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ハナツオモイの章

11.未来を開くミッション

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冒険者のレストランバーでのヘティスと蓮也の会話は続く。



蓮也
「ところで、ヘティス、お前のオーラをみても魔術師系のオーラではないのに、なぜ色々なことがわかるのだ?そちらのゴーレムもアルケミストのようなことができる。しかし、ゴーレムは魔法を動力として動くはずだが、そのオーラは感じずに無機質だ」
ヘティス
「これは魔法なんかじゃないわ」



蓮也
「だったら何だ?」
ヘティス
「ん~、私たちの未来の世界では科学って言うの」
蓮也
「カガクだと?」
ヘティス
「そうよ、科学」
「科学ってのは、どう説明したらいいの~?」
「例えば、ある物事に仮説を立てて、それを実験するの。そして、それが誰がやっても再現される。もちろん、魔法が使えない人がやっても再現される。それを私たちは再現性がある、って言うの。つまり、それを科学的であるって言うの」
蓮也
「なるほど、魔法とは違うやり方で自然界からエネルギーを取り出せる方法があるのだな」
ヘティス
「言葉で説明してもわかりにくいから、これをつけてみて」
「このメガネはスマートグラスと言って、グレイテック社製の優れものなの」
「試しにこのメガネをつけてみて」

ヘティスは蓮也にスマートグラスを渡し、蓮也はそのメガネをかけてみる。

ヘティス
「そして、私を見てみて」
「すると、色々なガイドラインが出て来るでしょ?」
蓮也
「なるほど、しかし我々と言語が違うから私には解読不可能だな」
「そして、空間上にパネルがいくつかでているが」
ヘティス
「じゃあ、一番左のを押してみて」

蓮也は空間のある一点を押す。すると画面が切り替わり、様々な情報が出てくる。

ヘティス
「これが私のプロフィール、個人情報よ」
「ちなみに、バストと体重はプライバシー設定して見れないようにしてあるわ」
蓮也
「何となく理解できた。そして、お前たちが未来から来たというのも、この科学の力を使って来たというのだな」
ヘティス
「そうよ、最初に言ったように、サトゥルヌスは私たちの未来でも破壊的な行動をして、人類を破滅させようとしているの」
「で、歴史上のどこかでこのサトゥルヌスを倒せる可能性のある時代を私のパパが解析したの。そこで出された答えが、この時代のあなたなの」
蓮也
「未来がそうであるなら、それも運命なのではないか、という考えにはならないか?」
ヘティス
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。一応、私たちの世界の科学では多世界解釈ってのがあって、未来は分岐するの。だから私があなたに協力することで、何らかの不確定要素が働き、未来を分岐させることができる可能性があるわ」
蓮也
「私はお前たちの未来ではサトゥルヌスを倒せなかったとなっている。しかし、ヘティスが来たことで、何らかの不確定要素が生まれるというわけなのだな」
ヘティス
「そうよ」
蓮也
「未来を分岐か」
「確かに、未来が決まっているとしたら、完全な運命論でこの宇宙が働いているのなら、我々の魂に備わる自由意志というものを否定してしまうことになるだろう」
「それは生きる意志を否定してしまうことにもなる」
ヘティス
「そういうことね」
「一応、一つの未来は決まっていて、ここには未来の人たちが古い書物を調べて記したあなたたちのことが書いてあるの」
「例えば、あなたの場合・・・」

ヘティスは蓮也からスマートグラスを返してもらい、今度はヘティスがそれをつける。
ヘティスは空間の一点を押し、蓮也のプロフィールを確認する。

ヘティスはサラッと蓮也のプロフィールにはじめて目を通した。
そこには、蓮也の祖国が滅ぼされ、親兄弟が殺されたことが記載されてあった。
ヘティスは時折感じる蓮也の哀愁や悲しみを理解した。

蓮也
(涙・・・)
ヘティス
「あ、やだ・・・」
蓮也
「まあ、色々とあったが、お前が泣くことはない。これは私のことであり、お前のことではない。それに過ぎたことだ。それを考えても意味はない。他人に関しての意味のないことを考えても意味はない」
ヘティス
「そりゃ、他人だけど、目の前の人に辛いことがあったなら、人間はその悲しみを共有するものよ」
蓮也
「そういうものか、人間とは面倒なものだな」
ヘティス
「面倒かもしれないけど、たまにはそうしたオモイは放った方がいいわ」
「・・・ハナツオモイよ」
蓮也
「・・・ハナツオモイか」

ヘティスは涙を拭う。
スマートグラスの画面の空間の下の方にはグリーンのラインでキーボードが浮かび上がっている。
そこに「蓮也二世 サトゥルヌス」と打ち込むと「第三次ラグナロク」の項目が出て来る。それをヘティスはタッチする。

ヘティス
「アナタがサトゥルヌスと戦うのは、私たちの歴史では“第三次ラグナロク”と記載されているわ。そこでは、さっき言ってた“蒼き魔術師”は登場しない。もし、蒼き魔術師を探し出し、一緒に彼も戦えば、サトゥルヌスに勝てる可能性って高くなるんじゃないの?」
蓮也
「そうかもしれないな」
ヘティス
「と、いうことで“未来を開くミッション” 始動するわよ!」
蓮也
「“未来を開くミッション”か」

こうして、蓮也・ヘティス一行は食後のティータイムを終え、レストランバーを後にした。







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