「サボってるだろう?」と追い出された最強の龍脈衆~救ってくれた幼馴染と一緒に実力主義の帝国へ行き、実力が認められて龍騎士に~

土偶の友

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第3章 動乱

63話 武器が無くても

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 エトアがアイシャの喉元に剣を突きつけている。

「元気だよ」

 俺は殺気の籠った目で奴らを睨みつける。返事はするが最低限だ。

 俺が返事すると、ライアットは道化の様に大ぶりな動作で驚く。

「ああ怖い! なんという目をしているんでしょうか! 折角こうして貴方の幼馴染と元気な状態で会えたと言うのに!」
「何が言いたい。というか、前に会った時はそんな雰囲気じゃ無かっただろうが」
「あの時は貴方がとってもつまらない顔をなさっていたからですよぉ。それが今は貴方の顔は最高ではないですか!?」
「こんな奴だったのか」
「貴方には結構してやられましたからねぇ。色々とやり返してあげたいのですよ」
「? お前にはパーティーの献上品で負けただけだと思うが?」
「そうでもないんですねぇ。実は……」
「先輩。いい加減話を進めてください。上に行かなければならないんですから」
「っち。分かっている。折角楽しい所だったのに……。さ、龍騎士殿。その武器を投げ捨てて貰おうか?」
「むーむむー! むむむー!」

 アイシャは口を布で塞がられていて全力で首を振っている。

 俺は腰につけていたアスカロードを離れた場所に投げた。

「むむー! むむむー!!!」

 アイシャが視線で責めてくるが、俺はこの判断を間違っているとは思わない。

 俺達の様子を見て、ライアットはほほ恐ろしいほどに吊り上げる。

「くくく、幼馴染でしたか? いい関係性ですねぇ。ま、話はそれだけではありません。龍脈に入りなさい」
「ああ」

 俺は次の龍脈に歩き中に入る。

「ぎゃらららららららららら!!!」
「ごろろろろろろろろろろろ!!!」

 その龍脈の中にはストームドラゴンとロックドラゴンがこちらに向かって威嚇していた。両方Aランクの龍で普通に戦えば手ごわい相手だ。

 そんな2体を前に入り口から3人が俺の方を見ていた。

「さて、それではそのまま2体と戦って貰います。拒否は……しませんよね?」

 ライアットがそう言ったタイミングで、エトアが剣をアイシャの喉元に近づける。

「ゲスが」
「くっははははははははは。いい、いいですよその顔。さぁ、早く戦いなさい! まぁ、武器もなしにどこまで戦えるかはみものですけどねぇ!」

 そう言ってライアットは一歩、二歩と踏み出してくる。そこまで俺の顔がみたいのか。

「先輩。あんまり奴に近づき過ぎるのは」
「面倒ですねぇ。枷でもつけられたら良かったのですけど」
「ぎゃらららららららららら!!!」
「ごろろろろろろろろろろろ!!!」
「うお!」

 俺は後ろの3人に気を取られていて、危うくブレスを食らう所だった。

 直前で気付いて何とか躱す。

「惜しいですねぇ! もうちょっとだったのに! これからどうするんですかぁ!」

 遠くから見ても分かるくらいに唾を飛ばしている。

「どうするって。決まってるだろ? 龍を狩るだけだ」
「は?」
「そんな事出来る訳……」

 俺は龍力を吸い集め、体内の魔力と混ぜ合わせる。そして、それで全身を強化した。

「ぎゃらららららららららら!!!???」
「ごろろろろろろろろろろろ!!!???」

 龍達は俺の姿が消えたように見えただろう。それだけ、移動速度には緩急をつけた。まずは倒しやすい脆い方。ストームドラゴンに狙いを定める。

 奴の背面に回り、龍にも奴らにも見えないように龍力と魔力を拳にまとわせ、ストームドラゴンの心臓の辺りを撃ち抜く。

「はぁ!」

 ドン!!!

 一瞬だけ何かを穿うがつ音がして、ストームドラゴンの体には1m程の穴が生まれた。

「ごろろろろろろろろろろろ!!!???」

 ストームドラゴンは断末魔すらあげずにその場に崩れ落ちる。そして、ロックドラゴンの悲鳴を聞く。

 だけど、このロックドラゴンは使える。俺はストームドラゴンを蹴り飛ばし、入り口の方に蹴りやる。

「!」
「アースウォール!?」
「むむー!?」

 3人にぶつからないかなりギリギリの所に蹴ったと思ったけど、少し行き過ぎてしまったかもしれない。しかし、ライアットの魔法で止めたらしい。ふむ。それくらいの発動速度か。

 俺はそれを発動させている間に、ロックドラゴンに近づき再度心臓を穿つ。

「少し貰うぞ」

 絶命するロックドラゴンの体から丁度いいサイズの石を数個剥ぎ取った。

 ロックドラゴンは既に死んでいる。だから悲鳴をあげることもない。奴らも俺の動きには気付いて居ないだろう。俺に武器を持っていなくても戦わせた事が奴らの敗因だ。

「ふん!」

 俺はストームドラゴンの体に向かって鋭い形をした石を2つ投げつける。更に後を追うように駆け出した。

「っち! 邪魔ではありません……か! がぁ!」
「せんぱっ! ぐっ……。これは!」

 俺が投げた石は、ストームドラゴンの体を貫通し、その後ろにいるライアットとエトアに当たるコースだった。

 しかし奴らも実力者、それだけで勝てると思うほど甘い相手ではないのは知っている。だから、俺自身も行く。

「はぁ!」

 俺は龍力と魔力を纏わせた拳をストームドラゴン越しにエトアに向かって振りぬく。当然、アイシャには当たらないように調整は済んでいる。

 ボッ

「え……」

 それがエトアの最期の言葉となった。俺が振りぬいた拳は、奴の顔面を半分にしていたからだ。そして、反対の手で手刀をライアットに向けて放つ。

「アースウォール改! ぐあああああ!!!」

 手刀を放つのが遅れた為に奴に魔法を放つ機会を与えてしまった。ただし、軌道が少し逸れた程度で、奴の片腕は持って行けた。

しかし、これで終わらせる訳にはいかない。次は逃がさない。

「終わりだ」

 俺はもう一度拳を振りかぶり、奴に狙いを定める。魔法を唱えてもアイシャに当たる前に魔法ごとやつを消し飛ばす。

「テレポーテーション!」
「何」

 奴は魔法で俺に攻撃をするでもなく、アイシャを殺しにかかることもなかった。これは逃げた可能性も高いが、油断は出来ない。

 いきなり背後から現れてドスリという可能性もあるのだ。

 俺は周囲を警戒しながら、直ぐにアイシャの側に行く。

「アイシャ!」
「むむー!」
「大丈夫か!?」

 俺は彼女に近づき、直ぐ傍に立ったままのエトアの死体を蹴り飛ばす。

 そして、アイシャの口に嵌められた布を取り去った。

「上が! 上が大変なの! どこかの国の護衛達が反乱を起こしてて! それで多くの奴らが城内に!」
「なんだって! だけど、こっちの龍脈も!」
「そんな!」

 アイシャもかなり混乱しているようでどうしようどうしようとなっているが、俺は彼女が慌てているのを見て少し落ち着こうとする。

「アイシャ、ひとまず落ち着こう。まず、秘書は無事か?」
「多分……。部屋に帰っていたはず、それから突然轟音がなったの。それから少しして慌ただしくなったと思ったら反乱だって……」
「こっちもパルマと訓練をしていたら門番が殺された。そいつを捕らえることは出来たが、轟音がして、他の龍脈を確認したら門が破壊されているし龍が溢れ始めていたんだ」
「そんな……」
「今はお前をパルマの所に連れていく。それから俺は他の龍脈を制圧してこうと思う。上は問題無かったか?」
「オルドア様とかジャグレット様が指揮を取ってたから大丈夫だと思う。部屋に帰ってる途中で捕まったんだけど」
「なんにしろ無事で良かったのならいい。上も任せていいならやっぱりこっちでいいな。と、掴まってろ」
「え? きゃあ!」

 俺はアイシャを抱え、大渦の龍脈へ急ぐ。

 到着するとパルマが捕らえられた奴の顔を元の形が分からないくらいにぼこぼこにしていた。

「パルマ! 少しの間アイシャを守ってくれ!」
「あ? セレットか! どうなってやがる!」
「詳しい話はアイシャから聞いてくれ!」
「あ! 待て! こいつらはグラディウス侯爵家の手先だ! エトアやライアットみたいな手練れが出てくるかもしれねぇ! 気をつけろ!」

 パルマが叫ぶが、それを邪魔するようにボコボコにされていた男が俺達を笑う。

「はは、お前達ではエトア様やライアット様に手も足も出せまいよ。俺程度を倒したくらいで調子になるなんて」
「エトアは殺した」
「なん……だと……?」
「エトアは殺したぞ。ライアットには逃げられたが」
「ふ、ふん。嘘を言った所で……」

 そういうやつは動揺しているせいか、ガクガクと体を振るわせていた。

「まぁいい。お前を納得させた所で意味はないからな。パルマ。アイシャを頼む」
「任せろ。ここでも龍が出てくる気配はない。全力でやってきてくれ」
「ああ」

 俺はそう言って他の龍脈に向かって駆け出した。
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