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第四章 大精霊を求めて
4-33 新海産物登場?
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とりあえず子供達に飴をやって、仲良く一緒に港の堤防へと向かって歩いて行った。
なんというのだろうな。
日本で見る普通の石垣ではなく薄い石の板をずらして、幾重にも積み上げて作ったかのような。
まるでミルフィーユのような構造の船着き場で、日本とは完全に作りの異なる異民族の技術による石作りの堤防というのは日本人の俺には何か新鮮で、今までで一番異世界情緒に溢れている気がする。
人間という物はまったくもって不思議な物だな。
こういう物も普通は崩れないように石垣にするものだが、おそらく魔法を用いて建築してあるようなので、この石の並べ方にも何らかの意味があるのだろう。
俺は可愛らしい魚屋さん達と一緒に、田作りの原料となるイワシの幼魚の捕獲に向かった。
皆は一回家に戻り、わざわざゴマメを採集できるような細かい目の網を持ってきてくれた。
それにしてもこれは大きな港だ。
日本などのように内燃機関を備えた大型船がいる訳ではないのだが、あちこちにかなり大きな帆船が百隻以上も係留され、そして洋上にも多数が入港しようとしていたり過ぎて行ったりする姿が見える。
なんとこれも魔法建築なのか、この世界には似つかわしくないほどの立派な防波堤が地球並みに海中に築かれている。
帆船の航行にも推進ならびに制御に魔法の応用があるものか、このまるで機関搭載で細かい操舵がコンピューターで可能な最新の船舶が入るような構造の大型港で、それなりに精密に航行しないと地球の帆船のレベルでは港になかなか入港も接岸もできまいに。
まあ地球の最新型のスポーツや娯楽のための帆船ならば強力なエンジンや舵などを備えているけれども。
「ここでイワシが獲れるのかい」
「他にどこで獲るんだよ。
舟で海になんか出ていったら、えらい事になっちゃうよ」
「どんな事に?」
「そりゃあさ、海の魔物が」
だが、そこで計ったかのように沖で騒ぎが起きたのだ。
あっという間に港中が、それこそカラス蜂のネストでも突いたかのような騒ぎになった。
「シーサーペントだ。
シーサーペントが出たぞおお」
沖にいる、こちらを目指していた船からそのような絶叫が上がった。
陸にいる船乗りや港湾作業員なども口々に叫んでいた。
「馬鹿な、なんでシーサーペントがこんな沿海の浅い海に」
「畜生、さすがにあれは手が出ない。
我らが恵みの海は魔王に魂でも売ってしまったものか」
どうやら、この世界では日本の船舶免許で、岸に沿ってしか航行できない制限付きの船舶免許とは異なる理由で大海へは出ていかないらしい。
そこは沖とは言っても、水平線には程遠い、せいぜい一キロにも満たないところであったのだが、それでも十分に海は脅威なものであるらしい。
おいおい、また魔王軍の幹部が出たんじゃないんだろうなあ。
「ああん、お父ちゃあん。
放して、ミレイ」
泣き叫ぶ幼女は力いっぱいに父を呼んでいた。
父親がここの海運で働いていたのか。
「駄目よ、アンナ。
勇者様、お願い。
アンナのお父さんを助けてあげて」
ミレイと呼ばれた年嵩の女の子が涙ながらに、その必死に手を伸ばし海に飛び込んでいかんばかりの四歳くらいの幼女を抱えて押さえつけながら叫んだ。
この子はアリシャと同じ年頃だな。
もしも、あれがカイザであるならば、あの子達も。
「任せろっ」
俺は言うなり、ゲンダス達を百体ほど呼び出した。
「水龍のゲンダス、その名がこの魔物溢れる海にさえ通用する事を、お前の主に対して証明するがいい!」
「任せよ、主。
安心するがいい、あれは魔王軍の幹部ではない故」
そう言って、俺が呼び出したゲンダス・ナンバーズどもは飛び込んで、各々が水のトンネルの軌跡を作り出していった。
まるでロケットエンジンを積んだ魚雷というよりも、超高速の水中ミサイルのように、水面にさえ浮き上がる大渦の軌跡を示しながら突進していき、その『すべてが接敵』した。
「なにいっ!」
水中から躍り上がる無数のチンアナゴのように突き立つ巨大な海蛇ども、生物学的なウミヘビの容姿ではなく、それはまさにシーサーペントと呼ぶべき魔物だったのだ。
俺は眷属との念話通信で尋ねた。
「ゲンダス1、これはどういう事か」
「主よ。
これは魔王軍が放った、一種の旅団というものだ。
向かわせるのに適切な同一の種族の魔物をまとめて大量に放ち押し潰す、一種の物量作戦なのだ。
今回の目標は、この界隈では一番大きな今いる港の海運物流基地であろうな。
どうやら魔王軍は直接に王国を攻撃するのではなく、勇者を擁する王国連合の要であるヨーケイナ王国の物流を狙っているようだ。
このヨーケイナ王国の真下にあるグラント・オーシャンの物流を潰すと、主の言葉で言うところの、ブローのように王国へダメージが与えられ蓄積していく。
これも浸透した魔王軍スパイの仕業であろうのう」
「ど畜生。
お前ら、すべての洋上の船を守れっ」
「主、応援部隊を要請する。
さすがに数が多い、これでは一度に船を守り切れぬ。
このサーペントはどうやら並みの雑兵ではなく、特殊部隊として編制された強化種のようだな」
なんだと!
魔王軍め、また面倒な真似をしやがって。
俺はナンバー1000までのゲンダスにスーバイの鉱石を持たせて、全開で海へと放った。
そして子供達に告げた。
「お前達、ここから避難していなさい。
俺達、勇者の軍勢が戦うから、海の傍から離れろ」
「うんわかった、お兄ちゃん。
そら、みんな。
勇者様のお言いつけだ、早く行くよ」
まったく、年末年始を舐めやがって魔王め~。
お前のせいでこちらへ来ちまった俺達が、この世界で正月用品を揃えるのにどれだけ苦労していると思うのだ。
貴様も元は日本人なら、大人しく正月準備で田作りや昆布巻きでも作っていやがれ!
なんというのだろうな。
日本で見る普通の石垣ではなく薄い石の板をずらして、幾重にも積み上げて作ったかのような。
まるでミルフィーユのような構造の船着き場で、日本とは完全に作りの異なる異民族の技術による石作りの堤防というのは日本人の俺には何か新鮮で、今までで一番異世界情緒に溢れている気がする。
人間という物はまったくもって不思議な物だな。
こういう物も普通は崩れないように石垣にするものだが、おそらく魔法を用いて建築してあるようなので、この石の並べ方にも何らかの意味があるのだろう。
俺は可愛らしい魚屋さん達と一緒に、田作りの原料となるイワシの幼魚の捕獲に向かった。
皆は一回家に戻り、わざわざゴマメを採集できるような細かい目の網を持ってきてくれた。
それにしてもこれは大きな港だ。
日本などのように内燃機関を備えた大型船がいる訳ではないのだが、あちこちにかなり大きな帆船が百隻以上も係留され、そして洋上にも多数が入港しようとしていたり過ぎて行ったりする姿が見える。
なんとこれも魔法建築なのか、この世界には似つかわしくないほどの立派な防波堤が地球並みに海中に築かれている。
帆船の航行にも推進ならびに制御に魔法の応用があるものか、このまるで機関搭載で細かい操舵がコンピューターで可能な最新の船舶が入るような構造の大型港で、それなりに精密に航行しないと地球の帆船のレベルでは港になかなか入港も接岸もできまいに。
まあ地球の最新型のスポーツや娯楽のための帆船ならば強力なエンジンや舵などを備えているけれども。
「ここでイワシが獲れるのかい」
「他にどこで獲るんだよ。
舟で海になんか出ていったら、えらい事になっちゃうよ」
「どんな事に?」
「そりゃあさ、海の魔物が」
だが、そこで計ったかのように沖で騒ぎが起きたのだ。
あっという間に港中が、それこそカラス蜂のネストでも突いたかのような騒ぎになった。
「シーサーペントだ。
シーサーペントが出たぞおお」
沖にいる、こちらを目指していた船からそのような絶叫が上がった。
陸にいる船乗りや港湾作業員なども口々に叫んでいた。
「馬鹿な、なんでシーサーペントがこんな沿海の浅い海に」
「畜生、さすがにあれは手が出ない。
我らが恵みの海は魔王に魂でも売ってしまったものか」
どうやら、この世界では日本の船舶免許で、岸に沿ってしか航行できない制限付きの船舶免許とは異なる理由で大海へは出ていかないらしい。
そこは沖とは言っても、水平線には程遠い、せいぜい一キロにも満たないところであったのだが、それでも十分に海は脅威なものであるらしい。
おいおい、また魔王軍の幹部が出たんじゃないんだろうなあ。
「ああん、お父ちゃあん。
放して、ミレイ」
泣き叫ぶ幼女は力いっぱいに父を呼んでいた。
父親がここの海運で働いていたのか。
「駄目よ、アンナ。
勇者様、お願い。
アンナのお父さんを助けてあげて」
ミレイと呼ばれた年嵩の女の子が涙ながらに、その必死に手を伸ばし海に飛び込んでいかんばかりの四歳くらいの幼女を抱えて押さえつけながら叫んだ。
この子はアリシャと同じ年頃だな。
もしも、あれがカイザであるならば、あの子達も。
「任せろっ」
俺は言うなり、ゲンダス達を百体ほど呼び出した。
「水龍のゲンダス、その名がこの魔物溢れる海にさえ通用する事を、お前の主に対して証明するがいい!」
「任せよ、主。
安心するがいい、あれは魔王軍の幹部ではない故」
そう言って、俺が呼び出したゲンダス・ナンバーズどもは飛び込んで、各々が水のトンネルの軌跡を作り出していった。
まるでロケットエンジンを積んだ魚雷というよりも、超高速の水中ミサイルのように、水面にさえ浮き上がる大渦の軌跡を示しながら突進していき、その『すべてが接敵』した。
「なにいっ!」
水中から躍り上がる無数のチンアナゴのように突き立つ巨大な海蛇ども、生物学的なウミヘビの容姿ではなく、それはまさにシーサーペントと呼ぶべき魔物だったのだ。
俺は眷属との念話通信で尋ねた。
「ゲンダス1、これはどういう事か」
「主よ。
これは魔王軍が放った、一種の旅団というものだ。
向かわせるのに適切な同一の種族の魔物をまとめて大量に放ち押し潰す、一種の物量作戦なのだ。
今回の目標は、この界隈では一番大きな今いる港の海運物流基地であろうな。
どうやら魔王軍は直接に王国を攻撃するのではなく、勇者を擁する王国連合の要であるヨーケイナ王国の物流を狙っているようだ。
このヨーケイナ王国の真下にあるグラント・オーシャンの物流を潰すと、主の言葉で言うところの、ブローのように王国へダメージが与えられ蓄積していく。
これも浸透した魔王軍スパイの仕業であろうのう」
「ど畜生。
お前ら、すべての洋上の船を守れっ」
「主、応援部隊を要請する。
さすがに数が多い、これでは一度に船を守り切れぬ。
このサーペントはどうやら並みの雑兵ではなく、特殊部隊として編制された強化種のようだな」
なんだと!
魔王軍め、また面倒な真似をしやがって。
俺はナンバー1000までのゲンダスにスーバイの鉱石を持たせて、全開で海へと放った。
そして子供達に告げた。
「お前達、ここから避難していなさい。
俺達、勇者の軍勢が戦うから、海の傍から離れろ」
「うんわかった、お兄ちゃん。
そら、みんな。
勇者様のお言いつけだ、早く行くよ」
まったく、年末年始を舐めやがって魔王め~。
お前のせいでこちらへ来ちまった俺達が、この世界で正月用品を揃えるのにどれだけ苦労していると思うのだ。
貴様も元は日本人なら、大人しく正月準備で田作りや昆布巻きでも作っていやがれ!
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