追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千

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慰謝料と迷惑料

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「相手を挑発して、喧嘩に持ち込み賭けものにしてすみませんでした」

私とバズとジョニーに頭を下げて謝るディーノさん。
ディーノさんの右頰にできた見事な赤い手形がとっても痛そうだった。
取られた鞄はさっき返して貰った。

「シェナ。ごめんね。この馬鹿にはキツく言っておくから、今回は大目にみてくれる?」
「はい。私は大丈夫です。って、言うか、ディーノさんの性格は知っていましたから」
「貴方達もごめんなさい」
「あ、いえ!!大丈夫っす!!」
「はい!もう気にしていませんです!!」

アーシアさんがバズとジョニーに声を掛ける。けどなんだか様子が変。
顔を赤らめ、ソワソワ、モジモジとしている。

「大の男が、モジモジするな。気色悪い」
「おい!!」
「気色悪い言うな!!」

シェナの呟きにバズとジョニーが詰め寄り怒る。

「ってか、お前、アーシア・フォルトと知り合いだったのかよ」
「どうなんだよ!?」
「ちょ、近い!!」
「「ウガ!?」」

いきなり暑苦しい男達の顔を近ずけられ、思わずシェナの両手の拳が2人の顔面に入る。

「なんか、楽しそうだね」

ディーノさんが可笑しそうに笑う。

「えっと、アーシアさんは小さい頃からお世話になってる私のお姉さんみたいな人」
「あはは!シェナにそう言われると嬉しいわね」
「あれ?俺は?」

改めて、バズとジョニーにアーシアさんとの関係を説明。
ディーノさんはさらりと無視。

「ええー、まさか『朱風の君』と顔見知りなのか!?」
「すげー」

ジョニーとバズが唖然となる。

それもそうだろう。
アーシアさんはギルド『龍の宿り木』の代表的なギルドメンバーの一人。
腰まで伸びたオレンジ色の髪を靡かせ凛々しく、愛刀の大舘を振るう姿から『朱風の君』と呼ばれ、特に新人、ルーキーにとってはカリスマ的な存在だ。


「あ、その二つ名で呼ぶのはやめて。小っ恥ずかしくて好きじゃないの」

照れくさそうに笑うアーシアさん。
普段は頼れる姐さん的で凛々しいが照れくさそうに笑うアーシアさんはなんか可愛い。

「~~~~ッ!!俺の奥さん可愛い!!」

そんなアーシアさんを見て隣にいたディーノさんがブルブル悶えている。
ちなみに、ディーノさんとアーシアさんは夫婦。
妻に尻に敷かれる愛妻家のディーノさんだ。

「・・・・ディーノさん、奥さん大好きな気持ちは解りますけど顔抑えて悶えるとちょっと変態臭いですよ」
「・・・シェナ、ヒドイよ」

シェナの毒舌に撃沈するディーノ。

「で、なんであんた達も撃沈してんのよ」

チラリと、右斜め下に視線をやると、何故か膝をつき撃沈している、バズとジョニー。

「いや、認めたくない現実が・・・」
「・・・アーシアさんマジで結婚してたんですか」

アーシアさんとディーノさんが夫婦なのはこの街の周知の事実だか、どうやら憧れの先輩が人妻だったと言う現実を目の当たりにして落胆したらしい。
 
「あら?貴方達最近ギルドに加入した二人ね」
「!!は、はい!!バズといいやす!!」
「お、俺はジョニーです!!この前Bランクに上がりました!!」

アーシアさんに声をかけられて、今度は一気に元気になるバズとジョニー。

「元気がいいわね」
「はい!元気で丈夫が取り柄っすから!!」
「そう、頼もしいわね。でも、この『龍の宿り木』で上を目指すなら力で上り詰めれるほど甘くはないわよ。『己を知り己を利する事』が大切よ。分かった?」
「「はい!!」」
「うふふ、期待しているわ。新人君達」
「「ありがとうございます!!」」

笑顔のアーシア。
うわぁ、なんか大の男二人が犬化している。
尻尾見えるよ。勢いよく尻尾振っているのがみえるよ。

「宿場の姐さん達が『男はみんな馬鹿だ』なんてよく言うけど、こう言う事なんですかね?ディーノさん」
「・・・・あははは。ノーコメントで 」

シェナの疑問に苦笑で答えるディーノ。
アーシアさんに笑顔で見送られ名残惜しそうに立ち去る犬もどきな男二人に呆れていると、

「ッ!!」

自身の首すじを、刺すような小さく、だが、確かな殺気を感じシェナは反射的に振り向く。
振り返った先は誰もいなかった。
だが、少し離れた所にギルドの窓が見える。
だが、誰もいなかった。

「・・・・・」
「シェナ、どうかした?」
「・・・いえ、なんでも」

一瞬の殺気は確かに自分に向けられたモノ。だが、ディーノに声をかけられ視線を戻す。

「そう。シェナ、これ」

アーシアが小さな中身が詰まった小袋をシェナに差し出す。

「え?これって」
「そ、シェナに賭けられた勝ち金。あげる」

小袋を開けて中身を見ると銀貨が数十枚入っている。
でも、少し多いような。

「アーシアさん「大丈夫よ。って言うか、この馬鹿夫に持たせると何に使うか分からないもの。貰っておきなさい」

シェナの言葉を遮るアーシア。隣でガクシと項垂れるディーノ。

「・・・・・分かりました」

少し考えそう言って、シェナは小袋の中に手を突っ込み、銀貨を5枚とり出す。
そして、残りが入った小袋をディーノさんに投げる。

「おっと、シェナ」

小袋を落とす事なく空中でキャッチするディーノ。

「シェナ」
「・・・・慰謝料です」
「いいの?一応貴女のお金に出来るお金よ?」

アーシアが呆れているようなちょっと困ったような顔をする。
まるで妹のワガママに手を焼く姉のようだ。

「迷惑料分はもらいましたから」

シェナは小さく笑い手の中にある銀貨を軽く投げる。チャリチャリと音を立てて手の中に収まる。

「じゃ、私これから採取に行くので」
「・・・・もう、シェナったら」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
「はい。行ってきます」

苦笑するアーシアと微笑み手を振るディーノさんに見送られシェナは歩き出す。

「・・・・おじさんのパンまだあるかな」
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