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「教科書の、えー、13ページの二行目にライン引いといて。」
本日から学校が始まりましたが、こちらは何か変わったことがあるわけでもなくとても普通です。
国家機密などという単語は一切出現せず、まるでそこらの公立の学校です。
初日にいきなりあの装置を使ったから期待してしまうのはしょうがないとも思うけど、結果として俺は初の授業でとてもどんよりしています。
キーンコーンカーンコーン…
「なんだよやる気ないじゃねぇか。元気出せよ。」
拓斗だ。
「期待がでかすぎた。まさかこれほど普通とは…」
机に突っ伏しながらどんよりと返す。
「お前こそどうしたんだよ。昨日あんなにショック受けてたのによ。」
昨日隣の部屋の女子との会話を全て俺に丸投げして後悔していたのはまだ記憶に新しい。
「う、うるせぇよ。そんな日もあるだろ。」
──なにが?なんの日だよ
かなり焦ってしかもまるで話を逸らせてなかった。
「まあそれは置いといてもうすぐ次の授業だぜ。」
そのまま歩いていってしまった。
俺はちらりと壁の時計を見る。今10時30分で次始まるのが40分。今はちょうど授業が終わってすぐだ。
──まだ時間あるだろ…
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
「めーしーだー!!」
チャイムが鳴り終わるのとほぼ同時に今の思いを全力で拓斗が叫ぶ、しかも俺の横で。
全力で目線だけで迷惑さを伝える。
「そういや、食堂どこだっけ?」
右を見て左を見て…
「あ、あっちだろ」
指が指してる方向と目が向いてる方向が真逆なやつに言われてもこっちが困る。
「うん、500%違うな」
などとバカ丸出しの会話を繰り広げてると後ろから救いの手が差しのべられた。
「あの、こっちだよ。」
どこかで聞いたことがあると思って振り向いてみると、なんと…
「あ、青木さん!」
昨日無理やり押し掛けてしまった隣の部屋の人で今回はさらにその後ろにもう一人女子がたってる。
「えーっと、そちらは?」
なんとなく察しはついていたが尋ねてみる。
「あー、昨日いなかったもんね。この人が私の相部屋の木村有希さん。」
「あなた達が昨日来た人ね。話は聞いてるわ。よろしくね。」
"The できる女"
簡単に2単語で表すことができる。というか1単語で十分だ。
茶色めのショートヘアーとキラキラ輝く瞳。
静かそうな青木さんとは正反対のように思える。
俺も名乗ろうと思った時に俺を押し退けて拓斗が
「俺は中村拓斗でこいつが神崎一輝。よろしく!!」
──声がデカイな、テンション上がってる?
この女子への反応の早さは慣れるしか無いのだろうか?
「一緒に飯食おうぜ!」
──わぁ積極的ー
そんなのOKされないと思っていたのだが意外にあっさりと、
「良いわよ。みんないた方が楽しいしね」
即答の一発OK。
──こ、こんなことがあっていいのか?
遠い存在だった女子がここ最近突然距離が近くなり未だになれていない俺である。
「じゃあ行きましょう。」
いきなり歩き始めているがついつていっているのは誰も…、いや、こういうときだけちゃっかり着いていくのが拓斗という男なのだろう。
気付けはそこには俺と青木さんしかいなかった。
「俺らも行こう。置いてかれるよ」
コミュ障とほぼ同じの俺にはこの空気がいづらく、悪いと思いながらもさっさと歩いてしまった。
「う、うん行こっか。」
少し距離を取られながらそれでも着いてきてくれた。
「おーい一輝、遅いぞー」
そこまで遅れたつもりはなかったが既に二人は席を四人分とって座っていた。
さらにテーブルの上にはトレーも4つあった。
「俺がじゃなくてお前が早すぎるんだよ」
「飯ももうあるからな!」
──え…
「いや、それは自分でと…」
「選んだのは私だから安心して」
俺の戸惑いが全面に表れた発言は簡単に木村さんに上書きされた
──まず、あなたですか!?
「ご、ごめんね。あの子なんでも自分でしちゃうから…」
──それ以上いってるよ
「いや青木さんが謝る必要ないし、別にちょっとびっくりしてるだけだから大丈夫だよ。」
「そ、そう?なら良かったけど」
それでも少し罪悪感がのこっているようにに思える。
──ああ、いい人だ
ただただ青木さんの評価が上がった日だった。
本日から学校が始まりましたが、こちらは何か変わったことがあるわけでもなくとても普通です。
国家機密などという単語は一切出現せず、まるでそこらの公立の学校です。
初日にいきなりあの装置を使ったから期待してしまうのはしょうがないとも思うけど、結果として俺は初の授業でとてもどんよりしています。
キーンコーンカーンコーン…
「なんだよやる気ないじゃねぇか。元気出せよ。」
拓斗だ。
「期待がでかすぎた。まさかこれほど普通とは…」
机に突っ伏しながらどんよりと返す。
「お前こそどうしたんだよ。昨日あんなにショック受けてたのによ。」
昨日隣の部屋の女子との会話を全て俺に丸投げして後悔していたのはまだ記憶に新しい。
「う、うるせぇよ。そんな日もあるだろ。」
──なにが?なんの日だよ
かなり焦ってしかもまるで話を逸らせてなかった。
「まあそれは置いといてもうすぐ次の授業だぜ。」
そのまま歩いていってしまった。
俺はちらりと壁の時計を見る。今10時30分で次始まるのが40分。今はちょうど授業が終わってすぐだ。
──まだ時間あるだろ…
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
「めーしーだー!!」
チャイムが鳴り終わるのとほぼ同時に今の思いを全力で拓斗が叫ぶ、しかも俺の横で。
全力で目線だけで迷惑さを伝える。
「そういや、食堂どこだっけ?」
右を見て左を見て…
「あ、あっちだろ」
指が指してる方向と目が向いてる方向が真逆なやつに言われてもこっちが困る。
「うん、500%違うな」
などとバカ丸出しの会話を繰り広げてると後ろから救いの手が差しのべられた。
「あの、こっちだよ。」
どこかで聞いたことがあると思って振り向いてみると、なんと…
「あ、青木さん!」
昨日無理やり押し掛けてしまった隣の部屋の人で今回はさらにその後ろにもう一人女子がたってる。
「えーっと、そちらは?」
なんとなく察しはついていたが尋ねてみる。
「あー、昨日いなかったもんね。この人が私の相部屋の木村有希さん。」
「あなた達が昨日来た人ね。話は聞いてるわ。よろしくね。」
"The できる女"
簡単に2単語で表すことができる。というか1単語で十分だ。
茶色めのショートヘアーとキラキラ輝く瞳。
静かそうな青木さんとは正反対のように思える。
俺も名乗ろうと思った時に俺を押し退けて拓斗が
「俺は中村拓斗でこいつが神崎一輝。よろしく!!」
──声がデカイな、テンション上がってる?
この女子への反応の早さは慣れるしか無いのだろうか?
「一緒に飯食おうぜ!」
──わぁ積極的ー
そんなのOKされないと思っていたのだが意外にあっさりと、
「良いわよ。みんないた方が楽しいしね」
即答の一発OK。
──こ、こんなことがあっていいのか?
遠い存在だった女子がここ最近突然距離が近くなり未だになれていない俺である。
「じゃあ行きましょう。」
いきなり歩き始めているがついつていっているのは誰も…、いや、こういうときだけちゃっかり着いていくのが拓斗という男なのだろう。
気付けはそこには俺と青木さんしかいなかった。
「俺らも行こう。置いてかれるよ」
コミュ障とほぼ同じの俺にはこの空気がいづらく、悪いと思いながらもさっさと歩いてしまった。
「う、うん行こっか。」
少し距離を取られながらそれでも着いてきてくれた。
「おーい一輝、遅いぞー」
そこまで遅れたつもりはなかったが既に二人は席を四人分とって座っていた。
さらにテーブルの上にはトレーも4つあった。
「俺がじゃなくてお前が早すぎるんだよ」
「飯ももうあるからな!」
──え…
「いや、それは自分でと…」
「選んだのは私だから安心して」
俺の戸惑いが全面に表れた発言は簡単に木村さんに上書きされた
──まず、あなたですか!?
「ご、ごめんね。あの子なんでも自分でしちゃうから…」
──それ以上いってるよ
「いや青木さんが謝る必要ないし、別にちょっとびっくりしてるだけだから大丈夫だよ。」
「そ、そう?なら良かったけど」
それでも少し罪悪感がのこっているようにに思える。
──ああ、いい人だ
ただただ青木さんの評価が上がった日だった。
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