「タコ野郎!」と学園のダンジョンの底に突き落とされた僕のスキルが覚醒し、《クラーケン》の力が使える様に ~突き落としてきた奴は許さない~

土偶の友

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3章

94話 復活

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「女神様!」

 ギーシュが喜んで彼女の元に向かう。

 しかし、クラーケンは警戒して近付こうとしない。

 僕は、ただただ絶望することしか出来なかった。
 サナが……サナが……。

 僕がそんなことになっていても、ギーシュには関係ない。
 女神の足元にひざまずいている。

「闇の女神様! よくぞ降臨されました!」
「なんじゃ……主は……」
「私はギーシュと申します! 闇の女神様の降臨を待ち望んでいた者です!」
「そうか……ご苦労なことだ」
「! はい! ありがたき幸せ! それで……闇の女神様にお願いしたい事が……」
「わらわの寝起きに面倒な事をさせるつもりか?」
「いえ……いえいえ、そんな訳ではないのですが……。1人、蘇らせていただきたい者がおりまして」

 蘇らせたい者? リャーチェでも蘇らせたいのだろうか。
 まぁ……今の僕には……どっちでも……。

「妹のミーシャを蘇らせて頂きたいのです」
「寝言は寝て言うが良い。わらわには関係ない」
「……そんなことを言わず、どうか……どうか助けて頂けないでしょうか」
「わらわは兄さん……なんじゃ……。違う。貴様に会いたいのではない」
「ですが! お聞き入れください! 私のことはどうなっても構いませんから!」
「くどい。第一……貴様、不愉快だな【闇の接収ダークドレイン】」

 ドン!!!!!!

 闇の女神がそう言って手を振ると、ギーシュは弾かれたように飛んでいく。

 そして彼はそのまま壁にめり込み、ピクリとも動かない。

「ふむ……。この力……フェンリルのものか。寝起きじゃが……悪くないの」

 闇の女神が何か言っているけれど、僕の耳には入ってこない。

 サナが……サナが……。

『おい。気を確かに持て』
『……』
『おい! 貴様、何を腑抜ふぬけたことになっている』
「だって……サナが……サナが……」

 僕は視界に見えるサナ……闇の女神に視線を送る。
 サナの見た目をしているけれど、軽く宙に浮いていた。
 彼女の手足には真っ黒な茨が緩く巻きついていて、茨は時折蛇に変化している。
 目は常に閉じ、周囲の感覚をゆっくりと味わっているかの様だ。

 僕はそんなサナではない様子を見て、悲しくなってしまう。
 立っているような姿勢は、彼女が望んでいたことではあるのかもしれない。
 けれど、サナの外側だけで中身は違うのであれば、それはもうサナではない。

 しかし、クラーケンはそんな僕を叱責しっせきする。

『いい加減にしろ、サナの事を諦めるつもりか』
『……』

 クラーケンの言葉を理解する事が出来なかった。

 諦める? 誰を? サナを?
 どうやって? 何で? 諦めるっていうのはおかしくないだろうか?
 もう既に闇の女神はサナの体に降臨してしまっている。

 サナを諦めないで済むのならそうしたい。
 そうしたいさ。

 サナは僕にとっての全て。
 サナがいるからこそ、僕はここまで生きて来られたんだ。

『ならば我の言葉を聞け』

 クラーケンはなおも言葉を続けてくる。

『闇の女神はまだ完全に降臨した訳ではない。それに、先ほどの会話を聞いただろう。サナの精神は……残っている』
『!?』

 信じられない。
 サナの精神が残っている?

『サナ嬢の想いがそうさせるのか……。それとも、闇の女神自身がそこまで降臨に積極的ではないのかは知らない。だが、闇の女神を追い出せれば、きっとサナは帰ってくるはずだ』
『それ……本当?』
『絶対ではない。なにせ相手は神だ。だが、帰ってくる確率は必ず存在する』
『そっか……』

 僕にとってその言葉だけでもう十分だった。
 サナが帰ってくる可能性がある。
 たったこれだけの言葉だけれど、どれほど嬉しいことだろうか。

『どうすればいい?』

 僕の口から出る言葉はそれだけだ。
 サナを守るためなら、神に喧嘩を売ることすらいとわない。
 サナを取り戻すためであれば、神すら殺してみせる。

『それでこそお前だ。と言っても、やることはそう難しいことではない』
『そうなの?』
『ああ、闇の女神は元々外に出るのが好きではない。こうして強引に降臨させられて、かなり不機嫌なはずだ』
『そ、そう』

 女神にも色々とあるのだろうかと思ってしまう。
 外に出るのが好きじゃないとか……。

『であれば、うまく説得することが出来れば、サナを返してくれるやもしれん。まぁ、多少痛めつける必要はあるかもしれないが』
『痛めつける……』

 サナの体を痛めつける。
 そんな事が僕に出来るのだろうか。

 でも、やらなければならない。
 サナを取り返す為に。
 サナの体を傷つけることになっても、僕が責任をとる。

『では行くぞ』
『うん。でも待って』
『なんだ?』
『体の制御は……僕がやってもいいかな』
『……理由を聞こうか』
『君が僕よりもうまく体を扱える事は知っている。でも、サナの体を攻撃するのなら、僕がやらなくちゃいけないと思うんだ』
『……』
『すっごく我がままを言っているのは分かっている。でも、君は僕の友人で……相棒だから、サナに手をあげないで欲しい』
『……』
『だから……ダメかな』
『……』

 僕がそう言うと、直ぐに体の制御が返って来た。

「ありがとう」
『防御はやってやる。触手2本の制御だけはもらっておく。攻撃は貴様に任せる』
「うん。頼んだよ」

 僕はそれだけ言うと、サナに……闇の女神に向かって泳ぎだした。
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