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神器の章
ハートの共鳴
しおりを挟むヒーリングでエネルギーを使い果たし、クーデターを目の当たりにしたヘティスは、疲れて自室で休むこととした。既に昼食の時間になっていたが、食欲がないので、昼食は食べないこととした。
ヘティスは改めて人間の認知とは不思議なものだと思った。
蓮也(れんや)の前世の姿の桃也(とうや)から求婚されれば嬉しいはずなのに、自分は桃也を思うローズを応援している。それは一見すると、恋敵を応援しているようにも思えた。
そんなことをベッドで寝転がりながら考えていた。
ヘティス
(蓮也と桃也は何がどう違うの?)
人は何を対象として想いを寄せるのであろうか。
結局、人は輪廻という概念によって同一だという論理に想いを寄せるのではなく、自分がその時に心の中で想った人に想いを寄せるのではないか、とヘティスは思った。
それは以前、ヘティスがオオタネコの時代に行った時に、ヘパイトスと過去のエウリュノメーの関係で感じた、思い出の中の対象を想い続けることにも似ていると思った。
ヘティス
(なんか人間って複雑よねぇ)
(なんでこんな感情があるのかしら)
(私が欲しようとしてないのに、こんな感情が湧いてくるなんて)
そうしたことを考えているといつの間にか眠りの世界へと誘われていた。
トントン
どれくらい時間が経過したのであろうか、ヘティスはノックの音で起きた。窓を見ると、外はもう暗い。すると、ドアが開く。
ヘティス
(えっ!?鍵をかけたはずなのに・・・!)
目の前にいるのは桃也である。
ヘティスは慌てて毛布を除けてベッドから出て立ち上がる。
ヘティス
「ちょっと、レディの部屋に勝手に入ってこないでよ!」
桃也
「言っていなかったが、皇帝は全ての部屋のマスターキーを持っている。そして、ここの所有は全て余のものであり、其方のものではない。であるから、余のものを余が使っているだけである」
ヘティス
(なんか言い方が論理的過ぎて蓮也ソックリね・・・。てゆーか、この人、蓮也の前世だし・・・)
「いくら王宮がアナタの所有物だって言ったって、他人のプライバシーを侵害しちゃダメでしょ!」
桃也
「そのような概念は余の辞書の中には書かれていない」
「とりあえず、ここのルールは余であり、余がルールである」
ヘティス
「アナタね~、その傲慢な考え、やめた方がいいわよ~。ゼッタイ、嫌われるわよ~」
桃也
「皇帝に向かって好き勝手言うとは、ますます気に入った。今から、其方を余の物とする」
ヘティス
「何言ってんの!私は物じゃないわよ!物扱いしないで!アナタの所有物じゃないし!」
ヘティスの言うことには全く反応せず、桃也はヘティスに近づきながら、上着を脱ぎ捨てた。
ヘティス
「ちょっと、来ないで!」
「てか、何で脱いでるの!服着なさいよ!」
桃也
「其方のヒーリングを受けて余の心は決まった。この枯れ果てた心の泉に、再び潤いを与えてくれたのはヘティスよ、其方だけだ」
ヘティス
(ちょっと、そんなつもりでヒーリングしたんじゃないのに~!何でそうなっちゃうの~!)
その時、ローズが桃也を守ろうとした光景がヘティスの脳裏に再び浮かび上がった。
ヘティス
「アナタが愛すべき人は私じゃない!」
「・・・ローズよ!」
これを聞いて桃也は一瞬静止する。
桃也
「ローズ?誰だ、それは?」
ヘティス
「さっき、アナタを必死に守ろうとしてたコよ!」
桃也
「ああ、あのメイドか。たかがメイドだ。余とあの者とでは身分が違う」
ヘティス
「何を言っているの?アナタだって元は低い身分だったんでしょ?そして、その時にアナタが守りたいって思っていた人がいたんでしょ?そういう体験をしてきて、何で彼女の気持ちがわからないの?」
それを言った瞬間、桃也の表情が変化した。今まで常に高圧的で自信満々の表情をしていた桃也であったが、この時は、そこに何か弱さのような者が見えた。
桃也
「もう余は、過去のことは思い出したくないのだ」
「そして、もう何も失いたくはない」
「其方の望みの聖盾を渡すのは約束する」
「だから、ずっと余の側にずっと居てくれ」
蓮也は常に憂いの表情をしていたが、やはり、この桃也もそうした部分があるのだとヘティスは思った。しかし、それでも蓮也はここまでの弱さは見せないだろう、とも思った。その理由は、ヘティスが立てた仮説、戦いで疲弊した極度のエネルギー不足と妻の死別が重なっていると改めてヘティスは思うのであった。
しかし、そのようなことをヘティスが考えていても桃也の行動は止まらない。
桃也はヘティスをやさしく抱きしめ、そのままベットへと押し倒された。
ヘティス
(ちょ、ちょっと・・・!)
(やだ・・・、声が出ない・・・)
ヘティスは、あの時のことを思い出し、どうしていいのかわからなくなっていた。
桃也とこのまま一緒いれば聖盾は手に入り、その聖盾だけを蓮也の時代に送ることになるのだろう、しかし、そうなれば蓮也とも会えなくなるし、元の世界にも戻れなくなる。ただし、そうなれば蓮也も世界も救われる可能性は高くなる。
ヘティスは心身共に疲れ果てているため、もう叫ぶことも抵抗することもできなくなっていた。
ヘティス
(蓮也・・・)
ヘティスの瞳から一筋の涙が流れた。
そして胸のグリーンハートが輝き出し、聖なるフィビュラもプラチナのように美しいオーラを放ち出し共鳴するかのようであった。
桃也
(涙・・・)
(そして私のエネルギーが反応している・・・)
桃也は一瞬、茫然(ぼうぜん)としたが、すぐに意識を取り戻し、ヘティスに言った。
桃也
「其方には守るべき人がいるのか?」
それを聞いてヘティスの心の中には、その人が浮かび上がっていた。そして、その人のことを想いながら言った。
ヘティス
「いるわ」
桃也
「その人のことを愛しているのか?」
ヘティス
「・・・そうよ」
桃也
「其方に、そのように思われる人は幸せであるな」
ヘティス
「えっ・・・」
と言うと、桃也はヘティスを手からそっと離し、ゆっくりとベッドから起き上がり、部屋を出て行った。
既に夜であったため、ヘティスはもう一眠りしようと思った。
少し高揚していたので眠れないかも、とも思ったが、どうやら疲れの方が優先されたため、再び、眠りの世界へと誘(いざな)われて行くのであった。
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