神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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第3章 英雄

ヒムニヤ救出(3)

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 『夜通し、駆ける』


 言葉にすると簡単だが、これがどれほど疲れる事か。
 馬だけではなく、乗っている方も体力は強烈に削られていく。

 イシャンに用意してもらったタフな馬も、流石に24時間ぶっ通しで駆ける、という訳には行かない。

 飯も食わせるし、数分の休憩をこまめに入れる。

 そして馬も俺達も昼に少し仮眠を取る。それでも、城を出た翌日の夕方には、早くもドラフキープヴィの旧国境を越える。

 正直、タフさにはかなり自信のある俺ですら、結構へたってきた。ヘンリックも見るからにヤバい。

 いわんや、か細いアデリナ、リディア、エルナは……。


 が!!

 そんな俺達の苦労が身を結ぶ。

 国境を超えた更に翌日、遂にラーヒズヤの騎馬隊の土埃を捉える。

「追いついたッッッ!! みんな、休みながら来い! 俺は先に行く!!」

 この馬も良くもった。
 とは言え、死にそうな呼吸をしている。もう少しだ。頑張れ!!

「ラーヒズヤ殿下ッッッ!!」

 遠くから叫ぶ。
 だが、聞こえないようだ。

 もう少しだ、俺の馬、頑張れ!! ラストスパートをかける!


 ドドドドドドドドッッッ!!


「ラーヒズヤァァァァァァ!!!!」

 もう呼び捨てでも構うものか。

 ……と、後方の何人かの兵士が振り返る。

 よし、気付いた。

 早く、ラーヒズヤに知らせろ!
 ……俺の代わりに。

 頼む!


 まずい。少し馬のペースが落ちてきた。

 元々、速い馬では無い。騎馬隊が見えてからの、この短距離で無理をし過ぎた。明らかに失速する。

 そして、遂にバタンッと、両の前足をくの字に曲げ、倒れてしまう。

 うおぉぉぉぉぉん!!

 大丈夫か! 友よ!

 必死に首を撫でてやるが、三白眼になり、口から長い舌がデロリ、とはみ出る。

 クラウスがいれば……。
 くそっ!

 …………

 ……


 ドドドドッ

 ドドドドドドドドッッッ


 ウッ……。

 しまった。一瞬、気を失った。
 馬蹄の響きですぐに目を覚ます。

 気付くと、目の前に……。


剣聖シェルド・ハイ! 何をしておるのだ?」

 ラーヒズヤ……?

 やった。ようやく……追いついた!

 いや、違うな……正確には俺に気付いた兵士が知らせてくれ、ラーヒズヤはわざわざ俺の為に戻ってきてくれたんだ。

「ハァハァ……すみません。ちょっと……馬も私もこんな感じですが……ハァハァ……ご容赦……」

 横たわる馬に頭を預け、目だけでラーヒズヤを追い、言葉を絞り出す。

「大丈夫か? ……おい、誰かイバンニを呼んでこい」

 ……

「殿下……頼む……」
「待て。喋るな。まもなくヒーラーが来る」

 フ……フ……。

 意外と……優しいな、ラーヒズヤ……。

 …………

 ……



 ……

 …………


 ん……

 あれ。また気絶してしまったか。

 ラーヒズヤを説得しなければ……


 どこだ? あれ?

 何だ?

 何故、何も見えない?

 真っ暗だ。


(マッツ……オーウェン)


 ゾクゾクゾクッッッ!!

 即座に気付く。


 しまった……!!


(フフフ……ようこそ、我が世界へ……)


 闇に浮かぶ不気味な顔。



 また取り込まれてしまった……。

 お前な……時と場所を選べよ……


 ヘルドゥーソ!!!


 今、お前の相手をしている暇は……


 ……いや、待てよ。


 ……

 お前……お前……

 まさか……ヒムニヤに何かしたんじゃないだろうな!?


(フ……フフ……さて……どうだったかな……)


(しかし、もう気にする必要は……ない)


(ヒムニヤがいない今)


(もう、お前が目覚める事は……)


 ……

 ん? 目覚める事は何なんだ?

 不意に俺の左手が暖かく、優しい温もりで癒されてくる。


(なんだと……!? バカな!)


 明らかに狼狽するヘルドゥーソ。一体、どうしたと?

 その時、不意に後ろから一筋の光が射す。


(マッツ! こっちです!)

 エルナ!?

 エルナの声だ!


(お前の……仲間か……)


(チ……少々、お前達を見くびっていたようだ)


(もう少し深い闇に落とすべきだったか)


(フ……フ……やりおる。だが……)


(ヒムニヤはこれより三層下の闇に落ちている)


(お前達に助け出す事は……不可能)


 その声を聞きながら、エルナの元へ走る。

 だが、最後に言わずにはいられなかった。



 おい、丸目の白髭野郎!

 ヒムニヤは、絶対に俺が助け出す!!

 俺達にちょっかい出した事を後悔させてやる!!



 そして、光が最大になり―――

 俺は目覚めた。

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