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第4章 聖武具
《放浪者》対《滅導師》(2)
しおりを挟むコンスタンティンとエッカルト。
彼らは衝撃で、丸2日気を失っていた。
「う……」
呻き声を上げ、ようやく目を開けたコンスタンティン。
最初に目に飛び込んできた景色は、真っ暗な空、だった。
だが遠く離れた空は晴れ渡っている事から、夜という訳では無いらしい。
近くにはエッカルトが倒れている。
怪我している様子は無く、死んでいる訳でもない。さっきまでの自分と同じく、失神しているようだ。
ブルブルッ……
辺りを見回し、小さく身震いする。
ここは海の上の筈だ。だが自分とエッカルトがいるここには岩と砂がある。小さな島のようだが、陸地と呼べる部分は少ない。
何故なら島の真ん中に大きな大きな、『穴』が空いているからだ。直径でいうと、小さな山程くらいはあろうかと思われる。
地底と言うべきか、海底と言うべきか難しい所だが、とにかく「底」に向かって、見る限りは果てしなく続く穴がポッカリと空いている。
そしてそこから感じる、尋常では無い『負』、そして『闇』のオーラ。
移動中にコースが変わっていくのを感じ取り、方向的には南に引っ張られているのを感じていたコンスタンティン。
その付近にあると言われる、このような異常な空間に、彼は1つだけ心当たりがあった。
「ここは……『世界の眼』の中、だな」
ポツリとそう漏らし、肩を落とす。
『世界の眼』について、コンスタンティンは少し知っている。全ては書物の情報だが……
彼の調べた情報が間違いでなければ、この穴を降りると途轍もなく広い地底世界が広がっており、そこはモンスターの巣窟となっている筈だ。
しかも並みのそれではなく、地上ではほぼ見る事のない超ド級モンスター群。
一説では、太古、創世神達がこの世界を作り出した時の歪み、カスのようなものより生まれた者達ではないか、とされている。
地上は概ね、正義と慈愛に溢れているが、一方でここはそれらとのバランスを取る為の『魔獄』となっている。その為、ここのモンスターはいくら殺しても、時が経てば元に戻る、むしろ数は時を経るほどに増加傾向にある、と書物には記されていた。
『世界の眼』は、大地が作り出した魔力で形成された黒い竜巻で覆われているが、目に見えるものではなく、『神視』特性を持つ者のみがそれを目視出来る。
闇雲に侵入、脱出を拒むものではないが、この世界が悪と判断したものは、ここから外に出る事が出来ないようになっている。恐らくは神の領域、神力によるもの、とあった。
書物の筆者は、かつて実在した超人、《探訪者》ヘネ・ルードとあった為、そんな所には絶対に立ち入るまいとコンスタンティンは思っていたのだ。
だが……どうやら来てしまったようだ。
「やれやれ……どうやら、これで僕の長い人生も、終わりかもしれないな」
寂しげにそう呟き、近場の岩に座り直した。
―
コンスタンティンが目覚めた次の日、エッカルトが目を覚ます。
状況を説明し、取り敢えずヤバそうだという事は理解しました、とトボけた事を言うエッカルト。
だが、2人でテンパっていても仕方がない。むしろ、この位の方が気が楽だ、コンスタンティンはそう思う。
「しかし先生、その『神力によって作られた黒い竜巻』なるモノがあるとして、いや、あるんでしょうな、私でも何となく感じます。……それが悪しきモノが外界に出る事を防ぐ為、というなら、我々、いや、先生だけでも出られるのではないですか?」
そうだ。
コンスタンティンもそう考えた。
無論、エッカルトを放置して、と考えた訳ではない。
だが……
「飛べないんだ。恐らくだが、『黒い竜巻』とは別の力が働いている。その力こそ、僕達をここに引きずり込んだ力」
そう、彼は何度も試していたのだ。
だが、壁を越えようとすると何らかの力が働き、邪魔され、引き戻される。押し返されるというよりは、引き込まれる、という感じを受けた。
「つまり……ここを出るにはその力が何かを究明し、取り除く事、ですか」
「そうだ。だが、それは不可能に等しい」
エッカルトが怪訝な表情を浮かべる。
「これはまた先生らしくない仰り様ですな。理由を聞いても?」
「この力の源は……《滅導師》ヘルドゥーソだ。彼はこの『世界の眼』と地下で繋がっていると言われている『魔力の暴風域』に住んでいると言われている。何故かは知らないが、奴は僕がこの穴を通ってくるのを待っている様だ」
苦悶の表情を見せるコンスタンティン。
その名を聞いて少し驚くものの、エッカルトは、しかし明るかった。
「それは厄介ですね。確かに状況を整理すると我々はこの穴に入るしか手がない様に思えます。それこそがヘルドゥーソの思惑通りとして、1つわからないのは、どの辺りが『不可能』なのでしょう?」
「え!?」
ハッとして顔を上げるコンスタンティン。
「先生は過去にヘルドゥーソと何かあったように感じますが……私は先生が思うほど、超人と言われる者達と先生の間に力の差は無いように思いますよ」
「何をバカな……君は超人達の凄さを知らないから、そんな事が言えるんだよ。僕なんかまだまだだ」
話にならないとばかりに決めつけるコンスタンティンを見て、エッカルトは更に口調を優しげなものにする。
それはかつて憎悪に飲み込まれていた時の彼とは全くの別人、だった。
「確かに私は実際の『超人達の凄さ』というものを知りませんが……よく知っている者達から伝言を預かっています」
「なんだって?」
「我々がニヴラニアで過ごした1週間、ある日、私は宿屋から離れた酒場で1人で飲んでいたのですが、そこにマッツ・オーウェンとリディア・ベルネットが来て、共にこんな話をしました」
―――
……
リディア『エッカルトの先生は、本当に凄いわね。実際に目の前で見て、あれ程とは思わなかったわ』
マッツ『今でも、あいつとやって……勝てる気はしないな』
エッカルト『うむ。お前達如きでは無理であろう』
リディア『やかましいわ!』
マッツ『……あいつはなぜか極度に超人達を恐れている様だが、俺達が見る所、力の差は殆ど無いと思うぜ?」
エッカルト『何だって? それ程か!?』
マッツ『ああ。俺達は超人と呼ばれる5人の内、4人と出会って、敵として味方として戦ってきたが……さほど変わらない、というのが俺の実感だ。無論、超人達もどこまで全力を出していたかはわからんが……特にサイエンとヘルドゥーソはな』
リディア『ヒムニヤ様が超人に近い者の名を挙げていた中にボルイェも入っていたのよ? あいつ、手も足も出なかったじゃない』
エッカルト『そうなのか。確かに凄い魔力を感じてはいたが、先生が凄すぎて一方的だったな』
マッツ『エッカルト、これはあいつに言っても言わなくてもいいんだが……ただ、もしあいつが超人達と敵対する様な事があって、そしてもし尻込みする様な事態がもし起きたとしたら、伝えてやってくれ』
エッカルト『わかった』
マッツ『ヒムニヤが言うには、コンスタンティンは既に超人の資質に目覚めている。だから老化しない。そして、現世において超人に近い人物は、突出してコンスタンティンだ、と。直接、彼女がお前の名前を出していたよ、と』
―――
聞き終わり、呆然とするコンスタンティン。
《神妖精》と呼ばれる高位森妖精。創世神と直接交信できる超人ヒムニヤが自分の名前を出していた事、既に自分が超人の領域に踏み込んでいるという事実、全てが思いもしない事だった。
「今すぐにここを降りて、ヘルドゥーソと戦いましょう、とは言いません。先生の御決断にお任せします」
最後にそう言うと、よいしょ、と腰を上げ、少し島を調べてきます、とコンスタンティンから離れるエッカルト。
そして、ここが『世界の眼』である、と理解した時にコンスタンティンが覚悟した様に……
「さて……どうやら儂のつまらない人生の終わりが来た様だ。最後にこの命を蘇らせてくれた先生に、全てを捧げよう」
エッカルトは1人、強く決心する。
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