年の差１０、ありますが何か？

選択肢

　響也にキスされたことももちろん悩んでいたが、どくするべきなのか結局分からなかった。
　もしも響也と付き合っていたら、なんてことを考えても仕方ない。だって考えて悩んだところで、『今』は変わらないのだ。


「……あ」

　矢野。俺を悩ませる張本人。

「……こんにちは、先生」

　にこりと笑って駆け寄ってくる。胸が痛い。

「早くどうするのか決めてくださいね。じゃないと私、先生が選ぶ前にばら撒いちゃうかも…」

　ふふっと笑い、会釈して去っていく。

　答えはきっと初めから決まっていた。


　将来有望な達也に迷惑をかけるわけにはいかない。少なくとも俺は、分別のつく大人なのだ。




　達也に別れようと言ったところで、達也は納得なんてしない。だから俺は多少ムリにでも離れなければならない。幸い貯金はあるし、教員免許さえ持っていればどうにかなるだろう。

「ーーあ、もしもし。響也？ちょっと頼みたいことあるんだけど」


　ーーー多少ムリにでも。そう、ここから、達也の手の届かないどこかへ行かなければならない。そして、俺も達也の手を掴めない場所へ行かなければならないのだ。

　俺がしなければ、離れられないから。