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月明かりの路で
しおりを挟むロベルトとエマと別れたシェナとアーシアは街明かりが消えかかった街を一緒に歩いていた。
ギルドを出た時、もう深夜寸前。殆どの店が閉まっており、月明かりが街道を照らしていた。
「ねぇ、シェナ、今度オイナリ作ってよ。オイナリさん」
「本当に油揚げ好きですね、アーシアさんは」
「大好き!!ルリコが初めて油揚げを作ってくれた時から私の大好物なんだから」
ご機嫌に尻尾を振るアーシア。
「揚げたても素朴な味で美味しいけど、味付けされてしんなり染み染みに煮られたものも、軽く炙ってお醤油をちょっとかけてカリカリサクサクになったモノも、甘酸っぱい酢飯が詰まったオイナリさんもみんな大好き!」
「アーシアさん。油揚げ、好きなのはいいですけど文字通り油で揚げた物だから食べ過ぎると太りますよ?」
「ウッ・・・」
太ると言うフレーズにちょっと気まずい顔をする。彼女も女だから、あまり太るのは避けたいだろう。
う~~。と唸り自分の理性と食欲の間で揺れるアーシアを見て微笑ましく感じる。
普段は頼れる姐さん的なのに、こういう所は子供っぽく見える。
「まぁ、たまになら作りますよ」
小さく笑うシェナ。
さっきまで理性と戦っていたのに笑うシェナを見てアーシアも笑う。
「・・・・やっぱり、シェナはルリコ似ね」
「そう、ですか?」
「ええ、そうやって笑った顔はルリコに似てる」
「私はどちらかと言うと、父親似だと思うんですけど」
「そう?でも、そうかもね。ルリコもシェナの性格は父親譲りとか言ってたし」
「魔力は父親譲りとはいかなかったみたいですけど」
「あ、ごめん」
「大丈夫ですよ。事実だし」
とは言うもののため息をつくシェナ。
幼い時にエルフの父親を亡くしたシェナ。
エルフ族は強い魔力と高度な魔法を操る種族。
だが、エルフの国は鎖国的で遥か西の大陸の国から殆ど出ず一生を終えるという。
だがごく稀に国を出る者も数人いる。
その中の一人がシェナの父親、リュバルだった。
幼い頃の記憶だが、父リュバルは多種の魔法が使え、魔力も高かった。
綺麗な金糸の髪と自分と同じ細長い瞳孔に青い瞳。頭を撫でたり抱き上げてくれた大きな手がシェナは好きだった。
「でも、ルリコは魔力を全く持っていなかった。魔力が高かった父親。その間で生まれたシェナの魔力が並なのはある意味妥当でしょうね」
「そう、いうものですか?」
「そうね。シェナは魔力が並でも、魔法のコントロールがズバ抜けているからね。魔法の精密で繊細なコントロールで補っているんでしょう」
ぽすっと頭に何かが乗る感覚。
アーシアがシェナの頭に手を乗せていた。
「アーシアさん」
「むしろ、誇ってもいいんじゃない?シェナにはルリコ直伝の拳闘術も料理の腕もある。
でもそれは、決して簡単に出来るものじゃない事は私も分かってる。シェナが拳闘術も料理も魔法も人一倍頑張っているのも私も知っているから」
そう言って、アーシアはシェナの頭を優しく撫でる。
「大丈夫よ。私が保証するから」
ニカッと笑うアーシア。
アーシアの優しさにくすぐったい気持ちに頬を染め少し俯くシェナ。。
「そうやって、照れる癖はどっち似なんだろうね」
照れるシェナを見てアーシアは笑みを深める。
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