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発露の章
ヘパイトスの苦悩
しおりを挟むヘティスは究極魔法を求め、オオタネコの生きている時代にタイムスリップし、そこで若き日のエスメラルダに出会う。そして、そこには美しい女性ゴーレム・エウリュノメーもいた。この時、ヘティスは未来が変化するといけないのでメーティスと名乗っていた。
ヘティス
「ゴーレムのエウちゃんはネコ師匠がつくったんですか?」
オオタネコ
「そうにゃ。ゴーレムは魔法レベルが高くないとできんにゃ」
ヘティス
(ネコ師匠はこの後、サトゥルヌス戦で死んじゃうから、このエウちゃんをエスメラルダ先生がもらい受けて来たのね)
「で、エウちゃんをいつ作ったんですか?」
オオタネコ
「去年の年末に古いゴーレムが壊れたから、今年の正月につくったにゃ」
ヘティス
「てことは、まだエウちゃんは0歳なのかぁ」
オオタネコ
「それにしても、メーティスにゃんもゴーレムをつくるんかにゃ。あのゴーレムはよくできてるにゃ~」
ヘティス
(あ・・・、ヘパのことね。ロボットだとかいうと面倒だし)
「まあ、そんなところですw」
オオタネコ
「さすが、我が師・オオモノノヌシが認めただけあるにゃ」
ヘティス
(オオモノノヌシって人もきっとすごいのね。この世界はヘンテコですごい人がいっぱいねw)
そんなある日、仕事が終わって待ち構えるかのように、汎用性AIロボットのヘパイトスがヘティスに質問をした。エウリュノメーのことだった。未来の世界では、ヘパイトスとエウリュノメーは恋人同士であったが、魔法の効力が尽きてしまい、エウリュノメーは土に帰った。しかし、過去に来て、再びエウリュノメーと再開したヘパイトスであったが、残念ながらエウリュノメーに相手にされてないらしい。
ヘパイトス
「なぜエウリュノメーに嫌われてしまったのだ・・・」
「あんなに愛し合っていたのに・・・」
「手を繋いだり、一緒に歩いて小川を見たりしたのに・・・」
ヘティス
「嫌われてはいないと思うんだけど」
(これは説明をどうすればいいのかな・・・)
ヘパイトス
「じゃあ、なぜ相手にされないのだ?」
ヘティス
「ちょっとややこしいことを言うかもしれないけど、よく聞くのよ、ヘパ」
ヘパイトス
「はい」
ヘティス
「みんなエウちゃんのことをゴーレムとしてしか見てなかった。普通の女性として見てなかった。けど、ヘパ、アナタは彼女を普通の女性として見ていた。だから彼女はアナタのことを好きになったの。そんなことをエスメラルダ先生も言ってたでしょ?」
ヘパイトス
「言ってた」
ヘティス
「ネコ師匠に聞いたんだけど、エウちゃんは今年生まれたばっかなの。0歳よ。だから、まだ、話したりして接する人が少ない、つまり比較対象が少ないでしょ?」
ヘパイトス
「はい」
ヘティス
「だから、アナタが彼女を大切な人として認め、やさしく接しても、比較対象のデータが少ないから、そのアナタの貴重さがわからないのよ」
ヘパイトス
「納得」
「愛って・・・相対的なものなんだな」
「誰かと比べて、その貴重さがわかるんだな」
ヘティス
「そうね、認知としてはそうなるのかもね。絶対的・普遍的な永遠の愛がある、って思いたいけど」
(普遍的な愛とは、エスメラルダ先生の言うプラクリティかしら。この世界は一つのところから流出したから、この世界まるごと愛す・・・そんなことできるのかしら)
今度はヘティスがヘパイトスに質問した。
ヘティス
「じゃあ、なんでヘパはエウちゃんのことが好きなの?」
ヘパイトス
「それは・・・」
ヘパイトスは考え込むが、答えがみつかったようなの話し出す。
ヘパイトス
「人間は私のことをロボットとして見る。ロボットも私のことをロボットとして見る。しかし、彼女は違った。私を偏見のない目で男性として見てくれた。それが私も嬉しかった」
ヘティス
「なるほどね、まず差別・偏見のないもの同士が、相手の存在を認め合う、これが愛することの根本にあるのね。そして、相手の中に男性性や女性性をどう見出すかにあるのね」
(私はこっちの世界でいきなり恐竜に襲われて蓮也に助けてもらったけど、やっぱり助けてくれる強い男性としてってのが彼の第一印象で・・・)
この時、ヘティスは、以前、ネットゲームでヘティスを助けてくれたフォン・リイエンという天才プレイヤーのことをなぜか思い出していた。そして、それは、今後、また別の話に展開するのである。
人間は自分の持っていないものに惹かれるのかもしない。それは、人類が支え合って生きて来たという歴史もあるだろう。そして、自分の持っていないものを相手に見出すことで、何かが満たされ、より人生が豊かになるのではないだろうか。
ヘティス
「これもややこしいけど、よく聞いて」
ヘパイトス
「はい」
ヘティス
「今、アナタがエウちゃんと恋愛関係になったら、未来が変わっちゃうかもしれないの。そうしたら、未来のエウちゃんは違うものになってしまうかも」
ヘパイトス
「そうなのか?」
ヘティス
「正直、わかんないわ。うまくいくかもしれないし、そうじゃないかもしれないし」
「けど、これだけは言えるわ。未来でヘパがエウちゃんと作った思い出は、とても大切なものだってこと。その二人の思い出が、ヘパだけの思い出になってしまうってこと」
ヘパイトス
「私だけの思い出・・・」
「手を握ったり、一緒に歩いたり、小川を見たりしたのも、全部、私だけしか知らない思い出になる・・・」
ヘティス
「ヘパは、そのエウちゃんが好きなんでしょ?」
「ヘパを偏見なく男性として見てくれるエウちゃんが好きなんでしょ?」
ヘパイトス
「はい」
ヘティス
「だから今は二人の思い出を大事にして、この世界のエウちゃんをそっと見守るのが、愛なのかなって思う」
ヘパイトス
「愛するって苦しいんだな・・・」
「愛したから苦しいんだな・・・」
もし永遠の愛があるとするならば、それは思い出の中で愛した人をずっと思い続けることなのかもしれない、とヘティスは思った。そして、いつかヘティスは元の世界へと戻る。そうなると蓮也とは会えなくなる。しかし、その二人の思い出は永遠に残る。そういう日が自分にも来るのだな、とヘティス思った。
【解説】
ゴーレムとロボットの恋愛を書いているため、ここで述べている性別は、当然ながら動物学的な性別ではない。そのため、男性性・女性性と表記することにした。生物学的な性を超えるところで恋愛の一端を描いてみたいと思った。
また、現在の世界である人を愛した場合、過去にタイムスリップしても、それは同一の人であり、同一の愛が生まれるかはわからない。我々の「好き」という感覚はコロコロと変わるからだ。心とはコロコロと変わるから心であり、自分もコロコロと変わる。もし、変わらないものであるとするならば、それは愛したという経験、思い出であり、その思い出を持続させようとする強い想いであろう。
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