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最終章 剣聖と5人の超人
凱旋(5)
しおりを挟む夕刻になり、酒宴が始まった。
―
ディミトリアス王、テオドール王、ヴィハーン皇帝とその奥様4人、エーヴェルト王、オレストがテーブルを囲み、そこに俺もいた。
オレストがここにいるのは、きっとエーヴェルトが若年と侮られない為だろう。
この面子に限ってそんな事はしないだろうが。
「どうだ、旅の途中で……エルナとは?」
はやくも酔っ払い気味のビルマークの王、テオドールが話し掛けてくる。
「エルナとはとは?」
「『とはとは』じゃない。すっとぼけやがって。お前の女好きはわかってるんだぞ」
「ふふ。初見のテオドールにもバレてやがるのか。全くお前という奴は」
ディミトリアス王が嬉しそうにニヤケ面しながら肩を抱いてくる。
「ちょっと何を言ってるかわかりません」
「という事は我が国の『ケルベロス』を更生させてくれたのも、実はそれが目的……」
「そんなわけ、ないでし『その通りです。さすが我が国王』」
「…………」
オレストのクソッタレめ。
「うちの兵士達も皆、美人に囲まれるお前を羨んでいたな……だが、お前は実際に英雄の資質があるからな」
さすが、ヴィハーン皇帝はわかっていらっしゃる!
「そうなんですよ。こいつは無類の女好きだが、いっちょまえにやる事はやる。まあ、だからこその女好きなんだろうが」
「何を仰っているか私にはさっぱり」
「結局、お前の恋人は誰なんだ? あの濃い茶色の髪の子か?」
「あの幼い金髪の子じゃないのか?」
「アイラを是非娶って欲しいのだがな。だが儂は、本当のところはあの美しい超人ではないかと思っているのだが。彼女を助ける為だったらしいが、皆の前で恋人だと言ったんだろう?」
「私はディヴィヤではないかと……」
「…………しばらく席を外します。勝手に盛り上がってて下さい」
―
グラスを持って少し移動すると、ユリア、マルガレータ、カイ、シモンがいるテーブルを見つける。
「お主が持っていた魔法陣のロジックからリバースエンジニアリングし、このような魔法バリアを編み出したのだが、どうかな?」
何やら幾何学模様の書かれた髪を広げ、カイと熱心に話すシモン。
「これは中々良いようで。だが、この2層目と4層目を破れば、あとは同じ理屈ですな」
はぁ~~~やれやれ。
飲みの席で何やってんだか。
「やあ、マルガレータ。ユリアの社長ぶりはどう?」
「うまくやってるわ、私の旦那もサポートしてるのよ」
「そうか。そりゃ心強いな。元々、資産家なんだよな……ユリア。将来、ランディアも観光で人が呼べるようにしたいと考えているんだ。その時が来たら協力してくれよ」
「そうだね。お前ならやるだろうね……勿論だ。お前には本当に感謝しているんだ。私に出来る事があったら何でも協力するよ」
―
ラーヒズヤ皇太子とその夫人ラシ、ドゥルーブ皇子とその夫人マーヒ、皇女アイラ、ドラフキープヴィからレイティス、ビルマークのマルクス王子、バルバラ王女そしてヘンリックがいるテーブルに移動してきた。
「おお、剣聖! そこの若い王女様がお前のとこのパーティのヘンリックと結婚するんだそうだ」
「ええぇ!?」
見るとヘンリックの腕に気持ち良さそうに頬を擦り付けているバルバラがいた。
「まだ早いんじゃないの?」
そう言うと、バルバラはヘンリックから離れようともせず、厳しい目を俺に向ける。
「何を言うか。お前が遅すぎるのじゃ! なんじゃ25にもなって!」
「はあ……この前、26になったけど」
当の兄貴のマルクスが口を挟む。
「いいじゃないか。若い結婚も。バルバラもヘンリックも共に容姿端麗。可愛い子が生まれるだろうな」
「嫌だわ、兄さん。子供なんてまだ早いわ」
そう言いながら頬を染めるバルバラ。
「お前、王女を娶るのか?」
真面目そうな顔をしたラーヒズヤの問いに、
「いや、俺には何のことやら、さっぱり」
クールな表情で返すヘンリック。
その側にいたレイティスに声を掛ける。
「どうだ、レイティス、久々のランディアは?」
「いやぁ、色々と懐かしいな」
「ヴィハーン皇帝達は10日もすれば帰るだろうが、お前はもっといろよ」
「そうだな。差し当たり、『イヌ』には寄りたいしな」
「うんうん。ゆっくりしていけよ」
そんな事を話していると、アイラが遠くを見ながら俺に話し掛けてきた。
「ねぇ、マッツさん」
「ん?」
「あそこでキビキビと指示を出している方は……その……」
ん?
言われて、その方を見る。
……ハンスだ。
さては、俺が受け入れ準備を頼んだ行きがかりで、ディミトリアス王に色々頼まれたな。
「あれはハンス・シュタールと言って、ヘンリックの兄貴で俺の幼馴染なんだ。何でも出来る凄い奴だ」
「ハンス……さま」
おっと。
まあ、一目惚れするよな。
あいつは俺なんかより、よっぽどおススメだぜ。
―
クラウス、ラディカがサシで飲んでいたので、座ってみる。
「なんだ、2人で飲んでるのか。珍しい組み合わせだな?」
「そう? ヘルドゥーソ戦の前くらいから、結構、話してるのよ」
「そうなのか。どうだい、ビルマーク、ランディアと来てみて。田舎だろ?」
「まあ……そうね。でも、のどかで良いところだわ」
そう言いながら、ニコリと笑う。元々、色気を振り撒くラディカだが、酒のせいで頰が赤くなり、更に艶かしい。
「そう言って貰えると嬉しいな。俺はこれからここの商業も発展させようと思ってるんだ。2人ともまだまだ力を貸してくれよ」
「へぇ~凄いですね、隊長は。もう次の事、考えてるんですね」
「まあ、この旅が異常だっただけで、ランディアは基本的に平和だからな。ラディカ、これからも宜しく頼むぞ?」
―
リタ、イシャン、シータがいるテーブルへと移る。
「シータ! 来てたんだな。すまん。気付かなかったよ」
ペザの城でラディカと戦った、メイドのシータだ。
すぐにハァハァ言う、可愛らしい子だ。
「いいんですよ! 直前になってイシャン様にお声がけ頂いたのでついて来ちゃいました」
「で、そのイシャンだが……」
イシャンは俺が来たことにさえ気づいていない。
頬杖を突きながら、リタのみを見て話をしている。
シータが小声で俺にコソッと話す。
「イシャン様はリタ様とラブラブですよ? 邪魔しちゃいけません」
「……本当だな。じゃ他に移るよ。お前も退屈だったらいろんなとこに行けよ?」
だが、ニコリと微笑むシータ。
「私はイシャン様の護衛ですから」
―
サイエン、ヒムニヤ、ヴォルドヴァルド、リンリンの4人の超人達、そしてコンスタンティンとゾフィーが1つのテーブルに収まっている。
「凄い席だなここは……」
そこで、コンスタンティンの横にいるゾフィーとは反対側の空いている椅子の背もたれに派手な赤いローブがかけてあるのを見つける。
「それ、エッカルトのだな?」
「うん。洞窟で拾っておいたのさ。今宵の宴は出たいだろうと思ってね。持ってきたんだ」
「そうか。エッカルト、ちょっと邪魔するぜ?」
あいつが嫌そうな顔するのを思い浮かべて、フフッと笑ってしまう。その椅子に座り、超人達に話し掛ける。
「お前達、4人集まった事ってあるのか?」
「いや、ヘルドゥーソ戦が初めてだな」
ヒムニヤが即答するのに、ヴォルドヴァルドが相槌を打つ。
「うむ。そうだな」
「それぞれは全員、面識あるがのう」
リンリンがサイエンに目を向けてそう言うが、そのサイエン、何やらリタの方を見ていた。
「のうマッツ。リタちゃんはあの金髪の少年とその……」
プッ。
「なんだ、お前、マジだったのか? そうだな。いい雰囲気だよ。本人達から詳しい事は聞いてないが」
そう言うと、グビッと手に持つ酒を口にするサイエン。
「なんじゃ、つまらん」
そんなサイエンを見て前から思っていた疑問をぶつけてみる。
「前にアデリナからも聞かれてたけどさ……お前、それだけ女好きなのに、どうしてヒムニヤには食指が動かないの?」
「……」
やはりしかめ面になるサイエン。
「おや、またダンマリか。そろそろ吐けよ」
すると、ヒムニヤがクリントートでの時と同じように、またクスクス笑いだす。可愛いなあ~~~。
それを見たリンリンがニヤリ笑いを浮かべながら、
「此奴はな、昔、ヒミにゃんにちょっかいかけて大森林からランディアまで吹き飛ばされ、50年ほど気を失っていたのじゃ」
「あ―――!! 言いおったな、貴様!」
「ヒヒヒ」
おおぅ……
「フン……全く貴重な時間を奪いよって。ちょいとお尻を撫でただけだというに……」
「そ、そうか……聞いて悪かったな……」
ヒムニヤ、怖い。
ふと真剣な顔つきになるサイエン。
「で、タネの件じゃが……」
「安心しろ。言ってはおいた。後は王の判断だ」
「うむ。すまぬのう」
「言っておくが、王を精神操作とかするなよ?」
「せんわい。そんな事をすれば、お主を敵に回してしまう」
―
この広い酒宴の席で奇跡のテーブルを発見!
名付けて、美女卓!
リディア、エルナ、ディヴィヤ、ナディヤ、そしてアデリナがいて盛り上がっていた。
さっきの超人テーブルも凄かったが、違う意味でこのテーブルも凄いな。全員、可愛い! いくらでもいれるぜ!
「マッツ、元気そうで何よりです。心配していました」
「エルナの方こそだよ。大森林も危険だからな。無事にまた会えて嬉しいよ」
「城の近くまで、ヒムニヤ様とヴォルドヴァルドさんに送って貰えましたから」
「あーなるほど。そりゃ頼もしいな」
そこで果実酒を一口、口に運ぶエルナが再び俺に視線を移す。
「貴方は、これからどうするのです?」
「よくぞ聞いてくれた! ちょっと休んだら、ランディアの商業発展の為に色々動こうと思うんだ」
「…………」
その綺麗な眼差しで、ジッと俺を見つめるエルナ。
「ん?」
「それはご立派ですが……私が聞いているのはそんなことではありませんよ?」
「へ?」
「ここにいる可愛い娘達をどうするのです?」
「…………」
「まあ、私が口を挟むことではない、という事はわかっているのですが、少なくとも師弟として関わった以上、私からのお願いとしては、リディアは必ず幸せにしてあげて下さいね、というだけです」
「あの……エルナ、酔ってる?」
「いいえ、全然。わかりましたか!?」
「あうっ。わかりました!」
「もう、師匠!」
最後に顔中真っ赤になったリディアがそう言うのが、とても可愛かった。
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