男装の英雄は用済みだと棺桶に入れられた

翔千

文字の大きさ
6 / 18

謝罪

しおりを挟む
ヨハンの発言に、思わず固まってしまった。

「は?解雇?なんで!?皆ルヴァンヌ侯爵家に長く仕えてくれた人達なのに、若いミアやジュリアやレヴィ、カイル達なら、まだ分からなくは無いけど、代々、我が家に仕えていたヨハンや婆や達まで解雇だなんて」
「お嬢様、落ち着いてください」
「婆や、でも、」
「その事について今からご説明致します」
「・・・・・・、分かった」

婆やに宥められ、気持ちを落ち着かせるためにカップの中の冷めたミルクティーを飲み干す。

「・・・・・聞かせて、何があったの?」

レインは険しい顔色をする使用人達を見渡し言った。

話してくれたには、やはり、ヨハンだった。

「数日前、魔王軍の討伐成功の知らせが国全土に報じられました。そしてアリニア王国国王が第三王女ジョセフィーヌ王女様と魔王軍討伐を成功させた、ジルベール様との婚姻を宣言したのです」
「アリニア王族との婚姻、それって、」
「はい、ジルベール様が王族へ婿入りし、ルヴァンヌ侯爵家は王族の一員に招かれます」
「あの人達が泣いて喜んで飛び付きそうな話ね」
「ええ、実際、この知らせを国王陛下の使者様から聞いた時の旦那様と奥様は涙を流し狂喜乱舞のご様子でした」

レインの脳裏に両親が有頂天になり狂喜乱舞するその光景がありあり思い浮かぶ。

「そして、ジルベール様の婚姻を機に国王陛下の御好意で王宮より新しい使用人がルヴァンヌ侯爵家へ派遣される事になりまして・・・・・・、旦那様は、国王陛下の使者様が帰られた後すぐに、屋敷にいた使用人へ全員解雇を言い渡された。そして、ここにいる者を除き皆、故郷へ帰されました」
「え?なんで?」
「最後にこの屋敷の掃除をして出ていけと言われまして」

気まずそうに目を伏せるヨハンに、

「私の両親がごめんなさい」
「お、お嬢様!!」
「頭を上げてください!!」
「いや、もう、本当に申し訳ない。まさか、こんな事になっているだなんて。本当にすみませんでした」

レインは深く頭を下げ、ヨハンをはじめ、応接間にいる使用人達に謝罪した。
私のいきなりの謝罪に皆目を見開き、慌てミアとジュリアが駆け寄り宥めてくれたけど、私の気持ちは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

今回の討伐の報酬は国から何かしらの褒美が出ると思っていたが、まさか、王族との婚姻が報酬とは。

王宮出の使用人が派遣されると言う事は、国王の信頼を得たという意味で貴族としての箔がつく。
王宮出の使用人は優秀で容姿端麗な教養が完璧な者が多いと聞く。連れて歩くだけでも、人々に羨まれると言われている。

それに加えて、ジルベールと王女の婚姻。
世間から見ればそれは、勇者の血筋と王族との結婚。
何かにつけて先祖が成し遂げた勇者の威光を周りに自慢をしたがる両親にとってこれ以上にない褒美だ。

つまり、あまりの朗報にあの人達が浮かれまくって、ついでに自分達にとって不要だと思ったモノを排除。
という考えに至ったんだろう。

それが、長年支えてくれて来た使用人達や実の娘も例外なくに、だ。
前々から関心の無い人物には無関心だと思ってたけど、

「・・・・・あああああ、本当に、もおぉぉ!!!」

レインは俯きながら頭を抱え、呻くように声を上げる。
レインの突然の叫びにみんなが驚いた顔をするが、それを気にする余裕が無かった。

「お、お嬢様」
「・・・・・・・うん、大丈夫」

ミアが声をかけてくれたけど、なんとかそう言い返すのがやっとだった。

私、なんで、あの人達に執着していたんだろう?
記憶を辿っても、あの人達はいつもジルベールと自分達優先で私の事は二の次三の次。
顔を合わせて話すのも一年に数回だった。目を合わせて話すのは何年振りだっただろう?
どんなに頑張っても、認めてもらおうとしても真面に見てくれた事なんて、一度も無かったのに。
それでも、私は、親の、あの人達の愛情を求めていた。
いつか、認めてもらえる。
そう、自分に言い聞かせて来た。

だけど、もう、なんだか、冷めた。

多分、倒れた私を見下す笑顔の両親と弟の顔を見たあの時に、両親への愛情の執着も、期待に応えなければと言う熱意も、完全に冷めてしまっていた。
怒りとか、悲しみとか、辛さとか、悔しさとか色んな感情を通り越して、最早、『無』になっていた。

だけど、ここにいる使用人達は違う。
両親や弟の目があった為、表立って私に構う事はできなかったが、皆、優しくて、こっそり私の話を聞いてくれたり、傷ついて時、傍にいてくれた。

本当はこっそり家を出て誰にも別れを言わずに去るつもりだったけど、事情が変わった。

レインは伏せていた顔を上げ、不安げな顔をする使用人達を見渡す。

「お嬢様」
「ヨハン、話してくれてありがとう」

私はそう言い、座っていたソファから立ち上がり、姿勢を正し、皆に向かって深く頭を下げた。

「、お嬢様」
「みんな、改めて、謝罪させてほしい。
今の私はルヴァンヌ侯爵家にとって既に亡き存在。本当なら私は、もうお嬢様と呼ばれる人間では無い。
だけど、元両親が皆に迷惑をかけた事は変える事の無い事実。
そして、私はここに居るみんなに助けられた。
小さい頃から何度も。両親に相手されず泣いてしまった時も、剣や魔法の修行中に失敗して怒られた時も、ここに居る誰かが必ず、傍にいてくれた。
助けてくれた。本当に感謝してます。
そんなみんなが、あの人達の理不尽な理由で、職を失った。
もう、私は、この家の人間では無いけど、せめて、元この侯爵家の人間として、謝らせて下さい。
本当に、申し訳ありませんでした」

私は、頭を上げず、皆に謝罪の言葉で精一杯謝罪する。

レインの言葉に応接間の空気がシンと静まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...