『星のテラスペクター』- アイとラヴィーの奇跡 -

静風

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本編

テラスペクト戦争#1

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プロローグ

宇宙の空間に浮かぶ特設超巨大スタジアムは、すでにその存在自体が圧倒的なオーラを放っていた。両星、グランサリアとテクノヴァの中間点に設置されたこの会場は、今日、ハイテクテラスペクト戦争の舞台となる。審判は、第三星から選ばれた者たちと、最先端のAIによって行われ、その公平性は疑いようのないものであった。全星へとライブ中継がされるこのイベントは、文字通り宇宙を熱狂させる一大事であった。

首脳部はすでにスタジアムに到着していた。グランサリアからは、アイとエレオン、そしてAIラヴィー。テクノヴァからはダダリオスとミラネッタが出席していた。

エレオン:「さて、ついにこの日が来ましたね。」

ダダリオス:「ああ、ついに来た、来たぞ!私のテクノロジーが全宇宙に誇示される日が!」

アイ:「うふふ、それは私たちのテラスペクトが最高であることを証明する日ですよ。」

ラヴィー:「Tilara solika-asolvia: Uvalina vivira-movinaisa vivara-movinaisa-solikaina vivira(試合とは冒険的な宇宙の踊りです。)」

ミラネッタ:「AIが詩的ですね。でも、この"踊り"が終わったら、我々が勝者であることが証明されるでしょう。」

エレオン:「それは試合が始まってからの話。ハイテクを駆使するのは良いが、テラスペクトの心、美しさ、それが一番重要だ。」

ダダリオス:「美しさも大事だが、力もまた重要だ。力があれば、美をも制御できる。」

アイ:「でも、美しさが心を動かし、心が力を生むこともあるんですよ。」

ラヴィー:「Sora-movinaisa laviara-movinaisa, sora vivara-movinaisa.(心とは、宇宙の踊り、宇宙とは心の踊りです。)」

全員が互いの視線を交わし、緊張感が一層高まる。しかし、その中には確かな期待と興奮も感じられた。これから始まるハイテクテラスペクト戦争は、ただの試合以上の何かをもたらすであろう。それは、各星、各文明が持つ美と力、そして心を試す究極の舞台となるのだ。

そして、試合の火蓋は切って落とされた。


選手入場

スタジアム内の照明が一斉に落とされ、スポットライトが選手入り口に向かってゆっくりと移動する。観客は期待感で高まっており、その声援がスタジアム全体を震わせていた。
三部リーグ:エトス・クローバー

スポットライトが三部リーグの選手、エトス・クローバーに焦点を当てる。彼は自信なさげにゆっくりと歩き出し、途中で足を取られてずっこけてしまう。

エレオン:「彼は大丈夫だろうか・・・」

アイ:「まあ、なるようになるよ!」

観客からは若干気まずい笑いと、それでも応援する声が上がる。
二部リーグ:リリア・スターダスト

次に照明が二部リーグの選手、リリア・スターダストに移る。彼女は堂々とした態度でスタジアムに入場し、特別な手袋をきらめかせながら手を振る。

エレオン:「彼女は確かに力を持っている。」

アイ:「うん、でもこれがテラスペクト。何が起きるかわからないから楽しみね!」
一部リーグ:ゼニクス・アストラル

最後に、一部リーグのゼニクス・アストラルが登場すると、その凄まじいオーラに観客は一瞬静まり返る。しばらくの沈黙の後、スタジアムは雷のような大声援で溢れた。

エレオン:「彼のオーラは確かに圧倒的だ。」

アイ:「でも、それが素敵なんじゃない?」

ラヴィー:「Poliara-movinaisa livira-movinaisa, poliara miravikara.(選手たちは星々の勇者、選手たちが宇宙の祭りです。)」

全選手が入場を終えると、スタジアムの中央に各国のフラッグが高く掲げられた。このハイテクテラスペクト戦争が、いよいよ始まる。観客、首脳部、そして選手たち、全ての心が一つになって、この壮大なイベントに集中していた。



国歌斉唱

スタジアムが再び静寂に包まれる。スポットライトが照明の海から浮かび上がり、舞台に集まる。アリアナ・コスモスとケンが登場し、マイクを持って中央に立つ。
グランサリア国歌:穴と山のテラスペクトの歌

アリアナが穴を掘り始める。彼女の掘る穴からは美しい光が放たれ、スタジアム全体にその光が広がる。

アリアナ:
「穴を掘り、深くまで、
闇を照らす、光の種。
地の底から、生まれゆく、
新たな夢、希望の木。」

ケンが穴に埋まる。彼の身体が土に覆われると、白目を剥きながら歌い始める。

ケン:
「山を築き、高く高く、
空に届く、希望の峰。
地と空が、交わる場所、
それが我ら、テラスペクト。」

観客は深い感動に包まれ、スタジアム全体が静かな拍手と涙で埋まる。
テクノヴァ国歌:穴と山とテクノロジーの歌

アリアナとケンは舞台から退き、テクノヴァの歌手が登場する。彼らはマイクを持ち、厳かに歌い始める。

歌手:
「穴と山、技と力、
テクノロジー、未来の火。
穴は深く、山は高く、
テクノヴァ、永遠に。」

国歌が終わると、スタジアムは雷のような大歓声で溢れた。この壮大なイベントは、いよいよ本格的に始まる。


控室のドアが開き、ゼニクス・アストラルが入ってくる。彼が控室に足を踏み入れると、空間そのものが震えるような感覚に襲われる。ゼニクスの凄まじいオーラが控室中に広がり、その力場に触れるものすべてが瞬間的に引き込まれる。彼が歩むたびに、床さえも微かに振動するように感じる。この男が一部リーグ、いや、テラスペクト界そのものの頂点であることに、誰もが納得する。

エトス・クローバーはそのオーラに圧倒されながらも、ゼニクスに話しかけようと心を決める。しかし、言葉が喉に詰まる。そんなエトスの様子を察したゼニクスが、初めて自ら口を開く。

ゼニクス: 「何か用か?」

エトスはびっくりして、一瞬気絶しそうになる。その様子をリリア・スターダストが微笑む。

勇気を振り絞ったエトスがようやく言葉を発する。

エトス: 「僕・・・、エトス・クローバーって言います・・・」

ゼニクス: 「ああ、よろしくな。ゼニクス・アストラルだ。」

エトス: 「質問があるんですけど・・・二つほど聞いてもいいですか・・・?」

ゼニクス: 「なんだ?」

エトス: 「ゼニクスさんはなぜ、そんなに凄いオーラを出せるんですか・・・?」

ゼニクス: 「普通にトレーニングをしているだけだ。トレーニングがなければ、オーラは出ない。当然のことだ。」

エトス: 「もう一つだけ・・・。グランサリアの存亡がかかっているのに、なんでそんなに落ち着いているんですか?・・・僕、緊張しちゃって・・・。」

ゼニクス: 「緊張して力が発揮できるなら緊張しておけ。しかし、緊張しては力はでない。力を出すために緊張しない、それだけだ。」

ゼニクスの言葉は短いが、その一言一言が深い意味を持っている。エトスはその冷静さとオーラの凄さにただただ驚くばかり。ゼニクスはそれを何も特別なことではない、と言う態度で接している。

この一連のやりとりを見て、リリアは再び微笑んでいる。彼女もゼニクスの凄さを認めつつ、エトスの純粋さに感じる何かに心を打たれている。

ゼニクスの存在そのものが、他の人々を圧倒する強大な力を持っている。それは単なるテラスペクトの技術だけでなく、人としての内面にまで及んでいる。それがゼニクス・アストラル、テラスペクト界の王である。



テラスペクトの特設超巨大スタジアムの中央に、ゼニクス・アストラルが登場すると、一瞬、会場が静まり返る。その後、熱狂的な大歓声が起きる。この男を間近で見たいと思って、1億グランを支払ってもいいというセレブや富豪も少なくない。ゼニクスが登場するだけで、その場の空気が変わる。それほどまでに彼はテラスペクト界で神格化されている。

対するはビット・ラッシュワイヤー。一部リーグで活躍していたが、ある事件で三部リーグに落ちてしまった。しかし、その実力は侮れない。

ビット・ラッシュワイヤー: 「名高いゼニクス・アストラルか。言っておくが、俺は三部リーグだが、本来は一部リーグで活躍していた。そして、今までに負けたことがない。油断すると痛い目を見るぜ!」

ゼニクス: 「奇遇だな、俺も不敗だ。しかし、今日、お前は初めての体験をするだろう。敗北という名の体験だ。」

ビット: 「面白い、そっくりそのまま言ったことを返しておこう。負けるのは貴様だ!」

この舌戦も中継され、視聴者たちも熱狂する。

首脳特別観客席では、両首脳陣がこれを聞いて盛り上がっている。

ダダリオス: 「ビットって本来は一部リーグで負けなしなの?すごいじゃん!」

ミラネッタ: 「はい、そのようですね。そうなると、こちらにも勝機はございます。」

エレオン: 「無敵のゼニクスが負けるわけがない!」

アイ: 「そうよ、そうよ!」

ラヴィー: 「Juvilai-vareskana vuvaina-movinaisa farilova-majiva.(勝者と敗者、どちらも宇宙が創り出す運命です。)」

この瞬間、選手たちは穴を掘り、山を作るテラスペクトの技術で勝敗を決する。この一戦が、どちらの星の運命をも左右する大一番である。



第一試合開始

会場の照明が一気に暗くなり、スポットライトがビット・ラッシュワイヤーに当たる。彼の赤い目は照明で一層鮮烈になり、ほんのりと青く光る手袋をはめている。その手から瞬く間に高度なテクノロジーが繰り出される。手元のデバイスから触れるごとに、地面が微妙に振動し、穴が次第に形作られていく。この穴はただの穴ではない、それは幾何学的に完璧な形状をしており、まるで鏡のように水が反映している。

観客は息を呑む。そして、山もまた奇跡的に形成される。3Dプロジェクションとリアルタイム計算によって、山の形は動的に変化していく。この壮観な光景に観客は拍手喝采。
ゼニクスは動かない

一方で、ゼニクスは一向に動かない。観客はどよめき、不安の声がちらほらと聞こえてくる。

ビット: 「ふん、偉そうな口をききやがったが、おじけづいたか?」

首脳席

ダダリオス: 「わっはっは!ビットの勝ちだな!」

エレオン: 「どうしたんだ、ゼニクスは・・・!」

アイ: 「わからないわ、けどゼニクスを信じましょう!」

グロリファイ!

ビットは完成した作品を眺め、満足そうに「グロリファイ!」と宣言する。審判が点数をつけ始める。

この瞬間、ゼニクスは何を考えているのか。諦めたのか、それとも新たな伝説の始まりなのか。観客、審判、そして両国の首脳陣も、その答えを待ち望む。

この試合が、テクノヴァとグランサリア、そして両国を代表するテラスペクターたちの運命を大きく左右することになる。この熱い一戦が、今、ここで繰り広げられようとしている。



ゼニクスは冷静に「なるほど、大口叩くだけのことはあるな。正直、お前がここまでの実力だとは思わなかった」と言う。

ビットは自慢げに「ふっ、今更わかったか!既に勝負はあった、退場してもらうぜ!」と反論する。

「そう、勝負は既についた。しかし、退場するのはお前の方だ!」ゼニクスの言葉と共に、彼の体から眩いばかりのオーラが解放される。



観客はどよめく。そのオーラが瞬く間に広がり、壮大な穴と山が完成する。この瞬間、観客は涙を流して感動する。言葉もなく、ただただその美と深み、壮大さに打ちのめされる。

ビットも手を止めてしまう。自らが作り上げた穴と山が、ゼニクスのそれに比べ如何に未熟であるかを痛感し、立ち尽くしている。

ダダリオスは驚きと慌てで声を挙げる。「ビットは、どどど、どうしちゃったの?」

エレオンも「なんと言う穴の深淵さ、そして山の壮大さ・・・!」と感嘆の声を上げる。

アイは微笑む。「これがゼニクスが伝説と言われる所以なのね!」

そして、信じられないことに、ゼニクスの作り出した穴と山はさらにその輝きを増す。まるで宇宙そのものの美と奥深さを映し出しているかのよう。会場全体が、この奇跡のような瞬間に、感動の渦に巻き込まれた。

そして、驚くべきことが起こった。

「危険する・・・、俺の負けだ・・・。」ビットは俯きながらそう言って立ち尽くした。

「俺はテクノヴァ一部リーグでテラスペクトをし、勝ち進んできたが、何一つ感動ができなかった。だから、俺は三部リーグに落ちてやり直すことにした。」ビットはテラスペクト中に審判を殴って三部リーグに降格させられた。しかし、それは審判が機械的にやっていたことに対しての怒りであった。

「ゼニクス、俺はアンタの魂のこもった穴と山を見てわかった・・・、これがテラスペクトなんだと!」ビットの声は揺れていた。

ゼニクスは手を止め、ビットの言葉を黙って聞いていた。そして、ゼニクスは彼なりにビットの言葉を受け止めた。ビットもそれを感じた。

ビットは俯いたまま会場を去って行った。審判がゼニクスの勝利を宣言する。

観客は一斉に叫ぶ。「ディスティニー!!」

この言葉が何を意味するのか、誰もはっきりとはわからない。しかし、その声援はゼニクスの新たな伝説、そして既に彼に与えられている運命—ディスティニー—を称えるかのようだった。

ダダリオスは驚愕と失望で声を挙げる。「えええええ~!き、危険な、な、なのぉぉぉぉ~!!」

ミラネッタは冷静に答える。「大丈夫です、ここからこちらは二勝しますので・・・」

「おお、そうであった、そうであった!」ダダリオスは安堵の表情を浮かべる。

エレオンは誇らしげに言う。「どうだ、これがゼニクスのディスティニーだ!」

アイも興奮して叫ぶ。「イェーイ!ディスティニー!!」

ラヴィー:Puranova izana divikaino vivinta asolvia-majiva aivora-yuvivara, rikuvina, xivara-ravika, vivirari aisoruvia-majiva yuvira-vivirari-mira divivira.(ディスティニーは、神聖な存在の成長と光、勇気、力を象徴するものです。これは個々の存在が進化し、自己を開花させ、光り輝くための旅路を表します。)

そして、その瞬間、会場全体が一つになって、新たな伝説の誕生を祝福した。
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