神の種《レイズアレイク》 〜 剣聖と5人の超人 〜

南祥太郎

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最終章 剣聖と5人の超人

剣聖と4人の奥さん(1)

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 あれから1年が経った ―――


 あの時集まっていた連中は無論、もうここにはいない。


 特にテンさまやサイエンに言われた訳ではないが、各国の王族、皇族達は、何となくあの場で見た事は口外しないでおこう、と約束し合い、帰って行った。


 コンスタンティンとゾフィーは『タカ』で式を挙げ、言葉通り、今は『百竜の滝』に住んでいるようだ。


 ヴォルドヴァルドはヘンリックを連れて、修羅大陸の方に移っていった。
 ヘンリックは守備隊を辞めた訳ではないが、俺も修行に行った地だ。強くなって帰ってくるだろうと思い、許可してやった。
 戦闘狂同士、上手くやるだろう。


 ユリア達は諸島で順調に経営をしているらしく、あの集まりのおかげでコネが出来、ドラフジャクド、アスガルドとの貿易も出来るようになった、と喜びの手紙を送ってきていた。


 リタはイシャンと一緒に、半年前にドラフジャクドに向かった。
 イシャンはヴィハーン皇帝達が帰った後もシータとここに残り、リタを口説き続け、ようやく首を縦に振らせた。
 彼女を失うのは正直、辛かったが、彼女の人生を邪魔する事は出来ない。最後はちゃんと快く送り出してやった。


 トーケル爺ちゃん達は一旦、ラシカ村に寄り、娘ダニエラのご主人に会ってから、諸島に帰って行った。
 もちろん、ダニエラを残して、だ。


 ナディヤは相変わらず俺の事を『マッツ様』と様付けで呼び、俺の家に住み込んでメイドのような事をしてくれている。何故かリンリンも俺の家に住んでいるのだが。


 そして ―――

 俺は『タカ』に戻り、ランディア全体の商業発展の計画を練りながら、周囲の開拓に精を出していた。

 アデリナの生家があるラシカ村とも交通をつなげる準備をし、既に工事は着工、あと半年もすれば簡単に往き来できるようになるだろう。


 更なる開拓を目指し、巡視に出るタイミングで、ナース姿のラディカと出会う。

「よう、ラディカ! クラウスとの新生活はどうだ?」
「怖いわ。朝、目が覚めたらまたアスガルドのスラムにいるんじゃないかって……今でもふと思うの。それ位、幸せよ?」

 ディヴィヤも同じ事を言っていたな。

「そうか。そりゃ良かった。仲良くしろよ?」

 クラウスとラディカは結婚して退役し、『タカ』の近くで病院を開業した。

 退役したといっても俺たちの絆は健在だ。

 だがあの艶かしいラディカがナース姿というのは……やべぇな。健康でも行きたくなるぞ。




「昔、初めてサイエンと出会った時も、こんないいお天気の日の巡視中、だったわね」

 リディアが空を見上げて、感傷的に言う。

「そうだったな。あいつ、元気でやってるかな」
「ツィさまに手を出して、魔界まで吹き飛ばされてたりして」

 アデリナが口元を上げながら、怖い事を言う。
 だが、ありそうな話だ。

 今日の巡視は、リディア、アデリナ、ディヴィヤ、ヴィンセンツ、クリストフ、そして俺の6人。


「しかし、隊長も凄えな」
「何が?」

 ヴィン達には俺が死後、神界に行くとかそういった事は話していない筈だが。

「何がって……ハーレム過ぎるだろうよ! いや、わかるよ? 隊長に魅力があるって事はわかる。俺も大好きだ。だけど、それにしたって……なあ? クリストフ」
「いや、隊長は素晴らしい方です。今でも少ないくらいですよ」

 その返事を聞いてダメだこりゃ、と肩を竦めるヴィン。クリストフは俺が帰ってきた後も、変わらずずっと俺に懐いてくれている。

「ハーレムとか、汚い言葉を使わないでくれるかな? 女性達に失礼だろう!」

 少し胸を張って、わざといかめしく言ってやる。

「全く……ハンスの野郎も結婚が決まったようなもんだしな。どっかにいい女、落ちてねぇかなぁ」


 そう。ヴィハーン皇帝が是非俺の嫁に、と言ってくれていた皇女アイラはハンスに一目惚れしてしまったのだ。

 勇気を出してアイラはハンスに告白したのだが、自分はランディアの兵士であり、まだやる事がある、ここから離れるつもりは無い、と一度は振られたのだ。

 だが、一度は国に帰ったアイラの方から、なんとランディアに嫁に来る、という話になったのだ。

 さすがのハンスもこれには参ったらしく、

『マッツ、俺、どうなるのかな。どうしたらいいんだ?』

 あいつの弱音など初めて聞いたもんだ。

 まあ、美男美女、お揃いだわ。
 アイラもちょっと気弱だが、いい娘だ。

『どうなるって……折角、アイラから来てくれるんだ。結婚しちまえ』
『またそんな……お前の性格が羨ましいよ』

 だが、結局、まずはお友達から……と腹を括ったらしい。顔に似合わず、意外に奥手な奴だ。


 そして俺は……

 神の種レイズアレイクの一件が片付き、長い旅から帰ってきてからの色んな雑務をこなし、落ち着いてから、改めてアスガルドでのプロポーズの答えをリディアから聞いた。


 ―――

 リディアの部屋。

『えと……うん……私でよければ』

 シンプルだが、最高の照れ顔と共に、最高の返事だ。

『短命だそうだけど、私より先に死なないでね?』
『大丈夫だろ? テンさまも普通に生きるって言ってたし』

 そう言うと俺の胸に飛び込んできて、

『約束よ? 私より先に死んだら殺すわよ?』

 物騒な事を言われる。
 いいとも。精々、長生きするさ!

 リディアと一緒にいれるのに、早死にするなんて勿体ない事はしないさ!

 そう。『達』。
 これについて、どうしても言っておかなければならない。

『……あの……さ』
『なに?』

 スッ……と真面目な顔になるリディア。
 でも俺からは離れなかった。

『あの……えっと……』

 とても言いづらい。そして勘のいいリディアは俺が何を言おうとしているか、とっくに気付いている筈だ。

 だが助け舟は出ない。
 ジッと俺の顔を下から見上げ、俺の口から言葉が出るのを待っている。

 腹をくくらねばならない。

『あの、俺、リディアが好きだ。とても大切だ……でも同じくらい大切な女性がいるんだ』
『……うん』

 小さく頷くリディア。

『誰?』

 ……見当は付いている筈だ。
 それでも俺に言わせるんだ。このドSめ!

 しかも超キュートな上目遣いと、悲しげに眉を寄せ、同情心を煽りながら。

 もはや、プロフェッショナルだ。

『アデリナ……』
『アデリナ……』

 悲しそうな顔で復唱する。
 しばらくして、

『アデリナとならうまくやっていけるわ!』

 パァーッと明るい顔になるリディア。

 くそッ!くそッ!
 アデリナだけじゃないとわかってて言ってるんだ。

 くそッ! でもそんな意地悪な君が好きだ! リディア!

『あの……まだいるんだ』
『まだ……いるの?』

 再び真面目な顔になり、下から覗き込んでくる。

『誰……?』

 うぅ……

『ディヴィヤ……』
『ディヴィヤ……』

 またもや悲しそうな顔で復唱する。
 しばらくして、

『うん! ディヴィヤとも、家族でうまくやっていけるわ!』

 パァーッと明るい顔になるリディア。

 あぁ……テンさま……ヘルプ……
 勇気を……下さいッ!

『あの……あと1人……いるんだ』
『あと1人……いるの?』

 三度、真面目な顔になり、下から覗き込んでくる。

『誰……?』

 果てしなく長い時間に感じる。

『ヒムニヤ……』
『ヒムニヤ……さん』

 不意にガクッと肩を落とすリディア。
 慌てて、体を抑える。

『ごめん、リディア。大丈夫?』
『大丈夫、大丈夫。ちょっと安心したら……力がぬけちゃった』

 笑いながら顔を上げる。

『安心……え?』
『師匠だったらどうしようって……ずっと思ってたの。師匠と一緒に住めるという点では嬉しいんだけど……あんたと師匠がくっついてはいけないというか』

 なんでダメなんだよ!

 でも、なんだ。
 これは了承を得た、という事でいいのだろうか。

『ねぇ、マッツ。他の皆はその……何て言ってた?』
『え? まだ何も言ってないよ?』
『え?』

 キョトンとするリディア。

『あ……っきれた。なのに私に打ち明けたの? 全員からフラれたら言い損じゃない』
『おお……成る程……いや、でもリディアに言わないと、皆には言えないよ。もしリディアが嫌だって言うなら、そもそも言わないしさ』
『…………』

 そうだ。
 そういう事なんだ。

『……なんて人なの。4人も奥さん欲しがるようなどうしようもない奴なのに……何かとてもステキな事言われてる感じがする』

 何だ、その感想。

『じゃあ、聞いて来なよ。奥さん4人いるんだけどいい? って』
『なんかトゲあるな……』
『フンッ! トゲだらけよ! バカッ!』
『う……わかったよ』
『バカバカバカマッツ! 大好きよ! もう!』

 ―――


 超可愛いかった。

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