双甲伝-SOUKOUDEN-

野口てんぐ

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第三章「甲羅を刃へ」

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燃え残る甲羅谷の灰の中から立ち上がった兄弟は、いま小さな岩窟の中にいた。

「これが……“甲羅の剣術”の道場……?」

岩肌むき出しのその場所には、道場らしいものは何もない。ただ、中央に並べられた大小の石、そして所々に走る深い斬撃の跡が、かつてここで修練が行われていたことを物語っていた。

「ポン、ミク。おまえたちの“甲羅”は、ただの殻ではない。“刃”にもなれば、“盾”にもなる。それをどう使うかは、おまえたち次第だ。」

岩陰から静かに現れたのは、カメの隠者・ゲンドウ。全身が分厚い黒甲羅に覆われ、片目には古傷の痕があった。

「教えてください。俺たちを……強くしてください!」

ポンが、かつて見せたことのない鋭い眼差しで頭を下げる。

「仇を討つだけじゃない。もう誰も、失いたくないんです……!」

ミクも小さな声で続ける。その目には、父の残した甲羅磨きの道具を握る指が、固く震えていた。


---

修行のはじまり

「まず、“甲羅打ち”だ。」

ゲンドウが指差したのは、道場の中央に置かれた二つの巨石。これを甲羅で打ち割るのが、最初の課題だった。

「そんな……無理だよ……!」
「こんなもん、ぶつけたらこっちの甲羅が砕けちまう……!」

兄弟は初め、何度も倒れ、甲羅に傷をつけた。

しかし日が昇っては沈み、傷の数だけ“痛み”を覚え、そして“力”に変えていく。

ポンは重さと踏ん張りで、一撃に魂を込める型。
ミクは素早く回転し、甲羅を鋭く跳ね飛ばす変則の型を磨いていった。

「おまえたちは、互いの“型”を知ってこそ強くなる。ふたりで一つだ。」

ゲンドウは言った。


---

兎一族の闇

数日後。

「ゲンドウさん……俺たちの家族を襲った兎たち、あいつらは何者なんですか?」

夜、焚き火を囲んでいたとき、ポンが問うた。

ゲンドウの表情が一瞬だけ強張る。

「奴らは“兎一族”――否、“鬼兎(おにうさぎ)”と呼ばれる存在だ。」

「鬼兎……?」

「兎の姿をしながら、闇の力と契約し、進化を遂げた異形。かつて仲間だった動物たちの血をすすり、自らの肉体を“強化”する外道の技を持つ。」

ゲンドウの背にある深い斬撃痕。それが兎一族との戦いの証だった。

「……奴らの“力”は、常軌を逸している。だが、やつらもまた“恐れている”。“甲羅”に込められた、“清き意思”を。」

兄弟の目が揃って燃えた。

「だったら、俺たちの甲羅を……“刃”に変えるだけだ!」

「甲羅の刃――その名にふさわしい力を、俺たちで掴みます!」

炎の明かりの中、二つの甲羅が静かに光を放っていた。

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