9 / 52
ハナツオモイの章
9.グリーンハート
しおりを挟むセッションが終わり、蓮也は少しぼんやりとしていたが、やがて、ゆっくりと立ち上がった。
確かに、以前と何かが変わったような気がしたが、以前、腕の痺れは残っているし、それが何かはわからなかった。
蓮也のセッションが終わり、次はヘティスのセッションに入る。
ヘティス
「え?私も?私、どこも悪いところないわよ?ゲームやってた時は少し肩こりくらいはあるけど、今はやってないし」
エスメラルダ
「ヘティス、あなたには強いチカラが眠っていて、既にある程度まで開いているわ」
ヘティス
「だから、私、フツー。フツーだってば」
エスメラルダ
「“普通”ってのは“普く通る”と書くのよ。だからスゴいってことなの」
ヘティス
「ん~、その言葉、前にもどこかで聞いたような」
エスメラルダ
「それを見せてあげるわ」
エスメラルダは手をかざし、ヘティスの身体の中央を手でなぞる。すると、ヘティスの正中線が銀色に光り輝く。
ヘティス
「何これ?このシルバーな感覚、前も見たことあるんだけど、見えるというか感じるというか・・・」
エスメラルダ
「これが潜在性エネルギー・クンダリニーよ」
ヘティス
「くんだりにー?」
エスメラルダ
「神典『ロータスートラ』には、仙骨に眠る3回転半トグロを巻く白銀のドラゴンとして説かれているの。それがクンダリニーよ」
「あなたも先ほどの男性と同じね。プロセスが逆だわ。けど、あなたはまだチャクラが殆ど開いていないので、軽いクンダリニー体験をしたのみね。だから健康上、問題はないわ。逆に、身体に負荷がかかるため、人間にはリミッターがかけれれているの」
ヘティス
「りみったー?」
エスメラルダ
「そう、リミッター。例えば、あなたが筋肉から強いチカラを出すとあなたのチカラがあなた自身を壊してしまうし、魔法の場合は脳やメンタルに過度な負担がかかるから、脳やメンタルにダメージを負ってしまう。だから、そうならないように安全装置をつけているの。それがリミッターよ」
ヘティス
「へぇー」
エスメラルダ
「それはいいとして、チャクラは誰もが少しは開いているの。少しでもそれは十分。頭のチャクラが少し開くだけで、普通の人間にはできないような、多くの情報処理が可能となるの。負担がかからない程度にだけど、それを見せてあげるわ」
ヘティス
「ちゃくら?」
エスメラルダ
「そう、チャクラ。人体の中央に7つあるとされる、回転する光の華の形状をしたエネルギーよ。それが開くことが人間の能力・才能の開花なの。誰もが、それを持っているのだけど、全てが開くとは限らない。それを開くのが、さっき話したクンダリニー覚醒よ」
ヘティス
「ん~、色々と聞いたことない言葉が多すぎてわかんないわ」
エスメラルダ
「そうね、あなたは頭でわかるタイプではないから、直接にアチューンメント※で教えてあげるわ」
エスメラルダがヘティスの胸に手をかざすと、ヘティスは暖かく穏やかなエネルギーを感じた。
ヘティス
「エスメラルダさんに手をかざされると、胸が暖かく、穏やかで、自然な感じになるわ」
エスメラルダ
「ヘティス、それが心臓のチャクラ、アナハタチャクラの感覚よ。そして、あなた自身が持つハートの感覚よ」
ヘティス
「あなはたちゃくら・・・はーと」
エスメラルダ
「既にあなたは少し開いているから観えるはずよ」
ヘティスは自分の胸を意識して、その部分を感じてみた。
ヘティス
「緑色に感じる。そして光り輝いていて、蓮のような花弁があって、それが細かく振動しているわ。何これ?これがチャクラなの?」
エスメラルダ
「そう、それが心臓のチャクラ、アナハタチャクラよ」
「色や形や位置は様々だし、人それぞれのところもあるんだけど、基本、グリーンなの。だけど、あなた程美しいグリーンのチャクラは珍しいわ。そして、位置はちょうど中央にあり、形も綺麗。チャクラ学の教科書にあるような、ある意味普通だし、ある意味普遍的なチャクラ。このような美しいグリーンのチャクラは初めて見たわ」
ヘティス
「そうなんだ、だから私、緑が好きなのかな」
エスメラルダ
「そうかもしれないわね。そして、そのグリーンのチャクラからはグリーンのオーラが放たれるの。それがヒーリングでは基本的な穏やかさ、心の平安を作り出すエネルギーになるの」
ヘティス
「けど、エスメラルダさんの手から出てるオーラは白っぽく観えるわ」
エスメラルダ
「これが観えるのは大したものね。高度なヒーリングになると、7つのスペクトル状の光が融合し、白く光り輝くのよ」
ヘティス
「白い光・・・とても綺麗」
エスメラルダは少し沈黙して目を閉じた。
月明かりが部屋に差し込み、ヘティスを照らし出す。
エスメラルダ
「どのような事情であの王子様と一緒か知りませんが、彼のことが好きなんでしょ」
ヘティス
「え・・・?あ、あんな鬱っぽくて、気難しくて、上から目線の奴、好きでもなんでもないわ・・・!」
突然のエスメラルダの質問に、ヘティスは頬を赤らめて少し動揺した。
エスメラルダ
「ヘティス、あなたのハートをもう一度みつめてみて」
ヘティスのグリーンのチャクラがピンクに染まる。
エスメラルダ
「チャクラは正直よ。一般的に、普段のアナハタチャクラはグリーンだけど、恋をするとピンクに変わるの」
ヘティス
「え、何これ、ピンクになってる・・・」
エスメラルダ
「先ほどから観てたのだけど、あなたのそのハートから出るピンクのオーラが彼のハートに向かおうとするの。しかし、彼のハートは岩のように硬く、氷のように冷たく、閉じたままなのよ」
ヘティス
「だって、あいつ、私に興味なさそうなんだもの。てゆーか、恋愛とかに絶対興味ないタイプだわ。戦闘マニアで、女性にはぜんぜん興味ないかもしれないわ」
エスメラルダ
「わからないけど、そうとは限らないわ。けど、脈がなければオーラは向かおうとしないはず。物事に縁がある時、その原因があるはず。縁結びの法則ね。これを因縁、ニダーナと言うの。ヒーラーがクライアントにヒーリングを施すのも、これがないとできないわ」
ヘティス
「そうなんだ」
エスメラルダ
「ヘティス、彼が好きだったら、彼の役に立ちたいでしょ?」
ヘティス
「そりゃ、そうだけど、囮役とか嫌」
エスメラルダ
「だったら、ヒーラーにおなりなさい」
ヘティス
「え?私がヒーラーに?無理よ、無理。だって私、フツーだもの」
エスメラルダ
「あなたにはヒーラーになる十分な才能があるわ、だって、素晴らしいグリーンハートがあるもの。そして、人を愛する心があるし、動物や自然を愛する心がある。あなたのお連れのワンちゃん、ネコちゃんのエネルギー的な繋がりを見ればよくわかるわ。ヒーラーはその延長よ。ヒーリングとは、小さな愛、小さな光からの広がり、延長なの」
エスメラルダの話を聴いてヘティスの心に「小さな光」が灯ったような気がした。
【楽曲『小さな光』】
https://youtu.be/6yZW0qMabO0
ヘティスは、その感覚に対し、両手を胸に当て、目を閉じた。
その様子をエスメラルダは見守っていた。
穏やかな月明かりが窓から入り、ヘティスを映し出す。
しばらくしてからヘティスは目を開けた。
今度は目を爛々とさせ、エスメラルダに質問する。
ヘティス
「じゃあ、エスメラルダさんは、愛する人のためにヒーラーになったの?」
エスメラルダ
「そうね、私も若い頃があって、好きな人がいて、その人のためにヒーラーになった」
ヘティス
「え、そうなの?お話、聞きたいわ!」
更にヘティスの目は爛々とする。
エスメラルダ
「そうね、私がある戦いで傷つき、生命が半分尽きかけていてね。ほぼ諦めて倒れていたの」
「そこに、ある男性が突如現れて、リザレクションしてくれたの」
ヘティス
「りざれくしょん?」
エスメラルダ
「リザレクションとは、復活魔法よ。ヒーリングは、怪我や病気の治療が基本なの。瀕死の状態で命が尽きかけている場合、ヒーリングではなくリザレクションを使うの。リザレクションはヒーラーでも、かなりレベルが高くないとできない高級魔法よ。しかも、リザレクションは、そのヒーラーの命を削って行われるサクリファイス・自己犠牲の魔法なの」
「その男性に私は命を頂いた。そして、その人から無償の愛を感じたの。だから、その人のためにヒーラーとして生きよう、これが私のベルーフだ、そう思った。それと同時に、気付いたら、その人のことを好きになっていたわ。けど、その人の役に立てたかどうかはわからない。何せ、彼はヒーリングだけでなく攻撃魔法も使いこなすレベルの人だったし、既に英雄として崇められていて、私が近寄れるような存在ではなくて」
ヘティス
「それで、エスメラルダさんは、どうしたの?」
エスメラルダ
「思いを伝えようと常に思っていたんだけどね、ある日、突然、消えてしまった」
ヘティス
「それで、それで!今もその人のことを?」
エスメラルダ
「ええ、そうね。今もあの時と同じ想いよ」
ヘティス
「で、その後どうなったの?」
エスメラルダ
「そうね、その人のことを、その後も思い続けてしまい・・・お陰様で、ずっと、この歳まで独り身よ」
ヘティス
「そんな~!なんで神様は人生をハッピーエンドにしてくれないのぉ」
「けどさ、けどさ、今も想い続けてるんでしょ?素敵~!」
エスメラルダ
「そうね。だから、ヘティス、あなたにはそうなって欲しくないから、“想い”は放てる時に放つのよ。ハナツオモイ、これを忘れないことね」
ヘティス
「ハナツオモイ・・・」
エスメラルダ
「ハナツオモイ、よ」
ヘティス
「で、どんな名前の人?」
エスメラルダ
「出自、経歴が不明だったわ。いつも蒼のローブを身に纏っていたことから、“蒼き魔術師”と言われていた。名は“ソーマ”」※
ヘティス
「蒼き魔術師・ソーマ・・・覚えておくわ!」
エスメラルダ
「そんなの聞いてどうするの?」
ヘティス
「私が、その蒼き魔術師を探してあげるわ!私ね、運とてもいいのよ。だって、蓮也と会いたいと思ったら、ピンポイントですぐに出会ったわ。だから蒼き魔術師もすぐに出会いそう」
エスメラルダ
「あなたには、そうした不思議なチカラがあるのかもね。ただ、あれから誰も蒼き魔術師を見ていないし、年齢も高齢になっていると思うから。けど、どこかで生きててほしいわ」
ヘティス
「彼を想い続けて、何十年越しの愛、素敵~!」
エスメラルダ
「それはいいとして、彼の治療にはあなたの想いも必要かもしれない、そう感じたの。まあ、ヘティス、あなたがヒーラーになる、ならないはあなたの自由。けど、彼を癒し、ヒーラーになりたいと思うんだったら、また、明日いらっしゃい」
ヘティス
「わかったわ、今日、一晩考えてみる」
※アチューンメントとは、調和・適合・同調という意味。ヒーラーがクライエントと繋がり回路を開くことを意味する。
※蒼き魔術師は、魔王サトゥルヌスを封印した伝説の五行英雄の一人。殆どの属性の魔術を習得した天才的な大魔術師。魔王サトゥルヌスを封印したのか蒼き魔術師の力である。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


