その人、聖女じゃなくて聖女『モドキ』ですよ?~選んだのは殿下ですので、あとはお好きにどうぞ~

みなと

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お土産はご友人

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『うぎゃぁぁぁぁぁ!!』
「あ、リューリュが潰された」

 オフィーリアは友人たちをしっかりと抱き締めつつ、リューリュのことをとてつもなく気に入っていたクローチェが、がっちりと抱き締めている。
 見た目が大変イケメンなクローチェだが、可愛いものが大好きということはあまり知られていない。
 学校でも、基本的にはあまり喋らず、気のおける友人たちや関係をきちんと構築されている婚約者の前では色々と話す。

 そして、その話す内容が多岐にわたっている等とは他の人は知らない。

 クローチェは見た目こそイケメンで高身長、スレンダーな体型でいかにもクール、という外見をしているのだが、可愛いものが大好き、という一面も持っている。

「はぁ……やはりふわっふわで可愛い……」
『はーなーしーてぇー!』
「はっはっは、ジタバタしても逃がしてやるわけないよ、ウサギちゃん!」
『アタシは! 魔獣! なんだから! ね!』

 ジタバタと慌てているリューリュだが、がっちりとクローチェに抱き締められているから、逃げることもできないままで執拗に頬擦りされている。

『オフィーリア! 助けてよぉぉぉ!』
「クロがそんな風にデレッデレなんだから、まぁ……」
『助けない理由になってない!』
「普段はクールなクローチェ様、を頑張ってるんだからこういう時くらいは……ねぇ?」
「そうそう」
「リューリュちゃん、頑張れぇ~」

 いつの間にやら、オフィーリアはアイシャ、デイジーと共にまたテーブルに着席し、ついでにジェイドもちゃっかり着席してお茶を飲んでいる。

『はーなーしーなーさーいーよ!』
「えぇ……こんなに可愛いリューリュを簡単に手放すとか無理なんだけど」
『ンギギ……』

「あれって、助けた方が良いのかな」

 相変わらずジタバタと暴れているリューリュを見て、オフィーリアは困惑したような表情になっている。だがしかし、アイシャはしれっと首を横に振る。

「大丈夫よ。その内クローチェもこちらに来ますわ。あの子、私たちの中で一番あなたのことが大好きなんだから」
「そうかなぁ」
「そうそう」

 アイシャの言葉を聞いたオフィーリアは、はて……と首を傾げているが、デイジーはアイシャの言葉に賛同するようにして頷きつつ、お茶を入れてくれたエルマにお礼を言っている。
 そして、エルマの入れてくれたお茶を飲みつつ、クローチェとリューリュの様子を眺めていると、ばっちりリューリュと視線がかち合った。

「ありゃ」
『ねぇ! 助けてぇぇぇ!』
「あー……仕方ないなぁ。後もうちょい待てばクローチェの可愛いもの大好き病も落ち着くけど……。クローチェ、そろそろやめたげなよー」
「………………えぇ?」

 明らかにしょんぼりしているクローチェだったが、オフィーリアも苦笑いをしていて、こっちへおいで、とクローチェとリューリュを手招きすれば、双方別々の意味を込めてぱっと顔を輝かせてオフィーリアのところにダッシュでやって来た。

「オフィーリア! 元気だったかい?」
「ええ、とっても。……お休みって……本当にいいものよね……」
『クローチェ、アタシだと限界があるから、アナタたちでオフィーリアのこと癒してあげてね』
「勿論だとも!」

 可愛らしいリューリュのお願いと、オフィーリアがやたらと遠い目をしているのを改めて見れば、大切な親友を少しでも癒してあげなければ! という使命感に襲われる。
 オフィーリアからすれば、まさかこんなふうに友人達がやって来てくれるだなんて思ってもいなかったから、何だか気持ちがふわふわと温かなものに包まれているような、そんな気分だった。

「……ふふ」
「オフィーリア、どうしたんだい?」

 嬉しそうに微笑んでいるオフィーリアを見て、ジェイドは柔らかな笑みで問いかける。父からの問いかけに、オフィーリアは嬉しそうな微笑みのまま口を開いた。

「あのね、すごく素敵な卒業プレゼントだな、って思っていたの。だって、皆が来てくれて……お父さままで帰ってきてくれて……私、本当に幸せものだわ。一番の幸せは、筆頭聖女から解放されたことだけどね!」

 嬉しそうな穏やかな微笑みだが、がっちりと拳を握って高らかに振り上げている様子は、声やら雰囲気やらと何となくミスマッチなのだが、誰も気にしていない。

「あ、ねぇねぇオフィーリア」
「なぁに、アイシャ」
「結局のところ、あの子に務まるの?」
「……」

 顔にでかでかと誰だっけ、と書いているオフィーリアを見て、ジェイドがとても困惑している。困惑しているのだが、『いやあの、言いたいことは分かるよリア……!』と小さな声で何やら呟いているあたりは、さすがオフィーリアの親ともいうべきか。

 とはいえ、さすがにお前から筆頭聖女の座を奪った相手のことは覚えておけよ、と思ったらしいクローチェが、よっこいせ、と立ち上がって手を伸ばし、オフィーリアの頭にチョップを落とした。

「あいた!」
「リアの筆頭聖女の座を奪ったデブだよ」
「分かってるわよ……」
『デブは否定しないんだ?』
「あの子、紛うことなきおデブさんだもの。そりゃデブ専の殿下に好かれるわけよ」

「そうじゃなくてね」

 ごほん、と咳払いをしたアイシャは、改めてオフィーリアに向き直る。

「あの子が筆頭聖女のままだと、国が終わるじゃないの」

 ひと言、そう告げればオフィーリアもさすがに表情を引き締めて、はぁ、とため息を吐いた。

「まぁ……そうよねぇ」
「リア、どうするんだい? 殿下はあの子にベタ惚れじゃないか。せめてこの国の未来を考えろ、という忠告はできないの?」

 クローチェの問いかけとも取れる言葉には、オフィーリアは困ったように腕を組んで上を向いた。
 うーん、と唸りながらも、結局はアルティナとルークの自業自得でしかないことは、分かりきっていることなのだが、彼らの欲望のままの行動に対して国全体を巻き込んでもいいものだろうか、という思いもある。

「忠告したところで、殿下は聞き入れやしないわ」

 静かに、オフィーリアは告げる。

「欲望のままに行動した結果の、報いは受けていただかないと……私もね、気が済まないの」
「それは……」

 告げられた内容に、全員が難しい表情で黙ってしまうがリューリュがしれっと口を開いた。

『ニンゲンって、ワガママねぇ』

 何を、と口を開きかけたデイジーだったが、リューリュはニタリと笑って言葉を続ける。

『オフィーリアの言う通りじゃないの。報いは、受けるべき。だって、選んだのはだぁれ?』
「それ、は」
『大体、自分がオフィーリアを捨てておいて、国がピンチになるから助けてくだちゃ~い、って……あまりにもオフィーリアをバカにしすぎてる! このニンゲンはねぇ、アタシを従えてるの! ニンゲンの寿命のうち、縛り付けられていた年月分は好きにさせてあげるくらいのことやりなさいよね!』

 リューリュの言葉に全員がぽかんとするが、ぱちぱち、と何回か瞬きをしたジェイドがそっと口を開く。

「いやぁ……リューリュちゃん。うちのオフィーリアにとっても懐いてくれてて……お父さん嬉しいよ」

 言い終わったジェイドはへら、と微笑んでいるが、改めて自分が何を言ったのかを反芻して気が付いたリューリュは、空中で地団駄を踏み始めた。

『今言ったことは忘れなさい!! んあー!!』
「まぁ、リューリュがオフィーリア大好きなのは分かったわ、うん」
『ちょっとぉクローチェ!?』
「リューリュがこんなに私のこと大好き、っていうのは嬉しいんだけど、まぁそうね。好きなことは面倒なこと済ませてからやりたい……けど、でもその前にね」

 こほんと、咳払いをしたオフィーリアは、改めてぐぐ、と拳を握った。

「まずはおばさまにご挨拶!」

 それを聞いた全員は、言われてみれば……と納得した。
 元々オフィーリアは、神殿に連れていかれる直前に尊敬する存在を見つけ、『大きくなったらその人のところに行くんだ!』と宣言していたが、神殿に連れていかれたことで叶わぬ願いになりつつあったのだが、たまの面会日にエルザに出会えたことでじわりじわりと『やりたいこと』への欲は高まっていっていた。

「まぁ、将来に向けてきちんとエルザさんと話をしておくことは悪くないね、うん」

 ジェイドがうんうん、と頷きながら言えば、オフィーリアはぱっと顔を輝かせる。
 そして、友人たちを見てオフィーリアはにこりと微笑んだ。

「というわけで、皆は泊まっていってね! せっかくだからお喋りしよう! あ、エルザおばさまのところにも行く予定だけど皆も行く?」
「オフィーリア、情報量が多いから一つずつやっていきましょうね」

 あっはっは、と笑ったアイシャは、すくりと立ち上がってオフィーリアをぎゅうと抱き締めた。

「お疲れ様、オフィーリア。長い間の筆頭聖女、お疲れ様!」
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