194 / 204
最終章 剣聖と5人の超人
凱旋(1)
しおりを挟む「終わった……か?」
「そう……みたいね」
傷だらけのオレストとディヴィヤが辺りを見回す。
遂に《滅導師》ヘルドゥーソは消え去った。
それと同時に闇の波動が消え去り、倒れこむリンリン。そしてリタの闇のオーラも消えてなくなった。
マメがリンリンを抱え、ヴォルドヴァルドと共に歩いてくる。
「回復はワシに任せよ」
そう言いながらサイエンが酒壺から回復の水をかけて回る。
ヒムニヤもヒールを唱えながら、何やらポーションを取り出し、遠くの物陰にいた魔神ゾフィーを呼ぶ。
「お前を呼び出したヘルドゥーソは死んだ。お前、もうすぐ魔界に帰らねばならんであろう。最後にこれをコンスタンティンに飲ませてやれ」
「……ありがとう。ヒムニヤ」
そこかしこで気を取り戻し、ようやく1人、2人と起き出す。
「リタちゃん、今度こそ、これで貸し借りなしぞ?」
「……遅いわよ! でもありがとう、助かったわ」
微笑むリタをまじまじと見つめるサイエン。
「うーむ……真面目にワシの嫁にこんか?」
「どう? ダーリン」
「ああ。魔力回復のポーションだね。ありがとう、ゾフィー」
「ダーリン。私……」
俯き加減に泣きそうな顔をするゾフィー。
だがそんなゾフィーの頬を撫で、コンスタンティンは優しく微笑む。
「わかってるさ。一度、魔界に帰るといい。すぐに僕が君を呼び出す」
「……ダーリン!!」
コンスタンティンに抱き着き、口づけを交わす。
そのまま少しずつ消え去っていくゾフィー。
「ナディヤ、ラディカ!」
サイエンによって治癒されたはずの姉妹を起こすディヴィヤ。
「う……姉さん……」
「……ディヴィヤ! ヘルドゥーソは!?」
目を覚ます2人に力無い微笑みを返すディヴィヤが、
「大丈夫、もういないわ」
そう言うと2人ともホッと力が抜けていくのがわかる。
「サイエン、どうしてヘルドゥーソを裏切ったんだ?」
尻餅をついたまま、両手を後ろに突きながら足を伸ばし、疲れ果てた様子でマッツがサイエンに問い掛ける。
その横に腰を下ろしたサイエンが、
「うむ……はるか昔、ある研究を奴に手伝ってもらっての。今回の神の種に関わる一連の行動はそのお返しをしたまでじゃ……じゃが、この世が破壊されてしまっては元も子もないからの。初めからこうするつもりだったんじゃ」
遠い目をしてそう言うのに、呆れたように返すマッツ。
「なら最初から助けてくれよ」
「無理じゃ。体力無限の理由がわからんでは、普通にワシが手助けしても敵う相手ではない。ランディアで初めてお主に会うた時から『神視』持ちのお主なら、そして神の種を見つけたリディアちゃんなら、ひょっとして解き明かすのでは、と期待しておったのじゃ。お主らにかけたんじゃよ」
「まったく上手いこと言うじいさんだわ……この笛も?」
そう言うと胸元にかけた笛を弄るマッツ。
「そうじゃ。お主とのつながりを切らんためじゃ」
「ふーん。いろいろ先々のこと考えて、大変だねえ」
空を見上げたマッツの横に、ヒムニヤによって気を取り戻したリンリンが座る。
「…………すまぬ、マッツ。リンは……」
何か言おうとするリンリンをマッツが笑いながら制する。
「気にすんな、昔、俺もやられたし、ヒムニヤでさえやられたんだ。あいつの闇の波動はまともに食らったら無理だ」
「そうじゃ。結局、全て上手くいったのじゃ、気にするでない」
「うーむ。何かサイエンに言われると腹が立つが……」
リンリンのすぐ隣にヒムニヤが座る。
「ふふ。だが、マッツとサイエンの言う通り。私も昔、奴の世界に落ちた時、マッツに助け出され、そして許してもらった。お前ももう気にするな」
「ヒミにゃ~~~ん!!」
「こらこら甘えるな。お前もいい歳だろうが」
「歳の事は言いっこなしじゃ」
そう言いながら、ヒムニヤに頬を擦り付けて懐くリンリン。そのリンリンの元に小さな竜の姿に戻ったマメがやって来る。
「おお、マメ! お前にもたくさん助けてもらった。本当にありがとうな!」
―
「皆、もう少し休んだら行こうか」
皆がようやく起きだし、1時間ほどその場で休んだ後、不意にマッツが言い出した。
「行く? どこに?」
オレストが怪訝そうに返す。
「あそこにある、ヘルドゥーソの黒い城だ。神の種を取りに行く」
「ああ、なるほど。そういや、それがお前達の旅の目的だもんな」
「そういうことだ」
「ならワシが案内しようか」
立ち上がったサイエンが口を挟む。
「わかるのか。じゃあ頼む」
全員立ち上がり、数珠繋ぎになると、フワッと宙に浮き、あっという間に空から城の7階、つまり最上階から侵入、いきなり目的地にたどり着く一行。
そこは薄暗い広間。
祭壇のようなものが用意され、その上で、いくつかのロウソクの炎で照らされユラユラと揺らめく3つの神の種。
「おお。懐かしいな! あれ、『タカ』の神の種だな」
リディアの肩を抱き、かつて『タカ』のモンスター襲撃時にリディアが持ってきたバケツを指差す。
「あれは俺の神の種ではないかッ!」
ヴォルドヴァルドが持っていた極彩色の水筒もその横に鎮座している。
祭壇の手前まで歩いた所でサイエンが口を開く。
「なあマッツ、物は相談だが」
「ダメだ」
「何じゃまだ何も言うとらんのに……にべもない」
ぴしゃりと言い放つマッツに困惑顔のサイエン。
「お前の言いたい事はわかっている。神の種が欲しいんだろ? まあ俺は別に構わない。だが、このミッションはディミトリアス王から直接受けたもので、俺の判断でお前にやるやらないは決められない」
「ふむ。道理じゃのう。なら王が良いといえば良いのじゃな?」
「それはそうだ」
「なら話は早い、さっさとこれらを回収してお主の国へ参ろう」
サイエンがそう言うと、フフッと笑うマッツ。
「そうだな。但し、あちこち寄り道するから覚悟しろよ?」
「?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる