愛に抗うまで

白樫 猫

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55話

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来栖のマンションに着くと、お互いに意識しすぎてギクシャクとなり、虎太郎も緊張しているのか繋いだ手が汗ばんでいる。
来栖も、こんなに緊張するなんて今まで一度もなかった事で、ドキドキしている自分が可笑しく思わず笑ってしまう。

「クスッ‥ごめん。なんか可笑しくって‥」

緊張が一気に解け、虎太郎も引き攣った顔がホッとしたような笑顔になる。
来栖がリビングでコートを脱ぐとニット越しに逞しい背中があらわれ、虎太郎は思わず見とれてしまう。

「シャワー浴びる?それとも何か飲む?」

虎太郎の脱いだ上着も受け取り、ハンガーに掛けてくれている来栖が聞いてくる。

「‥シャワー借ります」

このままだと、自分から抱き付いてしまいそうになり、虎太郎は浴室へと向かう。

「じゃあ、着替え出しとくから」

後ろから声を掛けると、虎太郎が返事をしながら浴室へと消えていき、来栖は脱力しながらソファにドサッと座り頭を抱え込んだ。

「‥くっそ‥可愛すぎる‥」

先程から、虎太郎の視線に気が付いていた。
タクシーに乗った時も、自分がコートを脱いだ時も、視線を感じるが、振り向くと目を逸らし頬を赤らめる。
なんだ、あの可愛い生き物は‥。

「平常心だ‥平常心‥」

呪文の様に唱え、心を落ち着かせる。


虎太郎がシャワーから出ると、来栖が用意してくれていたパジャマを着る。
すると自分のサイズにピッタリで、来栖が事前に用意してくれていた事に嬉しくなった。
先程のドキドキが少し収まった気がするが、それでも緊張は薄れない。

「シャワーありがとうございます‥それと、このパジャマ‥ありがとうございます」

ソファに座っていた来栖が振り向くと、頬を赤らめた虎太郎が、パジャマの裾をモジモジと握り締め立っている姿に、胸がキュンと音を立てる。

「ああ、ピッタリで良かった。じゃあ、俺も入ってこようかな‥」

そっけなく返事を返してしまうが、どうにも正面から虎太郎の事を見れない。

「これ、虎太郎がこないだ気に入っていたお酒、用意してあるけど、飲むか?」

来栖が指さした方を見ると、以前、眠れなくなった時に作ってくれた蜂蜜入りのブランデーが置いてあった。

「あっ、美味しいやつ‥飲みます」

嬉しそうな虎太郎に、来栖も微笑むと、自分が持っていたグラスをテーブルに置き、浴室へと向かった。


シャワーを浴びリビングに戻ると、虎太郎がグラスを両手で持ちチビチビと口に運んでいた。
先程より頬が赤くなっているのは、酔っているのだろう。

「どう?美味しい?」
「はい。何杯でもいけちゃいそうです」
「クスッ‥好きなだけ飲んでいいけど‥寝ちゃダメだよ‥」

来栖がウィンクをしながら口にした言葉に、虎太郎が耳まで赤くなり口をパクパクさせた。

「ねっ‥寝ません‥」

来栖は虎太郎に近づき、虎太郎の手からグラスを取りテーブルに置くと、息が掛かるくらいまで顔を近づけ鼻先で触れ合う。

「‥虎太郎‥好きだよ」

優しく触れる唇がチュッと音を鳴らし、何度も啄む様な口づけを虎太郎の顔中に落としていく。

「‥んっ‥‥はぁ‥‥」

もどかしいくらい優しいキスで、蕩けそうな顔をした虎太郎が来栖の首に腕を回すと、自分から強請っているように、身体を密着させる。
来栖の口づけが頬から耳に移動し、首筋に熱い吐息が掛かると、それだけで身体に痺れる感覚が走り、思わず声が漏れる。

「‥‥ぁ‥っ‥‥」
「‥‥ベッドに行く?」

来栖が耳元で囁くと、虎太郎は来栖の肩に顔を埋めながら小さく頷いた。
ひょいっと来栖に抱えられると、虎太郎の腕がギュッと来栖の首にしがみ付く。
寝室まで運ばれると、虎太郎はベッドに優しく降ろされた。
横たわる虎太郎の隣に来栖が腰掛けると、虎太郎の頬に触れ優しく撫でる。
その瞳には優しさが溢れ、虎太郎は涙が出そうになる。

「‥虎太郎‥俺はいくらでも待てるし、無理強いはしたくない‥だから、もし怖かったり止めて欲しかったら、ちゃんと言って欲しい‥分かった?」

傷付けないように優しく伝えてくる来栖に、虎太郎は目の奥が熱くなる。

「怖くないよ‥来栖主任‥大好き」

そう言って伸ばされた手が来栖の頬に触れると、引き寄せられるように顔が近づき口づけを交わす。
受け入れる唇からは吐息が漏れ、絡めとられる舌が艶かしく蠢く。
唇の隙間から唾液が漏れ、甘い声と湿った音が響いていく。
来栖の手が虎太郎のパジャマをゆっくりと剥ぎ取り、露になった白い肌に手を這わすと、まるで別の生き物のように身体を波打たせる。
離した唇から銀の糸が引き、虎太郎の舌が名残惜しそうに差し出され、荒い呼吸が唇に触れると、来栖の下半身がズンと重く痺れる。

――俺‥ヤバいかも‥。

潤んだ瞳で見つめられると、まるで魔法を掛けられた様に夢中になり虎太郎の唇に吸い付き、誘われるがまま唇を押し開き口内を弄る。

「‥‥んぁ‥‥はぁ‥‥」

途切れ途切れの熱く湿った吐息が漏れ、来栖の手が撓る身体の小さな突起に触れると、またビクッと身体が反応する。
ゆっくりと壊れ物に触れる様に、優しく時間をかけて愛撫していく。
虎太郎は、来栖の手に翻弄されるように、まるで自分の身体がオーブンに入れられたチーズの様に蕩けていくのを感じていた。
虎太郎のグズグズに蕩け切った身体の中心にある昂ぶりは、まだ一度も触れられていないのに、もうすでに限界を迎えようとしている。
すると来栖が自分の昂ぶりをグイッと虎太郎に押し付けてきた。
すでに成長しているそれは、雄々しく存在感を放っており、虎太郎は自分と同じ思いに嬉しくなる。
薄っすらと開いた瞳から見えるのは、来栖の欲情を含んだ瞳で、その瞳を見た瞬間に、自分の腹の奥にある秘部がドクンドクンと波打ち始める。

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