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発露の章

縁結びとヒーリング

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ヘティスは究極魔法を求めて過去へタイムスリップし、自分の師匠であるアンドレア・エスメラルダに会う。そして、エスメラルダと一緒に五行英雄の一人・オオタネコに師事した。しかし、来る日も来る日も遊んでばかりであった。そのため、さすがのヘティスも不安になってきた。そんな、ある日。 



オオタネコ
「そろそろ、らぽーるができたにゃ」
ヘティス
「らぽーる?」
オオタネコ
「まあ、ネコとお前たちとの回路みたいなもんにゃ」
「仲良くなることでらぽーるにゃ」



ヘティスは、一見、オオタネコはふざけたキャラに見えるが、やはり何か彼女なりの理論があるのかも、とヘティスは思った。
遊ぶなど、オオタネコと空間を共にすることで、ヘティスたちのチャクラが感応し、引き上げられるのである。ヘティスはエスメラルダのチャクラが強化されているのを見て、自分もなぜかエネルギーレベルが高まっているかもしれないと思った。

遊びをやめたオオタネコは突然、変性意識に入り、神聖語を話し出す。まるで、何かと会話しているかのようだ。

オオタネコ
「出血だいさーびすで、今日はお前たちのニダーナヒーリングをしてやるにゃ!」
ヘティス
「にだーなヒーリング?」
オオタネコ
「因縁レベルのヒーリングにゃ!」

オオタネコは符を常に貼り付け、光を発すると、空間にその人の記憶が映し出される。

ヘティス
「なにしてるんですか、ネコ師匠?」
オオタネコ
「この光の中にアンドレアにゃんの記憶を映し出してるにゃ」
ヘティス
「ふーん、私には全然見えないけど」
オオタネコ
「この現象界ではネコだけにしかみえんにゃ」
ヘティス
「ふーん、よくわかんないわ」

すると、オオタネコはエスメラルダの家族構成などを言い当て、その問題点を指摘したり、アドバイスしたりする。これは一部の患者にもやっているため、その効果は確認済みである。その後、縁が動き出し、根底的な回復を見せるのである。

ヘティス
「ネコ師匠、蒼き魔術師ソーマさんとエスメラルダ・アンドレアさんの因縁はどうなってますか?」
エスメラルダ



「ちょっと、やめてよ、メーティス先生w」
ヘティス
「まあまあ、アンちゃん、恥ずかしがらずにw」
オオタネコ
「にゃにゃーん!」

オオタネコの目が大きくなり、目からエネルギーが光線のように迸る。

オオタネコ
「ネコの千里眼で見たにゃんけど、蒼き魔術師ソーマにゃん・・・スゴいエネルギーレベルだにゃん!」

ちなみに、この時、まだオオタネコと蒼き魔術師は出会っていない。

オオタネコ
「アンドレアにゃんとソーマにゃんは特に縁はにゃいにゃ」
ヘティス
「ご縁があるようにしてください!」
(未来は大丈夫かな・・・けど、ここは何とかしてあげたいし)
オオタネコ
「アンドレアにゃんの気持ちはどうにゃん?」
エスメラルダ 
「・・・ネコ様、お願いします!」
オオタネコ
「どこまでやれるかわからにゃいが、縁結びの法をやってみるにゃ!」
ヘティス
「ネコ師匠、ありがとー!」

オオタネコは二つの符を用いて何やら神聖語を唱え出した。恐らく、一つの符はエスメラルダ、もう一つは蒼き魔術師のものなのであろう。

オオタネコ
「アンドレアにゃんは箱入り娘で育ったにゃん。お父さんがそうしたみたいで、少し引っ込み思案になってるにゃ。その克服ができれば縁は少し改善するにゃん」

エスメラルダはそれを聞いて、その通りだと思った。そして、オオタネコはやはり大陸随一のヒーラーなのだと思った。
そして、更に神聖語を唱え、杖から光を出し、二つの符に向ける。

オオタネコ
「とりま、少しだけ繋いでおいたにゃ。後は自分たちでどうにかするにゃ。これは蒼き魔術師にも何か別の大きな因縁があるから、そこはネコにはなんともできんにゃ」
ヘティス
(よし、やったわ!あとは当人同士の縁の力ね・・・!)

疲れたので寝ると言ってオオタネコは、その場で居眠りをし出した。数分経つと、何事もなかったかのように、すくっと立ち上がり、ヘティスの方へ目を向けた。

オオタネコ
「にゃ、にゃーん!」
「次はヘティスにゃーん」
ヘティス
「はい、お願いします!」
オオタネコ
「ヘティスにゃんの記憶を映し出すにゃーん」
「お母さんの記憶がないにゃん」
「不思議にゃん」
ヘティス
「ママは私が生まれてすぐに死んじゃったの」
オオタネコ
「そうじゃにゃいにゃん。もし、すぐに死んでしまったとしても、胎児の頃や、生まれたばかりの記憶はあるはずにゃ。それがにゃいにゃ。こんなのはじめてにゃ」
ヘティス
(私、試験管ベイビーだったのかな?あまりそういうことパパから聞かなかったし。まあ、いいわ。帰ったら聞こっと)

オオタネコは不思議なことを言い出した。これが後々のヘティスに隠された出生の秘密の関係するのだが、この時は、まだその意味がヘティスにはわからなかった。

オオタネコ
「わからにゃいんだけど、ヘティスにゃんは、子供の頃に記憶喪失になっているか、記憶が消されているか、にゃーん、わからんにゃ」
ヘティス
「ふーん、よくわからないわ」
オオタネコ
「この空白に何かあるにゃん。まあ、ヘティスにゃんが病気でなければ問題にゃいにゃ」
「とりあえず、お札で祝由ヒーリングしとくにゃん」
「不思議な因縁にゃん。お母さんに会える因縁にゃん。こんなもはじめてにゃん。あの世で会うんじゃなく、この世で会うにゃ。けど、お母さんは生きてないにゃ。これは矛盾にゃ・・・」
ヘティス
(つまり、私がタイムマシンでママに会いに行くという因縁が生まれたってことね。そこに何か私の出生の秘密があるのかしら・・・?ママに会えば何かわかるのかしら?)
ヘティスの母親は理夢華と言う。

オオタネコ
「ねこの因縁法は完璧のはずにゃん・・・。けど、矛盾にゃ・・・。こんなのはじめてにゃ」
「自信にゃくにゃってきたにゃん・・・もう店じまいするかにゃ・・・」
ヘティス
「いえ、ちゃんと言ってることは当たってますから大丈夫です・・・^^;」
(これは下手に説明できないわ。未来が変わるかもしれないし、ネコ師匠には悪いけど、謎のままにしておくべきねw)

ヘティスはこの時、何となく帰らなければいけないと感じた。というのは、あまり長くいると、未来に折り込んでない過去をつくり、時空に歪みができる。その場合、少しの歪みで未来が変わるだけでも、元のセーブした位置に帰れない可能性もあるからだ。このオオタネコの戸惑った様子や「矛盾」という言葉に、そうしたサインを感じたのである。ヘティスの個人的な希望としては、蒼き魔術師をこの場で探し出し、エスメラルダが幸せになってほしいと思っていたが、これは大きな歪みを起こす可能性があると考え、断腸の思いで断念した。けど、縁結びができたので、その小さな希望に賭けようとも思った。
そして、ヘティスは、当初の目的であった、オオタネコによる究極魔法の伝授、ここに焦点を絞ることにするのであった。

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