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最終章 剣聖と5人の超人
剣聖と4人の奥さん(2)
しおりを挟むリディアの命令に従い、次はアデリナにプロポーズしに行った。
―――
アデリナの部屋。
『アデリナ……』
『うん』
『あの……えと……』
『落ち着いて?』
『……うん。フゥ……』
深呼吸、深呼吸……
『アデリナ。大好きだ。愛してる。俺と結婚してくれ』
『……』
『ずっと一緒にいてくれ。じゃないと……』
『じゃないと?』
『……えと……イヤだ!』
『プッ!』
しまった。いい言葉が思い浮かばず、子供みたいになっちまった。う―――……
ひとしきり笑った後、アデリナがにこやかな顔で、
『ありがと、マッツ! もちろんだよ! そもそも私の方から押しかけたのに、断るわけ無いじゃん!』
ホッ……
まずは1つ、クリア。
だが、次が問題だ。
『よかった。仲良くやっていきたいな……でさ』
『うん!』
何やらとても興味津々な顔をして俺の顔を覗き込んでくる。
『あ……れ? どうして、そんなに目がキラキラしてるの?』
『え? だって、今からアスガルドでの私の質問に答えてくれるんでしょ?』
へ?
……
「私が好きなのは、マッツだけだよ? でも、マッツはそうじゃないよね? 知ってるよ。何人いるの? 私は何番目位? マッツの恋人として知っとかないと!」
「ア……アデリナは、どどどう、思う?」
結構、最低なセリフだが、苦し紛れに言ってみた。
「うーん。じゃあ私の予想! というか、希望ね!」
答えるのか……
凄まじいな。
「1番、リディア! 2番、私! 3番、ヒムニヤさん! 4番、リタさん! 5番、エルナさん! 6番、ユリアさん! 7番、シータさん! 8番、アイ……」
「ちょちょちょ! 待て待て!!」
……
あれか……。
結局、うやむやにしたんだったな。
『う……コホン。うん、そうだ。ごめんな、アデリナ』
『いいから早く!』
『そ、そんなにがっつかれると困るんだが……えと、あの時のアデリナの予想は3番目までは正解。4番目以降はそういう感情じゃなく、仲間として大切に思っている』
『おお! やるね、私!』
『でさ、えーと……』
『フフフ……当てて見せようか。ディヴィヤじゃろ!?』
なんだかリンリンのような口ぶりに変わり、見事に言い当てるアデリナ。
『う! ……うん』
『正解!! ご褒美!』
『え? ご褒美?』
『うん。早く』
そう言って目を閉じるアデリナ。
何だ、この可愛いの。
目一杯抱きしめて、キスをした。
―――
翌日の夜はディヴィヤにプロポーズ。
―――
ディヴィヤの部屋。
『ど、どうしたの? こんな遅くに』
ちょっと頬を赤くしながら、素っ気なく言うディヴィヤ。
『あのさ……ディヴィヤ!』
『う……はいッ!』
察してくれているのか、俺より緊張している。
そのおかげで俺の緊張が少し和らぐ。
『えと、ディヴィヤ! 俺、ディヴィヤが大好きだ。俺とずっと一緒にいて欲しい。けけけけっこんしてくれないか……』
最後、思いっきりどもってしまう。
『あ……あぅぅ……けっこん、なんて……私……』
『……だめ……? いや、でも俺は諦めないぞ!』
『ち、違うの! 嫌なんかじゃない! とても嬉しいの!』
『……?』
『でも、私……暗殺者だったのよ? マッツはずっと光の中を歩いて来て、私はずっと暗闇を生きてきた』
『……』
『悩んでたの。マッツがデートとか誘ってくれる度に! 今更、私なんかが幸せになるだなんて、許されるのかしらって』
『……』
『こんなの全部、夢なんじゃないの? 全部が嘘で、最高の幸せを感じた時に目覚めるんじゃないの? そしてまた人殺しを……』
ガバッ!
長身のディヴィヤを強く抱きしめる。
この子はかなり心を痛めている。暗殺者時代はそれが表に出ないよう封印し、相手だけでなく、自分も殺していたんだ。
そしてこれはディヴィヤだけではない。
ラディカ、ナディヤにも共通している。
『マッツゥゥ……怖いよ……』
顔を埋めて泣くディヴィヤ。
『ディヴィヤ。俺もお前も、現実にここにいる。思い出せ、アスガルドのヨトゥム山で俺と会った時の事を。お前達の運命はあそこで変わったんだ』
『う……うぅ……』
『夢だって? もしこれがお前が見ている夢だったとしても……』
少し体を離し、ディヴィヤを真っ直ぐに見つめる。
『安心しろ! 俺に任せとけ! もう一度、俺が迎えに行ってやる!』
『ううぅぅぅ……マッツゥ……わたしぃ……』
今度はディヴィヤの方から抱き着いてきた。
その頭を優しく撫でてやる。
『どこにも行かないでね……?』
『どこにも行かないよ。愛してるよ』
『あい……し……』
こういった言葉の類に抵抗があるのかもしれない。
まだ自分が幸せになってはいけないというストッパーを無意識にかけている感じだ。
これは時間がかかるだろう。
一緒に頑張って行こうな?
『ディヴィヤ。俺、もう一つ、打ち明けないといけない事がある』
『……なに?』
『あの……物凄く言いにくいんだけど……他にも結婚したい女性がいる……んです』
『……知ってるけど?』
『へ? ああ、うん。でもその……許可を得ないと……ですね』
『一応、聞くわ。誰?』
真顔になるディヴィヤ。
とても綺麗だ。
『えと、リディア……』
『うん』
『アデリナ……』
『うん』
『ヒムニヤ……』
『うん』
『以上……』
『わかったわ。うまくやれると思う』
へ? そんなあっさり!
『私を救ってくれた貴方の為に私、頑張るわ!』
満面の笑みを浮かべるディヴィヤ。
ぐっは……美しい……
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