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ハナツオモイの章
25.不死身のバンパイア
しおりを挟むヘティスと蓮也の二人はツクヨミが住むと言うクラウドランドの月の祠を目指した。
三輪山を越えて更に遠くの地であるため、今回はタイムマシンを利用した。
エスメラルダからもらった地図を確認すると、山奥の盆地の中に、月の祠は存在する。
このツクヨミと言う男、不死のバンパイアであり、若い女性の生き血を吸って生きているという噂もあり、そのことをエスメラルダから聞いていたので、ヘティスは少し怖かった。
ヘティス
「あそこね・・・、ツクヨミって死なない人のいるところは。バンパイアだってさ・・・」
蓮也
「俺は実証主義だから、確認できないことは信じない。噂と言うものは保留しておけばよい」
ヘティス
「不死身かどうかの確認って、殺しちゃだめよ~」
蓮也
「今から冥界への案内をさせるヤツを殺すわけがないだろう」
ヘティス
「・・・まあ、そうなんだけど、なんか、アンタと会話すると疲れるわw」
二人は盆地の中央に降り立つと、祠へと入って行った。
中は薄暗く、岩で作られたドームのようになっており、そこには何名かの女性たちが祭壇で祈りを捧げていた。
一番前で祈っていた女性がヘティスたちに気づき、近づいてくる。
美しい着物を着て、肌はふっくらとして白く、穏やかな表情の女性であった。
ヘティス
(この人たちもツクヨミって人に生き血を吸われているのかしら・・・)
(エスメラルダ先生が言ってたエレウシスの秘儀・・・。秘儀と言うからには、秘密の儀式なのかしら・・・)
オオゲツ
「あら、可愛らしいお嬢ちゃんと彼氏さん、いっしゃいませw」
「結婚式のご予約でしょうか?とてもお似合いのお二人さんw」
ヘティス
「お似合いだなんて、えへへw」
蓮也
「いや、コイツとはそういう関係ではない」
ヘティス
「ちょっとぉ!コイツって言い方ないでしょ!」
蓮也
「冥界に行きたい。そのためにツクヨミに会いに来た。取り次いでくれ」
そう言うとオオゲツの表情が変わった。
オオゲツ
「あそこは恐ろしいところよ。やめておきなさい」
蓮也
「わかっている、それでも行くと決めている」
オオゲツ
「あと、お金もかかりますし、戻って来れない場合でも返金できませんからね」
蓮也
「それでいい」
この月の祠は、基本的に冠婚葬祭を生業としているが、特殊な案件を委託することが可能らしい。例えば、結婚し、そこから離婚した場合、両者が死ぬという呪をかける、それで永遠の愛を誓う、と言うものである。
ある時、ここで結婚式を挙げた、そうした呪術婚をしたが、その呪術を単なるまじないの類と思った二人は別れてしまったが、本当に両者は死んでしまった、という噂がある。
オオゲツは、二人に、そうしたことや、冥界の危険性などを説明し、二人は契約書にサインをした。
その後、二人は暗い地下へ案内された。
地下へ続く石畳の階段の両脇には、ランプがあるが、十分照らすだけの光はなく、薄暗い。そこを下ると、祠の最下層に着く。ここがツクヨミの間である。
中に入ると、燭台の上に蝋燭があり、それがいくつか並んでいる。その両脇には、美女が目を閉じて祈りの状態となっている。そして、その一番奥の台座にツクヨミらしき男性がシッダアーサナにて瞑想していた。
ヘティス
(この人、まるで死んでいるみたい。そして、不思議な雰囲気のオーラね)
ツクヨミは二人に気づき開目した。
オオゲツが二人をツクヨミの近くまで案内した。
ツクヨミ
「これは、これは、稀有な客人たちよ。我が御社にようこそ」
蓮也
「冥界へ行きたい」
ツクヨミ
「おや?お主は伊耶也(イザヤ)の知り合いの・・・、名前は確か・・・」
「おお、思い出したぞ」
「此花桃也(このはなとうや)」
蓮也
「イザヤ?誰だ、それは。それと、俺の名は“此花蓮也”だ」
ツクヨミ
「おお、そうであった。改名して“蓮也”となったと聞く。グリーンアイズが名付けた麗しい勝義の名前である」
蓮也
「俺はもともと“蓮也”だ。改名などしておらぬ」
ツクヨミ
「ふーむ、人違いか。どうやら長く眠りすぎたようだ。確かに、時間が大分経っておる。桃也がいるわけがないか」
ヘティス
「ちょっとまってよ。“此花桃也”はロータジア初代皇帝でしょ?つまり、初代蓮也王でしょ?」
(やっぱり、この人、ずっと生きている不死身のバンパイアなのかしら・・・)
ツクヨミ
「その通りだ。そして、伊耶也とは“伊耶那岐”と言えばわかるだろうか?」
蓮也
「伊耶那岐・・・。初代蓮也と共にサトゥルヌス軍と戦い、彼がベルゼブブをはじめ、多くの邪神王を一気に誘い込み引き受けたという伝説のドラゴンナイト」
ツクヨミ
「ふーむ、その放つオーラの感じは、お主、桃也や伊耶也の子孫なのか?」
蓮也
「俺は、今は亡きロータジアの第二王子だ。そして、伊耶那岐が創始した神伝伊耶那岐流の継承者だ」
ツクヨミ
「なるほど、お主のそのオーラが物語っておるのはそれであったか」
ツクヨミはヘティスの目をじっとみつめる。
ツクヨミ
「ほぉ、緑の瞳・・・グリーンアイズか。今日は珍しい客人が来るが、これはどういう日であるか」
疑い深い蓮也であったが、このツクヨミという男の話は本当であり、もしかしたら、遠い太古、初代蓮也王の時代から生きていたのかもしれない、と思い始めていた。
ツクヨミ
「お主は今、私が言っていることを疑っておるのう」
「私が今言ったことの全ては真実だ」
蓮也
(この男、心が読めるのか・・・)
ツクヨミ
「ついでに、そちらの緑の瞳のお嬢ちゃんにも。私はバンパイアではない。瞑想することで体内のエネルギー消費を抑えることができるのだ」
「それと、この若返りの水“ヲチミズ”を飲んでいる。冥界から帰って来れたら作り方を教えて進ぜよう」
ヘティス
(若返りの水とか、怪しいんだけどw)
(けど、何で私が考えていることがわかるんだろう・・・)
ツクヨミ
「テレパシーは阿頼耶識レベルでの伝達である。常に冥界に意識を置く私の意識は、基本、阿頼耶識レベルなのだ」
ヘティス
(あら、完全に考えを読まれているわ・・・。この人とポーカーとかやっちゃダメねw)
蓮也
「とりあえず冥界へ連れて行ってもらおう」
ツクヨミ
「お主たちの冥界へ行く縁起は確認した。生きている人間が行く場所ではないので、不自然な働きとなる。だから多くの場合、エレウシスの秘儀は断っているが、今回は特別に許可するとしよう。その代わり、戻って来れなくても知らぬぞ」
蓮也
「ああ、かまわん」
ヘティス
「ちょっと怖いけど・・・、行くしかないわね」
ツクヨミ
「今日の夜はちょうど満月だ。そこで冥界ゲートが3日間だけ開く。その間に帰って来くるのだ。それ以上長く冥界にとどまると、普通の人間は冥界の人間になってしうから、心しておくように」
一通り、ツクヨミから説明を聞くと、二人は祭壇の前に座り、瞑想状態に入る。
ツクヨミ
「それでは、今からエレウシスの秘儀を開始する」
侍女たちが竪琴で美しく神秘的な音楽を奏で、ツクヨミがマントラを唱え出す。
しばらくすると、ヘティスは意識が遠のいて行った。
人は死ぬ時に、こうした感覚になるのか、と思った。そして、その死の体験を今、自分は行っているのだとも思った。
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