイドパーティを組むのじゃな。
数の論理で、力任せに押し通るのじゃ。
通常は超大物を倒す時に組むか、協会からの特別な要請で組む物だが、あそこに限っては皆初めからそうするのじゃ。
そうやってだんだんと力をつけていく」
だが俺には一つ疑問があった。
「ちなみにあんた達は?」
「普通に肉弾突破したが、それがどうかしたのか?
だから、鍛錬は大事だと」
「あんたらに訊いた俺が馬鹿だった……」
「ドラゴナイトか。
あれは柔らかかったなあ。
話にもならんよ」
「先輩、あんたにも訊いていないから」
もうヤダ、この人達。
元から俺なんかとはレベルが違い過ぎるのだ。
「ああ、もう最奥の底に近いところだな。
その深奥まで潜れるパーティというのは年間で一つか二つといったところか」
ダンジョンの深奥とは、そこまで難易度が高い物だったらしい。
そこは俺なんかには縁のない凄まじい場所だったのに違いない。
「げ、それはうちのパーティでは無理だったわ」
「しかも、その部屋に入ったら生還率五十パーセントといったところだろうな。
それで当たりは百に一つ程度と言われるのだから敬遠もされるが、あれを敬遠しているようでは踏破者にはなれん」
「そんな下層の下へ行けるような凄いパーティでも⁉」
「ああ、下層はお前が想像するよりも奥が深いぞ。
あのダンジョンの全体の七割くらいが下層と呼ばれる。
だからラビワンの協会ではダンジョンの半分を、安全のために、もう深層として区切るべきではないのかという議論さえある」
普通ならば、もっと区切り方が違うのだろうが、さては多くのパーティから見て厳し過ぎるから、下層をそういう配分にしてあるんだな。
俺は上級冒険者パーティと一緒でも、あのダンジョンの三割程度しか行けてなかったわけだ。
自分としては、もっと下まで行っていたつもりだったのだ。
「うっわあ、ドン引き~。
そんなもの、さっさと区切っておけばいいのに」
「区切ろうが区切るまいが、そこまで到達できるパーティ自体がそうそういないので必要ない。
まあ協会としても、毎回議論の度にそういう結論を出すようだ」
「うはあ……」
こいつは、そこを潜り抜けて踏破者になった怪物なのだ。
俺って最初に先輩に会った弱い頃に、よく殺されずに生きていたな。
この人が弱い者に興味のない、妙に拘りのあるタイプのストイックな変態で本当によかった。
弱い物は容赦なく踏み潰していくタイプのバトルジャンキーも中にはいるそうだから。
「お前、下層はどこまでいった?」
「ほんの上っ面だけだよ。
そうか、ブライアン達はそういう話も知っていたんだな。
どうして上級者パーティなのに、いつも下層三層までで引き返すので不思議に思っていた。
メンバーの誰に訊いても首を竦めるだけだったんで」
だが先輩は、彼にしては珍しく愉快そうに、豪快で楽しそうな笑いを上げた。
あれ、今のそんなに笑いのツボに入るところだったのかな。
「賢いな、お前のいたチームは。
ブライアン、死なすには惜しい男だったか。
お前のように美味しい男を育ててくれる、いいマネージャーだったのに」
「それが、あんたの冒険者パーティ・マネージャーに対する唯一の評価なんだな……」
そういう話の流れからすると、つまり下層四層が相当ヤバイのか。
「リクル、下層の四層はいわば上層の五階に当たるのさ」
我が親愛なる師匠のエラヴィス閣下から、そう注釈が入った。
ああ、なるほど。
新人にとってのオークに相当する、上級冒険者にとっての第一の鬼門なのか。
そして強者のドワーフでもあるバニッシュからも、そこにいる魔物は高い評価のようだった。
「そこの魔物はのう、まず魔法が通用せん。
その上、また強いのなんの。
上級冒険者になった強者でも一対一で相手をするのを嫌がるほどの相手、それがドラゴナイトじゃな」
ドラゴナイト!
それは俺が知る限り、人型魔物の中では圧倒的な存在だ。
協会の資料で見た事があるだけで、俺もまだ実物を一度も見た事がない。
とにかく固い、とにかく強い、魔法は無効で打撃もなかなか受け付けない。
まるでドラゴンの皮を着た人間のような魔物で、向こうは魔法を使い、圧倒的なパワーで『魔法武器』さえも使いこなすと言う。
「まあ、そいつが洗礼代わりにオークの如くに群れをなしてやってくる。
ちょうど、お前が上層の五階でやられていたみたいに応援も呼ばれるしのう」
「げ!
あのレベルでドラゴナイトが出てくるの?」
それこそは、まさにデスパレード以外の何物でもない。
うちのパーティでは実力に見合わなかったな。
ここみたいな本当の上級冒険者チームは、俺のようなヒヨッコなど連れ歩かない。
「まあ、そういう事だ。
上級冒険者ともなれば、当然強力な魔法使いが前面に出てくるわけだが、それがあそこでは仇となる。
たまに魔法使いしかいない阿呆な上級パーティがいるが、そんなものは全滅必至のパターンだな。
リクル、鍛錬は大事だぞ」
結局それが言いたいのか、マロウス。
そうか、それでブライアン達は有用なスキルを持ったメンバーを集めてからチャレンジする予定だったのだな。
道理であれだけ壮絶に肉弾戦闘で扱かれたわけだ。
「それじゃ、どうやってそこを突破するんだよ」
「それは基本的には数パーティでレイドパーティを組むのじゃな。
数の論理で、力任せに押し通るのじゃ。
通常は超大物を倒す時に組むか、協会からの特別な要請で組む物だが、あそこに限っては皆初めからそうするのじゃ。
そうやってだんだんと力をつけていく」
だが俺には一つ疑問があった。
「ちなみにあんた達は?」
「普通に肉弾突破したが、それがどうかしたのか?
だから、鍛錬は大事だと」
「あんたらに訊いた俺が馬鹿だった……」
「ドラゴナイトか。
あれは柔らかかったなあ。
話にもならんよ」
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もうヤダ、この人達。
元から俺なんかとはレベルが違い過ぎるのだ。
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