8 / 15
第八章「斬月の誓い、そして出会い」
しおりを挟む
瓦礫の奥、静寂が満ちていた。
重く崩れた岩の隙間に、かすかに光る甲羅。その主の名はポン。
大槌に吹き飛ばされ、仲間たちと引き離され――そして今、動かない。
「ポン……ポン……っ!」
ユエの声が、幾度も名を呼んだ。ミクは歯を食いしばりながら、その場に立ち尽くしていた。
瓦礫を動かそうとするも、手が震えて動かない。
「ミク、時間がない。奴らが戻ってくる」
ユエの言葉に、ミクは拳を握る。
「兄ちゃんを置いて……行けって言うのかよ!」
そのとき、岩の影から――
カツン……カツン……と、足音が響いた。
「……その判断を下すのは、早すぎるぜ」
灰を踏みしめて現れたのは、一人の獣――カメのようで、カメではない。
その甲羅は片側が割れており、そこに――月の紋が刻まれていた。
「……誰だ……?」
ミクが甲羅を構える。
「“斬月(ざんげつ)”と呼ばれていた者さ。昔は、な」
その眼差しは鋭くも、どこか懐かしい香りを漂わせていた。
「……あんたも、“甲羅の剣術”を?」
斬月は、ポンの甲羅に目を落とした。
「――あの型は、“父の型”だ。そうか、お前たちが……」
月の光が差し込む。斬月の瞳の奥に、かつての仲間の影が揺れた。
「この子を預かろう。まだ、終わっていない」
そして、斬月はそっとポンの身体に手を添え、呼吸を確かめた。
「生きてる。だが――“刃”の誓いが、試されるぞ」
ミクの拳がふるえ、ユエは言葉を呑んだ。
「“甲羅を剣に変える”には、何かを失わなければならない……
お前たちは、それを覚悟できているか?」
静かな問いかけだった。
ミクはポンの甲羅に触れ、血の滲んだ掌を見下ろす。
「失いたくなんてない。でも――
何も守れないなら、俺たちの“甲羅”に意味はない!」
斬月は笑った。わずかに、寂しげに。
「その言葉、あいつにそっくりだ。……」
月が、雲間からこぼれた。
ポンの甲羅が、再び光を帯びはじめる。
「……兄ちゃん……!」
かすかに動く指。
生きている。
兄はまだ――刃を握っている
重く崩れた岩の隙間に、かすかに光る甲羅。その主の名はポン。
大槌に吹き飛ばされ、仲間たちと引き離され――そして今、動かない。
「ポン……ポン……っ!」
ユエの声が、幾度も名を呼んだ。ミクは歯を食いしばりながら、その場に立ち尽くしていた。
瓦礫を動かそうとするも、手が震えて動かない。
「ミク、時間がない。奴らが戻ってくる」
ユエの言葉に、ミクは拳を握る。
「兄ちゃんを置いて……行けって言うのかよ!」
そのとき、岩の影から――
カツン……カツン……と、足音が響いた。
「……その判断を下すのは、早すぎるぜ」
灰を踏みしめて現れたのは、一人の獣――カメのようで、カメではない。
その甲羅は片側が割れており、そこに――月の紋が刻まれていた。
「……誰だ……?」
ミクが甲羅を構える。
「“斬月(ざんげつ)”と呼ばれていた者さ。昔は、な」
その眼差しは鋭くも、どこか懐かしい香りを漂わせていた。
「……あんたも、“甲羅の剣術”を?」
斬月は、ポンの甲羅に目を落とした。
「――あの型は、“父の型”だ。そうか、お前たちが……」
月の光が差し込む。斬月の瞳の奥に、かつての仲間の影が揺れた。
「この子を預かろう。まだ、終わっていない」
そして、斬月はそっとポンの身体に手を添え、呼吸を確かめた。
「生きてる。だが――“刃”の誓いが、試されるぞ」
ミクの拳がふるえ、ユエは言葉を呑んだ。
「“甲羅を剣に変える”には、何かを失わなければならない……
お前たちは、それを覚悟できているか?」
静かな問いかけだった。
ミクはポンの甲羅に触れ、血の滲んだ掌を見下ろす。
「失いたくなんてない。でも――
何も守れないなら、俺たちの“甲羅”に意味はない!」
斬月は笑った。わずかに、寂しげに。
「その言葉、あいつにそっくりだ。……」
月が、雲間からこぼれた。
ポンの甲羅が、再び光を帯びはじめる。
「……兄ちゃん……!」
かすかに動く指。
生きている。
兄はまだ――刃を握っている
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる