幻想神統記ロータジア(ハナツオモイ編)

静風

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ハナツオモイの章

8.ヒーリングセッション

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国を失った蓮也は、その時の戦いで腕に麻痺を負った。その治療としてヒーリングを受けることにした。
蓮也はリクライニングされた椅子に座って、窓の外の月を眺めている。
やがてヒーラー・エスメラルダが入って来て、簡単な問診が行われた。そして、いよいよヒーリングセッションに入る。 



エスメラルダ
「まず、エネルギースキャンをするわ。あなたのエネルギーの状態を見ます」
蓮也
「よろしく頼む」
エスメラルダ
「それでは、目を閉じ、全身をリラックスしてください」

エスメラルダは変性意識状態(ASC)に入り、サードアイ(第三の眼)と手のひらの感覚で蓮也の身体をスキャンしていく。
麻痺があるという左手であるが、まずそこをなぞる。そこから上へと辿り、胸の中央で止まる。

エスメラルダ
(この岩のように硬い、そして氷のように冷たい閉ざされたハート。しかし、その下には雄大で深淵なエネルギーを感じる。やはり、この方は只者ではない。そして、あのお方のオーラを引き継いでおられる、ロータジア王子・・・、第一王子は亡くなったと風の噂で聞いたので、恐らく生き残った第二王子・・・。しかし、この感覚は、肉親の死や国の滅亡だけではないものも感じるわ・・・。けど、私の力でわかるのはここまでね)
「終わりました」
「私の見立てでは、腕の痺れは物質体・エーテル体としては正常なので、器質的・エネルギー的な問題ではありません」
蓮也
「ふむ、筋肉や神経、経絡系には問題がないというのだな」
エスメラルダ
「そうです」
「どちらかというと、感情的・精神的な問題とエネルギー的な問題」
「その二つの要因が絡み合っている、と言うのが私の答えです」
蓮也
「どう言うことだ?」
エスメラルダ
「あなたは何らかの要因で、とても巨大なチカラ、アストラルレベルのチカラを解放されていますが、各チャクラのバランスが悪く、腹部のチャクラもですが、現状は心臓のアナハタチャクラに問題があります」
「ですから腕だけでなく、別のカーズ・病気もお持ちですね」
蓮也
「ああ、そうだ」
エスメラルダ
「むしろ、そちらの方が重篤なのではないでしょうか」
「巨大なチカラを得るために、あなたは身体に負担をかけすぎています。特に眉間のアジュナーチャクラは天性の素質を持っていますが、そこと基底部のムーラダーラチャクラが対立しています」
「これをヒーリングでは偏差(へんさ)と言います」
蓮也
(そこは昔、爺にも言われたが、このヒーラーも同じことを言っているな)
「なるほど」
エスメラルダ
「あなたは人間のチカラの解放の順序が全く逆なのです。通常は、十二経絡・ナディが開き、小周天を行ってから極限に達した者が大周天・クンダリニー覚醒へと進みます」
蓮也
「ふむ」
エスメラルダ
「この解放のプロセスは重要です」
「しかし、あなたはそのプロセスを全く無視して覚醒しています。それは、あなたの持つアストラルのチカラやハート、ベルーフ、アーキタイプ、そして、これまでの体験がそうさせたのでしょう」

蓮也は元々、身体が弱く、それを克服するために過酷な鍛錬を重ねてきた。しかし、その代償として、最初の病を発症することとなる。本人は、この病を気に留めず、それより戦闘能力に関係する腕の治療の方を重要視している。

蓮也
「で、腕は治るのか?」

エスメラルダはため息をついて答える。

エスメラルダ
(この方は自分の命よりも戦闘能力のことを心配されておられる・・・)
「条件を整えることができれば可能です」
「ただし、私のヒーリングのチカラだけでは無理のようです」
「ですが、私ができるだけのことはしましょう」

もう一度、蓮也は目を閉じ、リラックスするよう促される。そして、ヒーリングが開始する。
ヒーラー・エスメラルダは、再び変性意識状態に入る。全身から癒しのオーラが放たれ、それが手から蓮也の経穴・マルマからエネルギーを注入し、経絡・ナディを通り、丹田・チャクラを癒していく。
特に胸の中央、膻中穴から中丹田・アナハタチャクラをヒーリングした時に、エスメラルダの手は震えた。
蓮也は、胸に人の暖かさを感じた。それは、ロータジア滅亡から今まで感じたことのない感覚だった。

エスメラルダ
(この愛と悲しみに包まれた強いチャクラとオーラ、それを閉じ込める岩のように硬く氷のように冷たいクレーシャ、このお方はどのような辛い体験をされてきたのでしょう。そして、かつてのあの方と同じくらいの雄大なオーラを感じる・・・)

ヒーリングが終わり、蓮也は目を開ける。目の前にいるエスメラルダの目からは涙が流れていた。エスメラルダの涙の理由は、一つは蓮也の体験による悲しみに触れたこと。もう一つは、蓮也を通して感じたかつてのある人物の懐かしさであった。

蓮也
「どうされた?」
エスメラルダ
「・・・その蓮の紋章、今も覚えています」
「あなたのオーラは円也王と同じものを感じます・・・」
蓮也
「・・・祖父を知っているのか?」
エスメラルダ
「遠い昔にお世話になり、そして再び、私の弟子のスピカがあなたにお世話になり。そして私があなたを今、ここでヒーリングする。これも何かの因縁、巡り合わせですかね」

エスメラルダは目を閉じて、何かを感じ取りながら再び語り出した。

エスメラルダ
「そして、あなたのハートの中に存在する美しい女性。その女性を守れなかったことへの罪悪感。そこまでは見えましたので、少し癒しておきました。しかし、そこでもっと深く絡まっている心の糸。そこは、私にはわかりませんし、あなた自身が解かねばなりません。そこは、あなたの成長のためにこの宇宙(コスモス)が設定した試練であるからなのです」
蓮也
「・・・にわかに信じ難いが、ヒーラーとは、そのようなことまでも分かるのか。いや、私から依頼したのだ。信じるというか、そのように受け取っておこう」
エスメラルダ
「蓮国の王子よ、あなたは何のために戦っているのですか?」
蓮也
「理想の世界を創るためだ」
エスメラルダ
「・・・理想の世界」
「それはとても尊い考えです。・・・円也王もきっと、あちらの世界でお喜びのはずです」
「もう一つ、因縁からの流れで付け加えてほしいのです」
「愛しき人を守り続ける・・・と」
蓮也
「愛しき人を守り続ける・・・」
エスメラルダ
「今は分からなくてもかまいません。それは、まだあなたのハートが閉じているからです。しかし、あなたは偉大なハートをお持ちです。ですから、その時まで・・・」
蓮也
「心に留めておくこととしよう」
エスメラルダ
「以上でセッションは終わりました。が、本日、私ができることは、ここまでです。腕の痺れは、恐らくハートが開くまで取れないというのが私の見立てです。しかし、ハートを開きやすくはしておきました。想いを放つよう、心がけてください。ハナツオモイ、です・・・」
蓮也
「ハナツオモイ・・・」

【楽曲・ハナツオモイ】
https://youtu.be/DoIbhlgDFx4

エスメラルダ
「明日も、もう少しできることがあるかもしれません。よろしければ、また明日、いらしてください」
蓮也
「わかった」

こうした蓮也のヒーリングセッションは終了した。
窓の外には水晶のように美しい月が出ており、月の穏やかな光も蓮也を癒すかのようであった。

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