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ハナツオモイの章
15.ヒーリング入門
しおりを挟む蓮也は深い瞑想状態に入っている。その場合、生物が冬眠に入ったかのようのように、数日間或いは数ヶ月間も瞑想状態のことがある。
一方、ヘティスは治療院にヒーリングを学びにやってきた。
ヘティス
「私、ヒーリングを学ぶことにします」
「私に癒す力がもしあるなら、誰かの役に立ちたいから」
エスメラルダ
「わかりました、しかし、あなたは既に私の中では入門しているのです」
ヘティス
「えっ?」
エスメラルダ
「その頭のカンザシと手の指輪」
ヘティス
「これ?」
エスメラルダ
「そう、それよ。それは私が宝石商の店主さんに預けたもの。それを身につけるものが、縁あるものとなります」
ヘティス
「このカンザシと指輪はエスメラルダさんのものだったの?」
エスメラルダ
「そうよ、師からの頂き物ですが。その二つにはヒーリング系の神聖力が込められています。それは貴方に縁あるものとなりましたので、もちろん貴方のものです」
ヘティス
(だからあの時、旅人さんに手当したら効いちゃったのね)
エスメラルダ
「人々のヒーリングもやっていかないといけないから、講義は殆ど実地になります。朝の1時間と終業後の1時間が座学となります。もちろん、やっていくと肉体的にも精神的にもかなり負担のかかることがあるので早退はいいけど、朝は必ず来るのよ。いい?」
ヘティス
「わかりました、先生」
講義は礼拝堂で行われる。
礼拝堂で洗礼が行われ、ヒーラーとしての新しいヘティスが誕生するのである。これを心理学ではイニシエーション(通過儀礼)と言い、シンボリックで擬似的な死と再生が行われるのである。
ヘティス
「なんか不思議な気分。生まれ変わったというか。神聖な感じというか」
エスメラルダ
「そう、ヒーリングは相手を倒す魔力とはそこが違うところ。だから私たちは魔力に対して“神聖力”って言っているの。ヒーリングも魔法のように思われているけど、そこが違うところ」
次に祈りの講義がはじまる。
エスメラルダ
「アーサナ、座り方ですが、このように跪座で座ります」
「ムドラー(印)はアンジャリムドラー、つまり合掌です」
「両乳頭の中心点が膻中穴、その奥がアナハタチャクラです。そこと掌の中心・労宮穴を一致させます」
「そして、目は軽く閉じて」
「これが祈りの基本姿勢よ。やってみて」
ヘティス
「はい」
ヘティスはエスメラルダと同じ姿勢をとった。
エスメラルダ
「次に、入静、変性意識状態になります」
ヘティス
「にゅーせー?へんせーいしき?」
エスメラルダ
「そうね、意識を下げてフワーっと心地よい状態になってみて」
ヘティス
(・・・こうかな)
エスメラルダ
「そんな感じよ」
そして、エスメラルダがヘティスの姿勢をチェックする。
エスメラルダ
「手の中心と胸の中心が合っていないわね。人間のエネルギーは中心から発せられるの。その中心がずれてしまっては、本当のエネルギーは出ないわ」
エスメラルダはヘティスの手をとり、手の中心を胸の中心に合わせた。
ヘティス
「これは・・・」
エスメラルダ
「これがアナハタチャクラのエネルギーよ」
ヘティス
「とても綺麗なグリーン・・・」
エスメラルダ
「あなたは元々、素晴らしいグリーンハートを持っているわ。その使い方がわかっていないだけ。そして、そのグリーンハートはもっと深いエネルギーになるわ、きっと」
そして、祈りがはじまる。
エスメラルダ
「木花咲耶姫様のお祈りの言葉です」
【楽曲・小さな光 -Mentalightness-】
https://youtu.be/6yZW0qMabO0
小さな光を 心に灯しましょう
やさしさの光を 心に灯して
悲しい日も 辛い日も 心を照らして
寂しい日も 苦しい日も あなたを包み込む
あなたに幸せを
誰かに幸せを
全てに幸せを
かすかな光で 心が煌めいている
慈しみの光で あなたが輝く
悪人も 罪人も 光の恩寵を
生きとし生ける全てに 光の恩寵を
あなたが幸せに
誰かが幸せに
全てが幸せに
ヘティス
「今度は中心からエネルギーが溢れ出して、外へ・・・」
エスメラルダ
「正しい心の状態になる、これが神聖力よ」
「全てのエネルギーセンターが開放され、それが外へと発せられる」
「ここからは魂がエネルギーを導くのですが、ゆっくりとやっていきましょう」
ヘティス
「はい」
朝の講義が終わり、しばらくすると予約した患者がやってくる。
魔物にやられて怪我をした者、医者に不治の病を宣告されたもの、不幸な体験をして心を病む者、様々であった。それらをエスメラルダは高度な技術でヒーリングしていき、その臨床の様子をヘティスは見学する。
ヘティス
(スゴい、みんな治っちゃう・・・)
エスメラルダ
「今度は慢性の動悸・息切れの方よ」
患者がベッドで苦しそうに息をしている。
エスメラルダ
「問診が終わったら、スキャニング」
エスメラルダの手が患者の身体を非接触でなぞる。
エスメラルダ
「胸と首に違和感を感じるわ」
「ここからサードアイ(第三の眼)で透視。相手のオーラを視るの」
「胸に赤や紫の緊張が見えるわ。多分、不安や怒りね。そして、首はくすんだ黒やグレー」
ヘティス
(“さーどあい”っておでこのあたりの眼で感じるのかな)
(・・・ちょっと見えて来た感じがする)
エスメラルダ
「エネルギーバランスは乱れると陰陽の関係になっているの。この場合、首のモヤモヤが陰、胸の過剰なエネルギーが陽ね」
ヘティス
(なるほど、このバランスを整えるのね)
エスメラルダ
「エネルギー不足の場合は“補(ほ)”と言ってエネルギーを補う、エネルギー過剰の場合は“瀉(しゃ)”と言って余分なエネルギーを抜いたり、他に流したりするの」
「見てて」
ヘティス
(エネルギーが流れ出した・・・)
エスメラルダ
「そして、心臓にグリーンのエネルギー、首のスターポイントにターコイズブルーのエネルギーを入れる」
「これでヒーリング終了よ」
ヘティス
(さっきまで患者さん、苦しそうに息してたのに、穏やかになっている・・・)
患者は穏やかな表情となり、眠りだした。
エスメラルダ
「後は、少し休んでもらってから、カウンセリングして終了。この方の場合、恐らく不安や怒りが心臓に関係するのと、それを吐き出せないことが喉にきていると思うわ。そのあたりを考慮して、話を聞くの」
ヘティス
「メンタルも関係するのね」
エスメラルダ
「そうよ。感情と関係するアストラル体の奥にはメンタル体があるの。そこに問題がある場合は、そこの調整をしないと、また感情面に問題が出て、それがエーテル体の気質となって、肉体に症状として現れるの」
ヘティス
(こんなこと、私、できるかな・・・)
エスメラルダ
「最初はとても難しそうに思うけど、やっていくと、自分自身のガイドが教えてくれるわ。そうると、自動的にヒーリングしていく感じになるの。ガイドは始祖神・木花咲耶姫様だったり、私の師だったり、時には精霊だったり。その霊を呼ぶために、最初、お祈りをして、自分のオーラを調整するのよ」
ヘティス
(これ、自動的にやってるんだ・・・)
このような実地形式でヒーリングの授業は進んでいき、やがて業務は終了した。
ヘティス
「あ~、疲れた~!」
エスメラルダ
「お疲れ様」
ヘティス
「もうね、途中、すっごく眠くなって、意識がなくなりそうだったわ」
エスメラルダ
「途中、何回か、カックン、カックンしてたものね」
ヘティス
「もう、恥ずかしいわ」
エスメラルダ
「はじめてにしては、なかなか理解できていたと思うわ。アナタの視線や表情でなんとなくわかる。けど、わからないこともあったら質問してね。質問がなければ帰っていいわ」
ヘティス
「ん~、そうね~」
外を見ると、日が暮れていた。
窓からは少し月明かりが入ってくる。
ヘティス
「・・・お祈りの言葉ですが、悪いことをする人にも祈るのって違和感あります」
エスメラルダ
「その気持ちはわかるわ。このことについては、また明日講義よ。ヒーリングの基本原理と関係するから」
ヘティス
「はい」
エスメラルダ
「あと、蓮也さんは瞑想状態に入っていて、数日はあのままかもしれないから」
ヘティス
「えっ、ずっと瞑想してるの?」
エスメラルダ
「冬眠状態みたいなものね。けど、やがて心の氷が解けて、心の春がやってくるわ」
ヘティス
「とーみん・・・!」
エスメラルダ
「寂しいかもしれないけど、今日は一人で我慢して」
ヘティス
「さ、、、寂しいわけないです!もう、ずっと冬眠していればいいんだわ!」
エスメラルダ
「うふふ」
ヘティスは宿舎へと帰っていった。
【解説】
首のスターポイントとは胸鎖乳突筋の下辺りにある星状神経である。ここが動悸・息切れなどに関係することがある。物語ではターコイズブルーのエネルギーで調整した。
また、心臓はアドレナリンやノルアドレナリンで収縮力を増大させる。この色を赤や紫で象徴した。アセチルコリンで抑制されるため、これを緑のエネルギーとした。
生理学をベースに書いているが、ヒーリングやエネルギーという部分はフィクションとして読んでほしい。
本作品では、エネルギーの層を、神智学の用語を借りて
①肉体 ②エーテル体 ③アストラル体 ④メンタル体 ⑤コーザル体
として設定している。①は波動が低く、⑤は波動が高い。
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