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第6章 魔獄
魔神(3)
しおりを挟む「いっくぞぉぉぉぉぉあああ! アスラァァァァ!!」
突っ込む俺に腕を振り上げ、拳を落とすアスラ。だが……緩慢すぎるぜ!
拳の軌道を読み、サッと左へ避ける。
拳が地面に着弾、同時に爆発が起きる!
ドォォォォォォォォンッ!!
久々だが、一度戦ってるんだ。そんなのは想定済み、爆発の威力を利用して跳び上がり!
「火竜剣技!!」
剣技に魔力を込め、爆破のポイントをアスラの首辺りにセット。爆発には爆発だ。
「『爆』!!」
ドォォォォォォォォンッ!
さっきのアスラの爆破にも劣らない爆発がアスラの顎の辺りで炸裂!
だが、意に介さない。
ギロリッ!
兜の奥から覗く金色の眼!
それが確実に俺の動きを追っている。
体の奥からゾクゾクと恐怖が湧いてくるのを必死で抑える。戦いが始まればビビらない。それが俺のモットーだ!
アスラの足元に着地。
その時点で既に蹴り上げる動作に入っているアスラ!
「ぐッ!」
動き自体は俺からすると緩慢だが、その分、跳んだ時点でここまで読んでいたな。
避けれない!
覚悟を決めろ!!
腕を胸の前で交差、被害を最小限にしようとする自然な動作を取ってしまう。
目の前を巨大な鋼鉄が埋め尽くす!
「『反射』」
コンスタンティンの声と共にアスラに蹴りあげられる!!
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
……
だが、俺の位置は変わらない。
あれ?
見るとアスラの足が爆発し、反動で後ろに反り返っている。
振り返るとコンスタンティンが片目を瞑り、親指を立てている。
おおお!
なんと頼もしい!!
もう一度アスラの目を見ると、コンスタンティンの方を凝視、そしてその後、俺に視点を戻す。
「ギギ……」
こいつの中にコンスタンティンの存在がインプットされたようだ。
だが俺は……遠くにいる魔術師を攻撃させるなんて、そんな間抜けな前衛じゃない。
素早くアスラの周りを回りながら考えを巡らす。
まず、こちらの戦力は、俺、コンスタンティン、リタ、ディヴィヤの4人。
そして、かつてと同じく、さっきの『爆』は全く通らなかった。
基本的に修羅剣技は魔力を大量に上乗せる攻撃だが、爆発自体の威力は物理だ。見た目の派手さに反して『爆』では奴は傷つきもしないと見た。
つまり、隕石、風圧、斬撃などの類はあまり効かない、という事だ。
コイツを倒し得るのは、リタが持つ2本の聖剣、完全魔法攻撃の魔竜剣技、もしくは……
「アスラァァァァッッ!!」
ドンッッ!!
アスラの頑丈そうな胸当てがベコンッ!とへこむ!
コンスタンティンの指先から出る無詠唱の攻撃!
そうだ。あいつだ。
アスラに勝てるとすれば、攻撃の要はコンスタンティンだ。
「リタ! ディヴィヤ! 撹乱だ。コンスタンティン! お前が攻撃の主力だ!」
皆が了解した事を素早く確認し、アスラの嫌がることを考える。
こいつと類似の戦闘経験と言えば……
ドラフジャクドでのヴォルドヴァルド戦か。
あいつは鎧が物理無効だった為、隙間にねじ込んで勝利した。その事自体は参考にはならない。
だが、あいつが最も嫌がった攻撃。
それは、アデリナの弓攻撃だ。
前衛の俺達を狙いたいのに目に飛んでくるアデリナの矢。あいつはそれにイライラしていたのだ。
こいつはどうだ?
先程の視線を見てもわかるように、こいつは人間と同じように目で見て攻撃を繰り出している。つまり、同じ事を嫌がるのではないか? 攻撃そのものが大して効かないとしても、だ。
目に攻撃されるのは誰だって嫌だ。
よし、それでいくぞ!
「青竜剣技!」
アスラの前に立ち、数百を超えるミニシュタークスを発現!
「『飛』ッッ!!」
狙いは奴の目!
ギギ……
腕を振り回して防ぐアスラ。
ドドドドドドドドドドドドッッ!
この『飛』は少し工夫をしている。
いつものように一列に並び、飛んでいくだけではない。魔力が上がり、量を多く出せるようになった分、幾重にも張り巡らせ、何度も何度も、執拗に斬撃を加える!
「ギギ……ギギギギ!」
ドドドドドドドドッ!
ドドドドドドドドドドドドッッ!!
そして背後から、左太ももの裏あたりを斬りつけるリタ!!
シュバシュバシュバシュバッ!!
「ウガッッ!!」
効いたッッ!
さすが聖剣。アスラの装甲を切り裂いている!
反対側の足をディヴィヤが切り裂く!
こちらはリディアのバフがかかってはいるものの、あまり効かないようだ。仕方がない。シュタークスでも直接では、ほぼダメージが与えられないんだ。
それを考えると『青い聖剣リゲル』と『赤い聖剣ベテルギウス』の強さは、本当に別格だ。
三方向からの攻撃、そして視野を覆った。
あとは……
「ハァァァァァッッ!!」
ピィィィ―――――――――ンッ
……
ジュヴァァァァァァァァァァァァァァァァ……
コンスタンティンの無詠唱!
ピンク色の細い糸のような光線がアスラの右肩を貫く!
「ギ……!」
……
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!
アスラのかなり後方で、恐らく洞窟の壁と思われる部分が大爆発する!
あの細い筋にどれ程の魔力が凝縮されていたか、あの爆発でわかろうというものだ。
ボッ!!
「ギギ……」
壁が爆発して数秒後にアスラの肩に空いた穴の周りが燃え出す。
「魔法の炎だ。簡単には消えないよ」
「ギ……」
自分の右肩をゆっくりと眺めるアスラ。
前触れ無しに左手で肩の炎を殴る!
ドォォォォォォンッ!!
「ぐぁっ!!」
「い……きゃあッッ!!」
近くにいた俺とディヴィヤがそれぞれ、吹き飛ばされる!
「オマエモ、ヤルジャナイカ。オマエガ、コンスタンティンカ。……オモシロイ!!」
見ると、右肩の炎は既に消えている。
穴は焼け焦げたまま空いているところを見ると、少なくとも瞬時の再生力は無い。
攻守共に、こんなデタラメな奴、それだけでも助かる。
「もう一度、行くぞ! 青竜剣技!」
「ハァァァァッッ!!」
「セェェェェッ!」
何も言わなくともリタ、ディヴィヤ共にアスラを再び取り囲むように適切な位置に陣取り、攻撃を仕掛ける。
ギギ……
む?
膝が少し曲がっている。
何をする気だ?
「『飛』ィィ!!」
瞬間、ほんの数十センチ、アスラが跳ぶ。
ゾクリ。
待て……この距離。
俺はまだしも、接近しているリタとディヴィヤは!
「下がれ!!」
「危ないッ!!」
同時に気付いたディヴィヤも叫び、バックステップで少しだけ離れる。
だが、太ももを再度斬りつけようと、既に高く跳んでいたリタは避けようがない。
マズい!!
そして、アスラが着地、その刹那!!
ドォォォォォォォォォォォォォォン!!
至近距離で爆撃を食らう!
「んああッッ!!」
「いやッッ!!」
「ぐあぁぁぁッ!」
俺も含め、3人共、軽く吹っ飛ばされる!
「なに!!」
コンスタンティンが驚いている声がする。
俺の『飛』の弾幕が濃すぎて、コンスタンティンからアスラの少しのジャンプが見えなかったか。見えていたら何がしかのガードを張ってくれていた筈だ。
くっそ……
「ギギ……」
もう一度、今度はもっと深く膝を折り曲げ、そして俺に向かって前傾姿勢を取る!
前傾姿勢だと……?
いや、ターゲットは俺じゃない!!
「コンスタンティン!! 気をつけろ!!」
バッシュゥゥゥ!!
アスラが跳ぶ! 前に!!
「地竜剣技!『岩砕』!!」
アスラと俺の前に巨大な岩塊、魔力のバリアを出現させ、食い止めようと試みる。
ドォォォォォォォォン!!
エルトルドーの無詠唱攻撃を防いだ岩塊を、爆破と共に呆気なく突き破ってくる。当然、その前にいた俺はアスラの肩口辺りにぶつかり、弾き飛ばされる。
ドガッ!
ドォォォォォォンッ!!
「ぐぁぁっ!!」
一瞬で鼻の奥から血の味がし出す。
鼻と口から血が流れ出すのがわかる。
のみならず、同時の爆発で体中が軋む!
あっけなく弾き飛ばされ、宙を舞う俺の目に、コンスタンティンがいた辺りに着地し、爆煙を巻き上げるアスラが目に入る。
ドォォォォォォォォンンン……
大丈夫か、コンスタンティン……
着地と同時に右の拳を振り下ろすアスラ!
緩慢な動作を、先を読む動きで補ってやがる。
だが!
コンスタンティンに向かっていったスピードと、同じ速度、いやもっとか、凄まじい速度で跳ね返るように後ろ向きに飛んで来るアスラ!!
ブゥォォォォォォォォォォォォォンッッ!!
鼻血を垂らしながら仰向けに転がっている俺の上を、元居た場所よりも、もっと遠くまで吹き飛んで行く。
上半身を起こしコンスタンティンを見ると、腕を突き出し、手のひらをアスラに向け、平然と立っている。
「ダーリィィィン~~!! カッコいい~~~!!」
そして、美魔神妻の応援。ゾフィーは本当にコンスタンティンにメロメロみたいだ。
いや、女じゃなくても、思うだろ。
コンスタンティン……カッコいい~~!!
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