双甲伝-SOUKOUDEN-

野口てんぐ

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第十二章「双の刃、断つは影」

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封の間に満ちていた静寂が、今、破られる。

暗き影がうねるように立ち昇り、かつて巫女の器であった少女・クララを包み込んでいた。
その影は、言葉を持ち、意志を持ち、憎しみを語る。

「我を斬るというか……“甲羅の者”よ……貴様らが、すべてのはじまり……!」

その声は万の嘆きを孕んでいた。
まるで、月の裏側に葬られた過去が一斉に言葉を発しているかのようだった。

「こいつ……ただの呪いじゃねぇ……!」

ポンの手に力がこもる。
そして、ミクが一歩前に出た。

「でも、俺たちはもう逃げない。兄ちゃんと、みんなと一緒に――」

ミクは甲羅刀を逆手に構える。

「この刃で、“呪いの因果”を断ち切る!」

影のような“それ”は、無数の手足を伸ばし、クララの身体を鎖のように縛っていた。
その中心に脈打つ“核”――月の呪いの本体――が、青白く脈動している。

「――あれだ、ミク」

ポンが冷静に言う。
兄の目は、すでに父・ゲンザブロウがかつて立った戦場と重なっていた。

「呪いを斬る。……同時に、クララは守る。できるか?」

「やってやるよ!」

ミクが駆けた。
影の腕が襲いかかるが、ポンがその一撃を甲羅で受け止め、身を挺して道を開く。

「――今だ!」

ミクが跳躍する。
甲羅刀が月光を浴び、軌跡を描いた。

そして――

「これが、俺たちの“誓い”だあああああ!!」

双の刃が、影の核を十字に断ち割った。

刹那、光が炸裂する。
封の間に吹き荒れる風が、すべての呪いを払うかのように荒れ狂い、
やがて――静寂が訪れた。



「……クララ!」

ミクが駆け寄ると、クララの目がわずかに開いた。

「……ミク……兄ちゃん……?」

その声は、まるで子守唄のように小さく、けれど確かに、命の音を響かせていた。

「戻ってこい、クララ。もう、ひとりじゃない」

ポンが、そっと彼女の小さな手を握る。

斬月が扉の前で静かに頷いた。

「よくやったな。……これで、“封の間”は終わった」

だがその眼差しには、次なる覚悟が宿っていた。

「だが、“月牙宮”のすべてが終わったわけじゃない。夜白はまだ、奥の“月映殿”にいる」

「……あいつと、向き合わなきゃな」

ポンがクララを背に負いながら、言った。

「俺たちが、本当に“守る”べきものを守るために」

「うん、兄ちゃん……」

ミクが答える。

今――双の刃は、かつてない力を帯びていた。
それは、命をつなぎ、呪いを断ち、絆を護る“甲羅の誓い”。

そして兄弟は、光差す階をのぼっていく。
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