「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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2章

64話 感謝

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 リャーチェを倒した次の日、僕の体は特に何とも無かった。
 だから、普通に授業に参加する為に学園の廊下を歩いていた。

 最初は学園長に呼ばれていたのだけれど、流石にあの日は疲れていたので今日の放課後にさせてもらったのだ。

「あの人が……」
「ええ……」

 ただ、何だか今まで以上に多くの人からの視線が集まって正直恥ずかしい。
 何でこんなにも色んな人から視線をもらうのだろうか。

「あ、あの! クトー先輩!」
「え? あ、はい」

 僕はいきなり呼ばれて振り返ると、そこには数人の1年生がいた。

 彼ら彼女たちは一斉に頭を下げてくる。

「ど、どうしたの?」
「クトー先輩。助けてくださって本当にありがとうございました」

 彼らはそう言って説明してくれる。

「わたし達は……あの……昨日の……森へ行った時にいた者達です」
「ああ、怪我はなかった?」
「はい! クトー先輩が魔物達を倒してくださったお陰で、わたし達は元気です。でも……もしもあの時にクトー先輩が来てくださらなかったと思うと……」

 彼女の言葉を引きついて真面目そうな男の事が話しを引き継ぐ。

「クトー先輩が魔物達を倒してくださったお陰で、俺達は助かりました。それに……あんなに強い魔物をバッタバッタとなぎ倒して行くクトー先輩はマジでカッコ良かったです」
「あはは、ありがとう」

 ちょっとここまで言われたことはないのでびっくりしてしまう。

「嘘じゃないんです! 本当に……本当に助かって、感謝しているんです」
「そうです。そう思っている人はもっといて……でも、クトー先輩の迷惑になるかもしれないからっていうことで、俺達だけで来たんです」
「そ、そうだったんだ」
「はい! だから……その……わたし達は1年生で、あんまり何か出来るとかはないですけど、何か力になれることがあったら言ってください」
「出来る限り力になります。アニキとかが3年生にいるので、頼ってもいいですけど、本当に、何かあったら言ってください! 助けて頂いて感謝してます!」
「あの触手のスキル……凄いですよね。あんなにかっこいいスキルがあるなんて知りませんでした」
「先輩はこうも違うのかと教えられてしまいました……。俺達もクトー先輩の様になりたいです。でも、それは良くって、本当に、ありがとうございました!」

 彼がそう言うと、1年生達が一斉に頭を下げる。

「わ、分かった! ありがとう。君たちの気持ちは受け取ったよ」

 こんな風に頭を下げられる事なんてほとんど無かった。
 だからこそ、ちょっと驚きで戸惑うことしか出来ない。

 今まではタコ野郎とバカにしかされて来なかったスキルもこんな事になるなんて……。

「はい! それでは失礼します!」

 そう言って彼らは直ぐに去ってしまう。

 ふぅ……。
 流石にちょっと……なんと言ったらいいのか。
 でも、悪い気はしない。

「やっぱり……妹を助けてくれた……」
「やっぱり皆の味方だったんだ……」

 今の僕たちの光景を見た他の生徒も、ひそひそと僕のことを見て話している。
 その話している内容は悪いものではない。
 でも、それはそれで恥ずかしいのだ。

 僕は急いで次の教室に向かう。


「あ、おはようございます。ピュリー先生」
「クトー君。授業の前に少しお時間を頂いてもいいですか?」
「はい。なんでしょうか?」

 何か荷物を持ってきて欲しい。
 そんな事のお話だろうか?

 そう思っていたけれど、ピュリー先生の視線は真面目だ。
 どこかに歩いて行く様子もなく、僕に近付いてくる。
 彼女は僕の肩に手を置き、頭を下げた。

「クトー君。他の教師陣も代表して、私から言わせて下さい。本当に……本当にありがとうございます。貴方があそこに来てくれて……貴方が助けてくれて……。本当にありがとう。貴方がいなければ、私達は今頃この世にはいなかったでしょう」
「ピュリー先生……」

 先生の声は少しかすれている。

「クトー君。私たちは教師です。何とかして、ネクロウルフ達から生徒を守りながら戦っていました。でも、相手はAランクの魔物。しかも、倒した他の教師や……勇敢にも戦って死んでいった生徒達を使役して使って来る。そんな相手に、我々はドンドンと疲弊ひへいしていました。本来であれば、あんな所にいるはずのない魔物。しかも、護衛のはずの〈守護獣の兜ガーディアンヘルム〉もいない。そんな状況で、私は絶望していたんです」
「あんなに声を張り上げていたのにですか?」
「……あれは自分に声をかけて騙していたようなもの。あのまま5分もしていたら、私も今頃この世にはいなかったでしょう。だから、貴方は私の……いえ、私達の命の恩人なのです。他の教授陣も同じように考えています。私達に出来ることは……単位を少し融通することくらいですが、必要であれば言ってください」
「それは……いいんですか?」

 僕がそう聞くと、ピュリー先生は顔をあげて微笑んでくれる。

「もちろんダメですよ。貴方で無ければ……命の恩人である貴方で無ければこんな事はしません。でも私の……いえ、生徒達の命を守ってくださった貴方だからこそ。それくらいのことはします。本当にありがとうございます」
「ピュリー先生。頭をあげてください。先生がそうやって助けてくださるように、僕も出来る限りの事はしたいんです。だから、気にしないでください」
「クトー君……ありがとうございます。そうですね。あまり教師が生徒に近付くものではないですね」

 そう言って先生は僕からすっと離れる。

「でも、これだけは覚えておいて下さい。我々は、貴方のしてくれたことを忘れることはないと」

 ピュリー先生はそう優しく笑ってくれた。

「ありがとうございます」

 僕も、そう返すのが正しいような気がした。


 その日の授業は終わる。
 特に何か特別な事をする事は無かったけれど、どことなくレイラの距離感が近い様に感じた。
 気のせいだろうか。

 そんな授業が終わり、僕は放課後に学園長の部屋に行く。
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