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第十章 「夜白の真実」
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月牙宮――
それは、かつて月を信仰した者たちが建てたとされる古の神殿。
甲羅谷のはるか地下、深く沈んだ地の底に広がる異界のごとき空間。
その入り口に、ポンとミクは斬月とユエと共に立っていた。
「この扉の先に……すべての答えがあるんだな?」
ポンが問い、斬月がゆっくり頷く。
「夜白はこの奥にいる。そして……“クララの消息”もまた、ここに絡んでいる」
ミクは息を呑んだ。
クララ。
あの日、妹の甲羅の欠片だけが灰の谷で見つかった。
だが、亡骸はどこにもなかった。
その謎が、この“月牙宮”に繋がっているというのか。
「……行こう、ミク」
兄弟は静かに頷き合い、重い扉を押し開けた。
月牙の間
内部は静寂に包まれていた。
神殿の壁面には、月と兎の意匠が刻まれており、天井からは月光に似た青白い光が差し込んでいる。
その中心に――いた。
「よく来たな、“双甲(そうこう)の兄弟”よ」
現れたのは、一体の白い兎。
鋭く、どこか哀しげな瞳。
その背には、甲羅の破片――否、クララの甲羅の一部が装着されていた。
「夜白……!」
ミクが叫ぶ。怒りよりも、驚きが先に立っていた。
「その甲羅……妹のものだろ!? なぜお前が――!」
夜白はゆっくりと手を翳した。
「誤解するな。あの子は――まだ“生きている”」
「な……!?」
ポンとミクの動きが止まる。
「だが、あの子は“月牙の巫女”として、己を犠牲にした。お前たちの知らぬところでな……」
夜白の語りが始まった。
かつて、兎一族と亀たちは共存していた。
だが、“月の力”を巡る儀式の継承者として、選ばれたのは――“甲羅を持つ者”。
それが、兎一族の長であった夜白の“妹”を死に追いやった。
「お前たちが奪ったのだ……! 家族を! 信仰を!」
夜白の甲羅が、月光を受けて淡く光を放つ。
「そして、儀式を拒み逃げ出した私を――あの子は庇った。お前たちの妹、クララだ」
「……兄ちゃん」
ミクが震える声でポンに目を向ける。
「クララは……俺たちを……」
「……守ったんだな」
ポンが拳を握りしめた。
「……だったら、俺たちはもう逃げない。儀式の因果も、復讐の連鎖も――すべてここで断ち切る!」
「夜白! お前に聞きたい。クララは、今どこにいる!?」
夜白の目がわずかに揺れる。
「……彼女は、まだ“封の間”にいる。月の呪いに囚われたまま……助けたいのなら――私を超えてゆけ!」
その瞬間、夜白の白い毛並みが風を孕み、空気が凍りつくように張り詰めた。
斬月がすっと前に出る。
「……ポン、ミク。行け。“父”が背負っていた想い、今こそ受け継ぐ時だ」
「斬月……!」
「お前たちには見えているはずだ――“何を守るために戦うか”が」
ポンとミク、二匹の兄弟は互いに背を合わせ、甲羅刀を構えた。
「行くぞ、ミク」
「うん!」
月牙宮に響く刃と刃の音。
そして、それを照らす、朧月の光――
運命の戦いが、今始まる。
それは、かつて月を信仰した者たちが建てたとされる古の神殿。
甲羅谷のはるか地下、深く沈んだ地の底に広がる異界のごとき空間。
その入り口に、ポンとミクは斬月とユエと共に立っていた。
「この扉の先に……すべての答えがあるんだな?」
ポンが問い、斬月がゆっくり頷く。
「夜白はこの奥にいる。そして……“クララの消息”もまた、ここに絡んでいる」
ミクは息を呑んだ。
クララ。
あの日、妹の甲羅の欠片だけが灰の谷で見つかった。
だが、亡骸はどこにもなかった。
その謎が、この“月牙宮”に繋がっているというのか。
「……行こう、ミク」
兄弟は静かに頷き合い、重い扉を押し開けた。
月牙の間
内部は静寂に包まれていた。
神殿の壁面には、月と兎の意匠が刻まれており、天井からは月光に似た青白い光が差し込んでいる。
その中心に――いた。
「よく来たな、“双甲(そうこう)の兄弟”よ」
現れたのは、一体の白い兎。
鋭く、どこか哀しげな瞳。
その背には、甲羅の破片――否、クララの甲羅の一部が装着されていた。
「夜白……!」
ミクが叫ぶ。怒りよりも、驚きが先に立っていた。
「その甲羅……妹のものだろ!? なぜお前が――!」
夜白はゆっくりと手を翳した。
「誤解するな。あの子は――まだ“生きている”」
「な……!?」
ポンとミクの動きが止まる。
「だが、あの子は“月牙の巫女”として、己を犠牲にした。お前たちの知らぬところでな……」
夜白の語りが始まった。
かつて、兎一族と亀たちは共存していた。
だが、“月の力”を巡る儀式の継承者として、選ばれたのは――“甲羅を持つ者”。
それが、兎一族の長であった夜白の“妹”を死に追いやった。
「お前たちが奪ったのだ……! 家族を! 信仰を!」
夜白の甲羅が、月光を受けて淡く光を放つ。
「そして、儀式を拒み逃げ出した私を――あの子は庇った。お前たちの妹、クララだ」
「……兄ちゃん」
ミクが震える声でポンに目を向ける。
「クララは……俺たちを……」
「……守ったんだな」
ポンが拳を握りしめた。
「……だったら、俺たちはもう逃げない。儀式の因果も、復讐の連鎖も――すべてここで断ち切る!」
「夜白! お前に聞きたい。クララは、今どこにいる!?」
夜白の目がわずかに揺れる。
「……彼女は、まだ“封の間”にいる。月の呪いに囚われたまま……助けたいのなら――私を超えてゆけ!」
その瞬間、夜白の白い毛並みが風を孕み、空気が凍りつくように張り詰めた。
斬月がすっと前に出る。
「……ポン、ミク。行け。“父”が背負っていた想い、今こそ受け継ぐ時だ」
「斬月……!」
「お前たちには見えているはずだ――“何を守るために戦うか”が」
ポンとミク、二匹の兄弟は互いに背を合わせ、甲羅刀を構えた。
「行くぞ、ミク」
「うん!」
月牙宮に響く刃と刃の音。
そして、それを照らす、朧月の光――
運命の戦いが、今始まる。
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