神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第3章 英雄

マッツと仲間達(リディア・ベルネット)

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 ――― 3日目 ―――

 リディア・ベルネット(19) 女性。

 赤、黒、白系がグラデーションされたチェック柄のチュニック、黒の膝上スカート、ビロード生地になっているベージュのブーツという格好で登場のリディア。


「こんなチュニック、持ってたっけ?」
「う……持ってたわ。ちょっと着てなかっただけよ!」

 そうなんだ。まあ、迷彩の真逆を行く色柄だ。大森林とかでこんなの着てたら目立つしな。街中位でないと着れないだろう。

 正直、可愛い。前にも思った事だが、『シシ』の砦に俺がいた頃から比べて、グッと可愛くなった。あの時はまだ学生さんの雰囲気が抜けず、何かと言えばツンケンしていただけだったんだが、何ちゅうか、艶っぽさが出たというか……。

 そして……俺のリディアセンサーが、口に出して褒めろ、と告げている。きっとこれは褒めないと1日引きずるパターンだ。危機回避だ。

 改めて、マジマジとリディアを見る。

「凄く……可愛いチュニックだな! リディアによく似合ってるよ」
「え!? そ、そう? ま、まあ、でもアンタの為に着てるんじゃないわよ? こんな時位でないと着る機会がないから……」

 プイッと横を向くリディア。

 が、俺にはわかる。これは大成功だ。俺のリディアセンサーが正解音を鳴らす。このスタートを間違えると今日の業務が達成できないからな。

「じゃ、少し話をしようか」
「うん」

 途中、いくつかレディス専門店に寄りつつ、小高い丘に行く。惣菜屋で昼飯用にお弁当を買っておいた。それを摘みながら話をする。

「どう? 今の所、不自由ないかい?」
「ん、そうね……特に、無いわ」

 返事、早いな。大丈夫か? それとも今日までに考えていてくれたのかな。

「エルナとは上手くいってるかい?」
「勿論よ! 師匠は優しくて、実力もあって本当に凄いのよ!」

 顔を輝かせてエルナを褒め称える。そうかそうか。それは良かった。うまくいっているようだな。

「んー!! これ! 美味しいわね!」
「ホントだ! このフライ、うまいな。鶏の胸肉かな。いや、もひとつ奥のささ身の部分だな。味付け、めっちゃうまい」

 鳥のフライを頬張りながら、更に会話を続ける。

「エルナだけじゃなく、他のみんなとも、うまくいってるかな?」
「え? いってるよ?」
「そうか、なら対人関係は問題ないね」

 不意に暗い顔になるリディア。

「ねぇ、師匠って、やっぱりドラフジャクドの件が終わったら……」
「うん。それはしょうがないだろうな。彼女はビルマークの人間だしな。テオドール王とシモンの御好意で付いて来てもらっているだけだからな」
「そっか。まあ、そうだよね。はぁ……」

 本当にリディアはエルナに心酔しているようだ。確かにあれだけ年が離れていて、同じテン系の魔術師で、厳しく、そして優しいエルナだ。そうなるのはわかる。

「エルナの代わりは誰にもできないが……みんながいる。誰に頼ったっていいんだぞ」
「うん……」
「むしろ、リディアが後継者を育てる位になってくれたらエルナも本望だろうな。見送る時は、もう大丈夫って思わせてあげないとな」
「…………」

 エルナと離れるまでは、まだ時間はある。

 まだまだ一緒にいれるんだから、その間に気持ちの整理もつければいいさ。

「俺でよければいつでも相談にのるよ? あまり先の事ばっかり考えて塞ぎ込まない事だ」
「そうよね。まだ一緒にいる時間はあるんだから……」

 弁当を食べ終えた俺達は、しばらく、その丘を散歩しながら話す事にした。

『シシ』にリディアが配属された時の事、俺が『タカ』に異動になった時の事、エッカルトにとっ捕まり牢屋で過ごした時の事、初めて『超人』と言われる人物に出会った時の事、百竜の滝に感動した事など……今まであった事をなぞりながら、他愛も無い話をし、怒ったり、笑い合った。

 いつしか時は夕方。

 この時間、この丘から見るドラフントの町は、綺麗な夕日が町中を照らし、雑多な店々や、いかつい傭兵達を、一律、美しい風景に変える。

 辺りに人影はなく、しばらくこの黄金の光景に見入る俺達。

 10月の涼しい風が遠い目をしているリディアの髪を分けていく。

 しばらく、無言の時が流れる。

 リディアの肩にそっと手を置く。
 ハッとして、俺の手を見、そして俺をキッと睨む。

 ギクッッ

 が、そのまま、俺の肩に頭を預けてくれる。

 ……ホッ。心臓、止まるかと思った……。


「ねぇ、マッツ……」
「何?」
「…………」

 町をボーッと見ながら、しかし、リディアは答えない。

「リディア?」
「何でも無い」
「え?」
「……何でも無いの!」

 さっと、頭を離し、体も俺からも離れようとする。
 反射的にリディアの手を握って引き寄せた。

「!」

 離れようとした反動で俺の胸に飛び込んできたリディア。

「……キャ」

 小さな、小さな声で悲鳴をあげる。
 上目で俺を見るが、先ほどのように睨みつけては来ない。

 これだ。これが昔と違う。
 昔なら今の行為で既に5、6発はイかれている筈だ。

「リディア……」
「…………」
「あの、俺……」

 やばい。完全にリディアの体を抱いてしまっている。仕事中なのに、とか、何故だかエルナの顔やヒムニヤ、クラウス、アデリナの顔が頭に浮かぶ。不思議とヘンリックは出てこない。

 罪悪感だろうか? 俺だけ何してんの? っていう。

「…………」

 グッと腕に力がこもる。
 俺の体は意思とは正反対に動く。この女好きな体め。

 いや、違う違う。リディアは違うんだ。俺の生来の女好き、とは関係無い。

 少し、ビクッと震える腕の中のリディア。

 ゆっくりと目を閉じる。


「リディア……」

 そして、俺はリディアの可愛くも、上気している顔に近付き、薄い赤の口紅が塗られた整った形の唇に唇を――― 重ねた。

 数秒して、顔を離す。

 潤んだ目を薄く開けるリディア。
 口元も少し開いていて綺麗な歯がチラッと覗く。

 もう一度、口付けする。さっきより長く。

「ん……んん……」

 また顔を離し、今度はグッと抱き寄せた。

 やった!
 ついに! 俺はやったよ!

 そして肩口にリディアの息遣いを心地よく感じる。

「リディア、もっと俺を……頼ってくれよ?」

 よっし! 決まった!

 リディアはと言えば、機嫌良さげに微笑みながら「うん」と小さく頷いている。

「ねぇ、マッツ。これってさ…………」

 リディアの声が心地良く耳に入ってくる。
 俺の体に腕を回し、完全に体重を預け、俺の耳元で優しく囁くリディア。

 だが、次の一言が、俺を凍りつかせた。


「セクハラだよね?」
「……はぅあ!?」


 ガ――――――ン!!!

 ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「公私混同だよね? 仕事って言いつつ、部下の女性を人気の無い所におびき寄せて……」
「な……な……なん……」

 ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!


「師匠と離れる事になって寂しがる所に付け込んだんだよね?」
「えあ!? えっと……あ……え?」

 しどろもどろになる俺。
 思考停止。

 ダメだ。違うって言えない。
 ああそうさ。公私混同さ!

 自分でも分かる位、顔が青ざめていく。


「ふふ……ねぇ、誰にも言われたくない?」

 ウンウンッ!

 大きく縦に首を振り、肯定の意を示す。
 肩口から顔を離し、俺の顔を見つめるリディア。


「じゃあ……もう1回、ううん。もっと……して」


 ド――――――――――――ン!!!


「しますとも!!」


 何度でも!!

 なんて可愛いんだ。
 良いようにやられてる感が有り有りだが、そんな事はどうでも良い。

 今まで、散々寸止めで我慢していたんだ(ヒムニヤ、アデリナの分を含む)。

 その分を今! 取り返すんだ!


 そして―――、何度もキスを交わした。

 今回は邪魔は入らなかった。
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