「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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2章

39話 サナの残り時間

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 僕は学園長から逃げ帰るようにして自分の部屋に戻る。

「ふぅ……中々ハードな1日だった……」

 そのままシャワーを浴びて寝てしまおうか、そう思うけれど、久しぶりに本を読みたいと思った。

「サナの黒蛇病の事に関してもっと知らないと……」

 僕の目的はサナの黒蛇病を治療すること。
 スキルの練習をしているのはその過程に過ぎない。

 重たい体を動かして、借りた……『不治の病についての研究』の続きを読み進める。

 それから1時間は読んでいただろうか。
 ついに黒蛇病のページに到着してむさぼるように読んでいたのだけれど、僕はあまりの衝撃に頭を思いきり殴られた様な気持ちだった。

 黒蛇病のページにはこう書かれていた。

『黒蛇病になった者は若いうちに死亡する事例が確認されている。そして、その研究の過程で、15歳以上生き延びた者はいない』と。

 僕の今の年齢は15歳。
 そして、サナの年齢は14歳。

 つまり、サナの寿命は後1年も存在しない。

 僕に出来る事は何がある?
 僕が……僕がサナを治療するために出来ることは……。

 頭が混乱し、ここでクラーケンになってしまおうか?
 全て……全て吹き飛ばしてしまおうか。
 そう思ったけれど、流石に思いとどまる。

 ダメだ、今のままだとダメだ。
 混乱した頭を落ち着ける為に、ベッドに入る。

 僕はその日、眠る事が出来なかった。

******

「おはよう……」
「おはよう……って、クトー? 顔色悪すぎるんだけど?」

 僕は一睡いっすいもせずに授業に参加する。

 そこには昨日一緒に授業を取ろうと話していたレイラがいた。
 勿論、その周囲には護衛の騎士がいるけれど、アルセラが抑えてくれる。

「その……ちょっと……聞きたくない……いや、でも、聞かないと不味いけど、それでも、聞きたくない。想像したくない事を知っちゃって……」
「なんなの? その想像したくないことって」
「黒蛇病のことについて……」
「……」

 僕がそう話すと、レイラの表情が一気に無表情になる。
 整った顔も美しいけれど、今はまるで美術品の様にピクリとも動かない。

「クトー。ちょっといいかしら?」
「いいけど……どうしたの?」
「教会に請求していた黒蛇病の資料が届いたわ」
「ほんと?」
「ええ……でも、ここでは教えてあげられないから。ちょっと席を外しましょう」

 そう言って彼女は席を立つ。

「え……でも、授業は?」
「1回抜けた位で問題はないでしょう? それに、知りたいんでしょ?」
「……うん」

 黒蛇病の事についてならなんでも知りたい。
 なんでもいい。
 まずは知らなければ治療することは出来ないからだ。

 知ることが出来るのなら、授業なんてサボっても問題ない。

 僕は、彼女について教室を出た。
 当然、後ろからはアルセラ達もついて来たけど。



 しばらく歩き、僕たちは空き教室に入る。
 中には誰もおらず、秘密の話をするには十分だ。

「アルセラ。部屋に誰も入れないで」
「は! 畏まりました!」

 アルセラは了承すると、他の子達に指示を出して行く。

 僕は扉を閉めて、レイラと向かい合う。

「それで……クトー貴方は黒蛇病の何を知ったの?」
「僕が知ったことは……」

 昨日、本を読んで得た知識を彼女に話す。

 彼女はそれを黙って聞いていて、話が終わると嘆息たんそくする。

「はぁ……そう……。あたしの方にも教会からの資料が届いた。そう言ったわよね?」
「うん……」
「それによれば、黒蛇病にかかった者で、15歳を迎えた者はいない。これは事実としてあるらしいわ」
「やっぱり……」

 このまま行くと……サナは……。

「そして、どうして黒蛇病にかかるのかは分かっていない。調査をしようとした人もいたらしいけれど、何故か皆不審な死を遂げている」
「不審な死?」
「ええ、昨日まで元気だったのに黒蛇病について研究をし始めた途端に死んでしまったらしいわ」
「そんな……調べようとしただけで?」
「ええ、それも、時の教皇でさえそうなってしまった。だから、教会でもこれ以上の事は分からない。そう書かれているわ」
「教皇が死ぬ……? 黒蛇病について調べようとしただけで?」
「ええ、まるで呪術で呪い殺されたみたいだったって。教皇は本部にいるからそんな事あるはずはないけど……それでも、何かあることは確かよ」
「そんな……どうやったら……」

 ちなみに、呪術とは自身の寿命や大切な者を捧げて、それでどんな属性の物でも使えるようになるという魔法の一種だ。
 他にも他者を洗脳したり、記憶を書き換えるなんていうこともできると聞いた。
 けれど、何かを捧げなければ大した威力ではないし、その危険性から習得している人も少ないので情報も少ない。

 そんな呪術の使い手が、今は死んでいるかも知れないけれど、敵にいるのであれば……。

 僕は思い悩む。
 教皇が殺されるという事もだけれど、これを調べようとするだけで死ぬ。
 もしそうであるなら、レイラに手伝ってもらう訳には行かない。

「ありがとう……レイラ。僕はもうこれで十分だよ。これからは……」
「ちょっと待ちなさいよ」
「え?」

 僕は立ち上がって部屋を出ようとしたのを袖を引っ張られて止められた。


「何1人で解決しようとしているの? ここまで来たんだもの。あたしも手伝うわよ」
「でも……呪い殺されてしまうんでしょう? それには巻きこめないよ」
「クトー。貴方、あたしを誰だと思っているの?」
「え? レイラだけど……」

 そう言うと、レイラはちょっと嬉しそうに顔を赤くする。

「そうだけど……あたしは聖女候補でもあるの。だから、あたしに呪いは効かないわ。もし効いても、アルセラが受けてくれる。それをあたしが治せば問題ないわ」
「でも……」

 大丈夫だと言ってくれるけれど、それでも、僕はレイラの事が心配だ。

「クトーあたしは聖女なんてどうでもいいわ。目の前で困っている人がいたら治療してあげたい。あたしの出来る限りを使ってね」
「……」
「だから、あたしもやるわよ。黒蛇病で苦しんでいる人もいる。だから、もしそれを治療することが出来たら、他の多くの人達の為にもなるんだから」
「レイラ……」
「だから、あたしは問題ない。一緒に、サナちゃんと治してあげましょう?」
「うん……ありがとう。レイラ」

 レイラがここまで言ってくれているのだ。
 僕も彼女を守る為に全力を尽くす。

「いいのよ。『聖なる祈りよ届けハイヒール』」

 彼女は僕に回復魔法をかけてくれる。

 それによって頭がスッキリした。
 頭の中にかかっていたモヤが晴れるような。

「え……いいの?」
「他の子がいないからね。でも、これで多少はスッキリしたでしょう?」
「そうだね……。なら、もっと前にやってくれても」
「さっきの事を伝えて、それでもあたしを参加させようとしないのなら殴ってやろうと思っていたからいいのよ」
「う……そんな理由で?」
「そうよ。でも、これからよろしくね」
「うん。よろしく……レイラ」

 僕たちは握手をして、今後の事について話し合う。

「これから黒蛇病について調べて行くって言っても、どうしたらいいのかな? 正直、教会でも情報を持っていないなら、調べるのはどうしたら……」
「ああ、ちょっと話は変わるけど、いいかしら?」
「? いいよ」

 何だろうか。
 レイラの雰囲気がちょっと怒っている様な気がする。

「あたし……昨日クトーになんて言ったのか覚えてる?」
「……何のこと?」

 僕が聞き返すと、彼女は怒りだした。

「王女の件に決まってるでしょ!? あたしが近付かないように、そう言った日から近付いているじゃない! もう噂になってたわよ!?」
「あ……その……ごめん」
「もう……確かにあの王女様には同情するけど、あの両手は本当に危険なんだからね? 気をつけなさい」
「分かった。心配してくれてありがとう」

 レイラは怒っているようで、心配してくれるとっても優しい少女だ。
 今も、僕のことやフェリスの事を心配している様だった。

「まぁ……いいわ。フェリス様と話せるのよね?」
「昨日少し話しただけだけど」
「それでも……よ。フェリスと話せるのならいいでしょう。せっかくなら、彼女の力を借りましょう?」
「彼女の力?」
「ええ、彼女は王女様でしょ? その力で、王城の書庫に入る許可とかもらえるかもしれないじゃない」
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