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記録05
まだ出会ったばかりなのだから
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番士を前に、鬼は少女を庇うように立った。
それは、紛れもなく彼の意思だったが、
(…なぜ俺が)
無意識に動いてしまったと鬼は思い、納得がいっていない様子だった。
番士は番頭の命令と共に、刀を揃え一気に襲いかかった。
次々斬りかかる番士達の攻撃をモノともせず、軽々と身を翻しながら、鬼は反撃していく。
まさに一瞬の出来事だった。
鬼が手のひらを番士の体に軽く触れる度、体全体が炎に包まれ、番士が目で追うこともなく倒されていった。
最後に残された番頭は恐れ慄き腰が抜け、情けない声で鳴く。
「ひっ…い、命だけは…ッ」
鬼は番頭を冷淡な目で一瞥し、言い捨てた。
「二度と立ち入るな」
番頭は、まだ息のある番士達を置いて脱兎のごとく逃げ去っていく。
その様を赤い門の下で、少女は瞬きもせず見ていた。
鬼は少女に語気を強めて言い放つ。
「おい、餓鬼!俺は父親じゃねぇぞ‼︎」
少女はその声で思わず肩がはねる。一瞬怯えた様子を見た鬼は平常に戻り、静かに問うた。
「…なぜ俺にそう言った?」
少女はしばらく目を泳がせ一言だけ放つ。
「…わかんない」
鬼はため息を吐きながら、少女をだき掲げてその場を去った。
人が滅多に来ない神社に鬼は立ち寄る。
そこには、最初から待っていたかのように、ひとりの人物が立っていた。
「う~ん、何か連れてくる予感はしていたけど……」
「えらいもんを拾ってきたね。有鬼」
なんて言いながら有鬼に抱えられている少女を、じっくり見定める。
その人物の両目には包帯が巻かれており、首元には白い蛇を巻いていた。
「拾ったんじゃない、捨てる場所を探していただけだ。」
「なぁにちゃっかり私に押し付けようとして、放っておけないから連れてきたんでしょう?」
「……そのつもりはなかったはずなんだけどな」
有鬼はそれだけ言って少女を突き出す。
「ほら認めた。仕方ないねこの子を見てやろうじゃないか」
差し出された少女を抱きかかえ、有鬼と共に神社の中へ入っていった。
「突き出したなら一緒に入ってこなくていいのに…」
蛇を首に巻いた男は少女に付いている手枷と足枷を外しながら、有鬼に向けて文句を言う。
有鬼は太々しく横を向いていた。血の付いた手も腫れた頬も布で拭われながら、少女は不思議そうに顔を見上げていた。
「ふふ、気になるかい?」
男は自分の目元を触りながら微笑んだ。
「大丈夫。ちゃんと視えてるから」
「……」
少女は言葉を失い、しばらく沈黙が続いた。男はその空気を壊すように、ゆっくりと話しかけた。
「…うん。まずは色々聞こうじゃないか。貴方の名前とどうやってこの世界にやって来たのか知りたいな。」
聞かれた少女は戸惑いながら、何かを思い出そうとしてしばらく黙っていた。
「まずは私から名乗ろうかね。私は巳波と言う者だ。神の使いとして、ここにいるんだよ。」
「悪魔に名前なんてないだろう」
有鬼は吐き捨てるように言う。それを聞いた巳波はほんの少し怒った様子で
「この子を任せたなら少し黙ってなさい。」
有鬼に顔を向けることもなく、冷静に放った。
少女は巳波の顔を伺いながら、小さく呟く。
「……あんま、だと思う。」
「…ん?あゆま?」
巳波がそう聞き返すと少女はそれだ!と言いたそうに目が輝く。
「そうか、あゆまって言うんだね。いい名前だ。」
嬉しそうに微笑んでいたあゆまだったが、ふと、あることに気づく。
さっきまですごく寒くて全身が痛かったのに、今はなんともない。
むしろ暖かく感じていた。
「……あゆま?安心したのかい?」
あゆまの感情が溢れて大きく泣き叫ぶ。しばらくして疲れたのか巳波の膝の上で眠っていた。
「まだ他に聞きたいこともあったんだけどな。」
聞くのはまだ先でもいいだろう。巳波はあゆまの頭を撫でながら有鬼に話しかける。
ーーまだ出会ったばかりなのだからーー
それは、紛れもなく彼の意思だったが、
(…なぜ俺が)
無意識に動いてしまったと鬼は思い、納得がいっていない様子だった。
番士は番頭の命令と共に、刀を揃え一気に襲いかかった。
次々斬りかかる番士達の攻撃をモノともせず、軽々と身を翻しながら、鬼は反撃していく。
まさに一瞬の出来事だった。
鬼が手のひらを番士の体に軽く触れる度、体全体が炎に包まれ、番士が目で追うこともなく倒されていった。
最後に残された番頭は恐れ慄き腰が抜け、情けない声で鳴く。
「ひっ…い、命だけは…ッ」
鬼は番頭を冷淡な目で一瞥し、言い捨てた。
「二度と立ち入るな」
番頭は、まだ息のある番士達を置いて脱兎のごとく逃げ去っていく。
その様を赤い門の下で、少女は瞬きもせず見ていた。
鬼は少女に語気を強めて言い放つ。
「おい、餓鬼!俺は父親じゃねぇぞ‼︎」
少女はその声で思わず肩がはねる。一瞬怯えた様子を見た鬼は平常に戻り、静かに問うた。
「…なぜ俺にそう言った?」
少女はしばらく目を泳がせ一言だけ放つ。
「…わかんない」
鬼はため息を吐きながら、少女をだき掲げてその場を去った。
人が滅多に来ない神社に鬼は立ち寄る。
そこには、最初から待っていたかのように、ひとりの人物が立っていた。
「う~ん、何か連れてくる予感はしていたけど……」
「えらいもんを拾ってきたね。有鬼」
なんて言いながら有鬼に抱えられている少女を、じっくり見定める。
その人物の両目には包帯が巻かれており、首元には白い蛇を巻いていた。
「拾ったんじゃない、捨てる場所を探していただけだ。」
「なぁにちゃっかり私に押し付けようとして、放っておけないから連れてきたんでしょう?」
「……そのつもりはなかったはずなんだけどな」
有鬼はそれだけ言って少女を突き出す。
「ほら認めた。仕方ないねこの子を見てやろうじゃないか」
差し出された少女を抱きかかえ、有鬼と共に神社の中へ入っていった。
「突き出したなら一緒に入ってこなくていいのに…」
蛇を首に巻いた男は少女に付いている手枷と足枷を外しながら、有鬼に向けて文句を言う。
有鬼は太々しく横を向いていた。血の付いた手も腫れた頬も布で拭われながら、少女は不思議そうに顔を見上げていた。
「ふふ、気になるかい?」
男は自分の目元を触りながら微笑んだ。
「大丈夫。ちゃんと視えてるから」
「……」
少女は言葉を失い、しばらく沈黙が続いた。男はその空気を壊すように、ゆっくりと話しかけた。
「…うん。まずは色々聞こうじゃないか。貴方の名前とどうやってこの世界にやって来たのか知りたいな。」
聞かれた少女は戸惑いながら、何かを思い出そうとしてしばらく黙っていた。
「まずは私から名乗ろうかね。私は巳波と言う者だ。神の使いとして、ここにいるんだよ。」
「悪魔に名前なんてないだろう」
有鬼は吐き捨てるように言う。それを聞いた巳波はほんの少し怒った様子で
「この子を任せたなら少し黙ってなさい。」
有鬼に顔を向けることもなく、冷静に放った。
少女は巳波の顔を伺いながら、小さく呟く。
「……あんま、だと思う。」
「…ん?あゆま?」
巳波がそう聞き返すと少女はそれだ!と言いたそうに目が輝く。
「そうか、あゆまって言うんだね。いい名前だ。」
嬉しそうに微笑んでいたあゆまだったが、ふと、あることに気づく。
さっきまですごく寒くて全身が痛かったのに、今はなんともない。
むしろ暖かく感じていた。
「……あゆま?安心したのかい?」
あゆまの感情が溢れて大きく泣き叫ぶ。しばらくして疲れたのか巳波の膝の上で眠っていた。
「まだ他に聞きたいこともあったんだけどな。」
聞くのはまだ先でもいいだろう。巳波はあゆまの頭を撫でながら有鬼に話しかける。
ーーまだ出会ったばかりなのだからーー
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