幻影の彼方~青春の狭間に枯れゆく決断~

三章-水野輝サイド-

青春の狭間

　全ての問題がうまくいき始めた輝のこの日は、学校から家への帰り道がいつもと変わらないはずだった。彼は自転車をこぎ、イヤホンから流れる音楽に耳を傾けながらリズミカルにペダルを踏む。夕日が道をオレンジ色に染めていて、空気は春の暖かさが感じられるものだった。

　しかし、今日の帰り道は何かが違った。輝は途中で幼馴染の宇都美と偶然出会った。彼女はいつもとは異なり、急いでいる様子を見せ、輝に向かって簡単に挨拶を交わし、急ぎ足でその場を去っていった。輝は少し首を傾げながらも、再び自転車を漕ぎ始めた。

　数分後、輝は遠くに白玖の姿を見つけた。白玖の遠くからでもわかる美しさに、彼は思わず見とれてしまう。白玖は誰かと話しているようだ。塀があって誰か分かんないなどとぼんやり考えていた。

　その直後、予期せぬ事態が発生した。公園の近くで突然風が強く吹き上げ、何かが輝の自転車の前輪に絡まった。それは小さな紐のようなもので、輝は突然の出来事に反応しようとしてバランスを崩した。慌ててブレーキをかけたが、時すでに遅し。彼の自転車は制御を失い、道路脇に衝突してしまった。

　大きな衝撃音と共に、白玖が慌てて駆け寄ってきた。
「輝！」
彼女はすぐに携帯電話を取り出し、救急車を呼んだ。意識が遠のく中、輝は白玖が必死に何かを叫んでいる声を聞いた。

　そして、ぼんやりとした意識の中で、宇都美の声がした気がした。
「大丈夫...？」
という声が彼の意識を包み込む中、輝の世界は完全に暗闇に包まれた。

　この出来事は、輝の人生に新たな試練をもたらすことになる。しかし、それはまた、彼が自分自身と向き合い、成長する機会でもあった。紫苑白玖と桜庭宇都美、二人の存在がこれからの彼の回復と決意にどのように影響を与えるのか、物語は次の段階へと進んでいく