神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第1章 旅立ち

マッツ・オーウェン(2)

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 ……


「……ッツ! マッツ!! 大丈夫!? マッツ!」
「隊長!」
「マッツ!」

 呼びかけられ、意識を取り戻す。


「う…… みんな……」

 目を開けると心配そうに俺を覗き込む、仲間達の顔がぼんやりと見える。

「マッツ! ……よかった!」

 リタのホッとした顔が目に入る。

「さすが隊長だ。しぶといわ」
「あれ食らってよく生きてるな。ゴブリンロードもすげえが、隊長も大概だな」

 一体、何があった?
 そう思った瞬間、左脇腹にズキンッと痛みが走る。

「うう、いててて…… 今、どういう状況なんだ?」

 リタに支えてもらいながら座り、皆に問いかける。

「奴ら、逃げちまったよ」
「なに?」


 ヴィンセンツが言うには、あの時、俺は後ろからウェアウルフに首と足を掴まれ、ゴブリンロードの一撃を食らったそうだ。しかも棍棒とかじゃなく、ウェアウルフの両足を掴んで振り回したのが直撃したと。……よく生きてたな。

 俺は吹き飛ばされ、木にぶつかって気絶してしまった。その俺を庇うため、皆でゴブリンロードを囲もうとした所、奴らは身の危険を感じたのか、そのまま森の奥へと逃げて行ったらしい。

「やられる前の隊長の斬撃が、ゴブリンロードの片目、持ってったのが見えたぜ。形勢不利になって逃げた、と見たがな」

 斬撃……そうか。そういえば最後、フリィをぶっ放したな。
 そういうことなら、逃げた、で正解だろう。


 だが、もし、そうだとすれば……どう動く?
 そのまま、巣に戻るか?

 あんな凶暴なやつが?

 少し考えるが、どうにも考えがまとまらない。いまだに衝撃で頭が回らないんだ。
 こんな時は直感に従おう。

「みんな。ヤツを追うぞ」

 すると俺の肩と背を支えてくれているリタの手に力が入る。

「いやいやいや……大丈夫なの、マッツ。普通、死んでるわよ、あんなの」
「全くだ。ヤツも巣に引きこもるだろ。隊長も戻って休んだ方がいいぜ」

 ヴィンセンツもリタに同調する。が、俺は頭を振りながら立ち上がる。

「そうしたいとこだけど……ダメだ。今、ヤツを逃すと取り返しのつかないことになる、気がする」


 ―――

「その後、急いで追いかけたんだが、森の中で見失っちまった。だがゴブリンロードがバカでかい咆哮をしてくれたおかげでおおよその位置がわかり、大急ぎで駆けつけたって訳だ」

 朝からの経緯を簡単にヘルマンとリディアに説明する。そのままリディアに顔を向けて続ける。

「……ってことだ。逃がして悪かった、リディア」
「貴方達もアレと戦ってたのね」

『シシ』に援軍を要請したものの、いつ来るかは分からず、村の手前でヘルマン、リディア達が戦っていたのは全くの想定外だった。

「奴の体が傷だらけだったのは、直前にマッツの攻撃を食らいまくってたって訳か」

 ヘルマンが顎を触りながら、思い出すように言う。

「ここで戦ってくれていたおかげで奴らを倒すことができたし、村にも被害がなかった。ヘルマン、リディア。感謝するよ」
「いや、こちらは当たり前だよ。それよりも、よく『タカ』に戻らずに追撃してくれた。その判断がなければ我々は確実に全滅していた。礼を言うのはこちらの方だ」

 ヘルマンは、ちらりとリディアを見やりながら、

「おかげで、彼女も無事、お前に会えたことだし、よかったよかった」

 つい先程までの勇姿はどこへやら、ニヤリといやらしい笑顔を浮かべ、ヘルマンが言う。

「は……? ちょ……ヘルマンさん!?」

 眉をハの字にし、口元だけ取り繕ったような笑いを浮かべて耳朶まで赤くするリディア。

「あら。リディア……うちの隊長に気があるの?」

 急にリタが俺の馬にピッタリとくっつき、リディアに意地悪そうな視線を送る。

「~~~!!!  気! なんて! ない! です! これっぽっちも!」

 リディアは真っ赤な顔で頬っぺたを膨らますと、リタとヘルマンに反論し、更に俺に向き直り、鋭い目で睨む。

「あんたも! 妙な勘繰りしないでよね!!!」

 何かフラれてしまった。
 俺、何も言ってないのに……しょぼん。

 リディアは、フンッ!!と言いながら、離れて行った。
 ……が、ふと何かを思い直したかのように立ち止まると、俺の所に戻ってきた。

「コホン……。でも……その、今日は……ありがと」

 小さな、小さな声で俺にだけ耳打ちしてくれた。

「え……あ、うん」

 不意打ち過ぎて生返事をしてしまう。

「来てくれて、嬉しかったわ!」

 そして今度は本当に離れて行ってしまった。

 何だアレ……可愛すぎる。

 リディアめ。少し前まで子供だったのに! ちょっと離れてる間にそんなスキルを身につけていたとは……!
 そんな事を思いながら、走り去る後ろ姿をボ―――ッと見つめていると、

「マッツも満更じゃなさそうだな。へへへ」

 最低なゲス笑いを浮かべるヘルマン。

「ただでさえ、マッツは女の子が大好きだしね。ましてやリディアだもんねぇ」

 やれやれといった表情で首を振るリタ。

「リタにヘルマン。想像でモノを言わないように。それから、さっきみたいにリディアに余計なこと言わないでくれるかな?」

 2人に釘を刺しておく。今後もこんなことで一々、彼女を怒らせたくはない。

「だってリディアったら可愛いんだもの……からかいたくもなるわ!」
「それにそのおかげで、今、良いもん見れただろ?」

 そう言って、2人で笑い合っている。

 だめだこりゃ。
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