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24話
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市原の言葉は、来栖の胸に大きく刺さった。
「わ‥分かりません。同情かもしれない‥ただ、あいつが傷付いている姿は、もう見たくない‥」
「‥それが若奈の傷を抉る事になってもか?」
市原が言わんとしている事は分かる。
自分が若奈に手を差し伸べる事で、若奈の触れられたくない部分が晒され、若奈自身を傷付けてしまうかもしれない。
「‥俺が‥俺があいつを守ります。傷が癒えるまで、ずっと守ります」
真っ直ぐに伸びた視線。
嘘偽りのない言葉。
なんとしても虎太郎を守りたいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
「ふふっ‥そうか、分かったよ。じゃあ、これはお前に任せようか」
市原はそう言って、ポケットからもう一枚の紙を出してきた。
報告書と同じサイズの紙を来栖は受け取ると開いてみる。
そこには、これまで伊藤汰久が起こした事が書いてあった。
望月奏へのストーカー行為、来栖への脅し、そして虎太郎への執拗なまでの行動。
殆どが来栖がすでに知っている事だったが、虎太郎についての執着については、初めて見るものが多かった。
それは大学時代から続いていた。
虎太郎に言い寄ろうとしている奴を見つけては、片っ端から潰していく。虎太郎には一切気付かれないように完璧に。虎太郎の前では、一番大切な友人の顔をし接していながら、その裏では冷酷に周りを排除していく。
あの軽井沢の旅行でそれが爆発したのか、虎太郎を犯し、その後、その行為の映像を元に、自分の傍に居るように脅している‥という所まで記載されていた。
「‥こ‥これは事実ですか?」
あまりにも普通では調べられない所まで報告書に書いてあり、来栖はこの紙に書いてあることを疑ってしまう。
「ああ、それが事実。この情報を入手した方法を、お前に教える訳にはいかんがな」
市原は何らかの方法で、この情報を知りえたのだろう、来栖はそれを信じるしかないと感じた。
「‥来栖、お前はその映像をどうしたい?逆に映像を手に入れて、それを元に対抗する事も出来るが‥完全にこの世から消し去ることも可能だ。‥どうしたい?」
「消して下さい。跡形もなく」
来栖は一瞬の迷いもなく、強く怒りが含まれた言葉で返した。
「分かった。だが、俺から一つ助言しておこう」
冷静な顔で座り直し、再びビールで喉を潤した市原は、来栖を真っすぐに捉えた。
「映像がなくなり、脅されることが無くなっても、それでも、若奈が伊藤汰久の傍に居たいと言えば、お前はどうする?」
「‥‥っ‥もし、あいつがそう言ったとしても、俺はその言葉が本心だと思うまで諦めません。俺は何度脅されても、諦めません。俺があいつを守りたいから‥」
そんな事は絶対にないと言い切りたい自分がいたが、本当にそうなのかと疑う自分もいた。
先程まで力強く真っ直ぐに見ていた来栖の瞳が、左右に揺れ迷いを出す。
「来栖。お前は、真っ直ぐで正直だ。良くも悪くもな‥だから、それが若奈を苦しめる事もあるかもしれん‥」
「じゃ‥じゃあ、どうすれば」
「‥それは俺にも分からん。自分で考えろ。ただ、俺が言えるのは、若奈の心を動かさないと、あいつは戻って来ない‥だろうな」
意味深な言葉を言いニヤリと笑う市原の顔は、男の来栖が見ても男前でミステリアスな笑みだった。
市原と別れ自分のマンションに帰宅した来栖は、これからどうすれば良いのか考えていた。
脅されている映像は、市原がすぐに消去してくれるという事になった。
本当にそんな事が可能なのかと不安が付きまとうが、今はその言葉を信じるしかない。
そのあと虎太郎はいつもの生活に戻れるのだろうか‥そうすれば自分は‥‥。
「‥うわあああ!!」
頭の中が混乱して、キャパオーバーな来栖はいきなり大声を出して叫び出し、頭を掻きむしる。
市原の最後の言葉の答えも出ていない。
――俺‥ハゲるかも‥。
「わ‥分かりません。同情かもしれない‥ただ、あいつが傷付いている姿は、もう見たくない‥」
「‥それが若奈の傷を抉る事になってもか?」
市原が言わんとしている事は分かる。
自分が若奈に手を差し伸べる事で、若奈の触れられたくない部分が晒され、若奈自身を傷付けてしまうかもしれない。
「‥俺が‥俺があいつを守ります。傷が癒えるまで、ずっと守ります」
真っ直ぐに伸びた視線。
嘘偽りのない言葉。
なんとしても虎太郎を守りたいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
「ふふっ‥そうか、分かったよ。じゃあ、これはお前に任せようか」
市原はそう言って、ポケットからもう一枚の紙を出してきた。
報告書と同じサイズの紙を来栖は受け取ると開いてみる。
そこには、これまで伊藤汰久が起こした事が書いてあった。
望月奏へのストーカー行為、来栖への脅し、そして虎太郎への執拗なまでの行動。
殆どが来栖がすでに知っている事だったが、虎太郎についての執着については、初めて見るものが多かった。
それは大学時代から続いていた。
虎太郎に言い寄ろうとしている奴を見つけては、片っ端から潰していく。虎太郎には一切気付かれないように完璧に。虎太郎の前では、一番大切な友人の顔をし接していながら、その裏では冷酷に周りを排除していく。
あの軽井沢の旅行でそれが爆発したのか、虎太郎を犯し、その後、その行為の映像を元に、自分の傍に居るように脅している‥という所まで記載されていた。
「‥こ‥これは事実ですか?」
あまりにも普通では調べられない所まで報告書に書いてあり、来栖はこの紙に書いてあることを疑ってしまう。
「ああ、それが事実。この情報を入手した方法を、お前に教える訳にはいかんがな」
市原は何らかの方法で、この情報を知りえたのだろう、来栖はそれを信じるしかないと感じた。
「‥来栖、お前はその映像をどうしたい?逆に映像を手に入れて、それを元に対抗する事も出来るが‥完全にこの世から消し去ることも可能だ。‥どうしたい?」
「消して下さい。跡形もなく」
来栖は一瞬の迷いもなく、強く怒りが含まれた言葉で返した。
「分かった。だが、俺から一つ助言しておこう」
冷静な顔で座り直し、再びビールで喉を潤した市原は、来栖を真っすぐに捉えた。
「映像がなくなり、脅されることが無くなっても、それでも、若奈が伊藤汰久の傍に居たいと言えば、お前はどうする?」
「‥‥っ‥もし、あいつがそう言ったとしても、俺はその言葉が本心だと思うまで諦めません。俺は何度脅されても、諦めません。俺があいつを守りたいから‥」
そんな事は絶対にないと言い切りたい自分がいたが、本当にそうなのかと疑う自分もいた。
先程まで力強く真っ直ぐに見ていた来栖の瞳が、左右に揺れ迷いを出す。
「来栖。お前は、真っ直ぐで正直だ。良くも悪くもな‥だから、それが若奈を苦しめる事もあるかもしれん‥」
「じゃ‥じゃあ、どうすれば」
「‥それは俺にも分からん。自分で考えろ。ただ、俺が言えるのは、若奈の心を動かさないと、あいつは戻って来ない‥だろうな」
意味深な言葉を言いニヤリと笑う市原の顔は、男の来栖が見ても男前でミステリアスな笑みだった。
市原と別れ自分のマンションに帰宅した来栖は、これからどうすれば良いのか考えていた。
脅されている映像は、市原がすぐに消去してくれるという事になった。
本当にそんな事が可能なのかと不安が付きまとうが、今はその言葉を信じるしかない。
そのあと虎太郎はいつもの生活に戻れるのだろうか‥そうすれば自分は‥‥。
「‥うわあああ!!」
頭の中が混乱して、キャパオーバーな来栖はいきなり大声を出して叫び出し、頭を掻きむしる。
市原の最後の言葉の答えも出ていない。
――俺‥ハゲるかも‥。
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