幻影の彼方~青春の狭間に枯れゆく決断~

二章-水野輝サイド-

家族の気持ち

夕食のテーブルは今夜、普段とは異なる重厚な空気で満たされていた。輝が国内の一流サッカーチームからの提案について話し始めると、両親は息を呑んで息子の言葉に耳を傾ける。

父はしばらく黙った後、深く息を吸い込みながら言葉を選ぶ。
「輝、国内のトップチームで学ぶことは、君にとって大きなステップだ。確かに挑戦も伴うが、輝のサッカー人生において、新たな扉を開くかもしれない。」

母は輝の手を握り、やさしく微笑みながら言葉を続ける。
「輝が幸せであることが私たちにとって一番大事。不安もたくさんあるでしょうけど、輝が決めた道なら、私たちも全力で支えるわ。」

輝は両親の言葉に心を動かされつつも、彼らの期待と自分自身の不安が交錯する中で、心の整理がつかずにいる。彼はゆっくりと頷き、感謝の意を表す。

「本当にありがとう。もう少し時間をかけて、自分自身でしっかり考えたい。友達のこと、今のチームのこともあるし、ただ単にプロへ行くというわけにはいかないんだ。それに宇都美だってそそっかしくて一人にできない。アイツ昔からいつも俺の後ろに隠れてたし。」

父は輝の肩を抱き寄せ、力強く支える。
「時間をかけて考えるのがいい。急がず、じっくりと決断を下そう。俺たちはいつでも輝の味方だ。」

母は涙を拭いながら、温かい微笑みで輝を見つめる。
「どんな決断でも、輝が輝き続けることができるように、私たちも力になるからね。」

その夜、輝は自室の窓から星空を眺めながら、未来について深く考え込む。家族の愛と支援を背に、彼は自分自身に問う。『本当に自分が望む道は何か？』と。この重要な決断は彼の将来を大きく左右するが、彼は家族の支えがあることで、どんな選択も乗り越えられると感じていた。