「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

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第2章 姫

23話 やりたいこと

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 次の日。

 この日、礼儀の訓練にはウテナが来てくれた。

 彼女はいつもの凛とした顔つきだが、どことなく疲れたような陰が感じられる。

「ウテナ。最近忙しいようだけど大丈夫か?」
「最近ロネ姫の我がままがすごくてな……。対応するのでかなり大変なんだ」
「我がまま? それって護衛のウテナが何とかする問題なのか?」
「勿論全てではないが……。姫を守るのは我々だからな。出来る限りの事をしなければならん。それに、少し前に仕事を押し付けていた部下からいい加減にと怒られてな……」
「沢山押し付けてたの?」
「そ、そんなことは……無いぞ?」

 ウテナは俺と目線を合わせないようにしてどこかを見つめている。そして、話題を変えようとしてきた。

「あ、そうだ。今日は新しいお菓子を作って見たんだ。後で食べてくれないか?」
「お、本当か? 勿論食べたい。ウテナの作るものは美味しいからな」
「任せてくれ」

 少し雑談をした後、お待ちかねのお茶タイムになる。

「さ、召し上がってくれ」

 ウテナは俺に黒いクッキーの載った皿を差し出してくれる。

 俺はそのクッキーを一つ摘まみ、口に入れた。

「相変わらず美味いな」

 チョコレートの仄かな甘みが広がり、頭に使った栄養が回復していくような気がする。

「そ、そうか? 褒めても何も出んぞ? 紅茶だ」
「出るじゃないか。うん。紅茶も美味しい。しかし、茶葉を変えたのか? 味が違うような気がするが……」
「やっぱり分かるか……。いつも取り寄せているものが魔物の影響で届かなくってな。すまん」

 彼女は少し眉を寄せ、軽く頭を下げてくる。

「そんな謝ることじゃない。これはこれでおいしいよ」
「そうか? それなら良かった。いつものじゃないと満足してくれないかと思っていたからな」
「ウテナが入れた物なら何でも美味しいよ」
「……」
「ウテナ?」
「な、何でもない。そうか。私の入れたものなら何でもいいか」

 ウテナがそう言って自分でもクッキーを食べる。

「そう言えば、ロネスティリア姫ってどんな人なんだ?」
「ロネ様か? そうだな……」

 ウテナがそう言って時計を見る。

 時刻は今丁度3時を過ぎたあたりか。

「よし、後2時間は話せるな。軽くではあるが話しておこうか。まずは第1章出会いからだな」
「待って?」

 ウテナさん? 2時間ロネ姫について話す気ですか?

「ん? どうした? ロネ様の話が聞きたいんじゃないのか?」
「そうだけど、流石に2時間も話し込むのはまずいと言うか……」
「大丈夫だ。皇族の方々の話もいずれしなければならないと思っていたのだ。その為ならば仕方ない」
「え、それじゃあ他の皇族の方々もそれくらい時間がかかるのか?」

 正直勘弁してほしい。

「いや? 大体5分もあれば語りつくせるぞ」
「え? でもロネ姫は2時間って」
「ロネ様を他の方と一緒に……とは大口では言えないが、セレットになら言っても良いだろう。ロネ様はそれだけのことが出来るお方。だから詳しく話しておかなければならないんだ」
「確か皇帝陛下の話は30分ぐらいだったよな?」
「うむ。皇帝陛下の話は既に多くの人が知っているからな。特にいうことはない。だが、ロネ様は別なんだ」
「そ、そうなのか……」

 そうして、ウテナによるロネカ姫の話が始まろうかという時に、扉がノックされた。

 コンコン

「どうぞ」
「失礼します」

 そうして中に入ってきたのは昨日のオリーブだった。

「どうした?」
「ウテナ様、ロネスティリア姫がお呼びです。至急来るようにと……」
「姫様が……。分かった行こう。セレット。済まんが今日はこれで許してくれ」
「ああ、仕事があるとなれば仕方ない。また頼むよ」
「感謝する。戻るぞ」
「はい」

 2人はそう言って部屋から出ていく。

 俺は1人で自習という気にもなれずフラフラと外に向かう。

 歩いていたら何となく目についたフランツに話しかける。彼は灼熱の龍脈の外の机で何か書き物をしていた。

「よう、調子はどうだ?」
「調子って……。こっちは事務仕事で大変だよ。セレットはどうなんだ?」
「それが最近暇でさ……。腕が鈍っちゃいそうなんだよ」
「暇って……。昨日はパルマんとこで訓練とかやったんじゃねえのか? それに、ウテナ様に指導も受けているんだろう?」
「そうだけど……。前の国にいた時はもっとやってたからさ……。龍脈の中に泊り込みとか普通だったし、小道にも最近入って無いし……」
「泊り込み……小道って。そんな事する奴は自殺志願者しかいねえよ」
「そこはなれだよなれ。やってみればできる」
「出来ねえよ……。そんなに暇って龍騎士としての仕事はねえのか?」
「それが無いんだよ……」
「そりゃどうしてまた」
「何でも今までになかった職だからどこに入れるかで揉めてるんだって。それで、ハッキリと決まるまでに時間がかかるらしい」
「いいじゃねえか。暇なら好きなことしてりゃいい」
「それなんだけど、あんまり暇そうにしてるとセルダース様が小道に連れて行けって」

 すれ違うたびに連れて行けと言ってくるのだ。その度に彼についているお付きの人に宥められ連れていかれている。

「なら自分からどっかここがいいですって言えばいいじゃねえか。お前が自分から申請すりゃ問題ねえだろ?」
「確かに……ただ、何がやりたいかがわかんねえ」
「それだけ強いなら龍脈衆に……っていうほどじゃないのか?」
「ああ。時々は倒しているが、それでも一生狩り続けたいのかって言われるとな」
「あんだけの力があるのに大変だな。なら俺らのチームに来る……と。やめておこう」

 そこまで言いかけて、フランツは止まってしまった。

「どうしてだ?」
「俺達は俺達で何とか出来る。だから、お前ほど強いやつを縛り付ける様なことはしたくねえんだよ」
「そうか……」
「ああ、だから、誰かお前を、セレットを必要としている奴の所に行ってやるといい」
「俺を必要としてくれる人なんているか?」

 正直、フランツといい、パルマといい。ウテナ、アイシャや秘書といい。皆自分の仕事に誇りを持ってやっているのが分かる。

 そんな所に俺が入って言っていいのか。そう思ってしまう。

「探せば幾らでもいるだろうよ。だからそれだけの待遇を勝ち取れたようなもんなんだぜ?」
「そうか?」
「そうだよ。じゃなかったら龍騎士なんて称号貰えてねぇ。自信をもってやれよ」
「そうか……。分かった」

 そうだよな。俺は龍騎士を貰ったんだ。なら、ちゃんと出来るように頑張らねば。

「さ、その龍騎士様に早速お願いがあるんだが」
「なんだ?」
「ここにある事務書類を少し手伝って欲しいんだ」
「ふっ」

 俺は軽く笑っていう。

「いいぞ」
「マジかよ」
「俺で出来ることならな」

 それから夕食の時間になるまで書類整理を手伝った。

 お礼としてフランツの家で食事をごちそうになったが、かなり美味しい帝国風の料理を味わうことが出来た。
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