【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

文字の大きさ
62 / 154
砂漠の王太子

062.囚われのロゼルタ(前)

しおりを挟む
 ロトス王城 ――

 作戦中会議室。
 本来は国内で発生した、小規模のテロやクーデター、犯罪など軍隊が動くべき案件の会議をするべき場所である。

 だが今、この部屋はマッカの個人的な所有物となっていた。つまり彼が見そめた女性と愉しむためだけの部屋、だ。

 テーブルや本棚など、なものは全て取っ払われており、代わりに彼の巨体が寝ても余りある大きさのベッドが置かれてある。その重さを支える為、強度の方も、地上でもっとも硬いと言われるガルジアの樹木に更に硬度を高める魔法がかけられたものが使われていた。

 そのベッドで今目覚めた美しい女性がいる。

 ロゼルタだ。

(ここは?)

 天井があり、壁がある事はすぐにわかった。つまりどこかの部屋の中、という事だ。

 上半身を起こし、キョロキョロと目だけを動かして部屋の中を見回す。様々な手枷、足枷の器具があり、磔にする為の柱やその他の形容し難い拷問器具が並ぶ。

「はあ? なんだこりゃ……」

 あまりの光景に思わず口から溢れてしまう。周りに誰もいない事を確認してそろりとベッドから降り、着衣の様子を見る。

(まだ何も……されてねーようだな)

 ひとまずほっとするといつもの様に姿勢良く立ち、腕を組んだ。

 この様な部屋で目覚めたという事は、彼女をここに連れてきた人物がこれから彼女をどうしようと思っているかなど、すぐに見当が付こうというものだった。

(ったく、ほんと気っっ色りい)

 この時、窓の外を見ていれば、その高さからここが王城であることを推測できたかも知れない。が、彼女は今、別の事を考えていた。

 最後に記憶が途切れる直前、つまりあのアーチの下で少しだけ見えた襲撃者の顔に彼女は見覚えがあった。

(あれはオーク、いやハーフオークだ。だがマッカじゃねー)
(あれは確か……名前は忘れたがマッカの兄弟達)

 まだ考えも纏まらず、部屋の中の不気味な品物を見るでもなく見ていた時、扉がガチャリと開いた。


 ◆◇

 クヌムとヨアヒムが声を揃えて、

『見たことのないほど美しい女を捕らえた』
『十分メイの代わりになると思うがどうする』
『兄貴が興味ないなら俺達がいただくが』

 などというのでマッカは急いで中会議室へと向かっていた。

 もちろん誇張しているだろうと想像していた。マッカの知る限り、ここ数十年で今の王女メイを上回る美貌の持ち主など見た事がない。

(まあでも折角兄弟達が捕えてくれたんだ。味わわねばなるまい)

 それほど期待せずに扉を開け、すぐに自分の考えが間違っていた事を思い知った。

 今では彼の個人的な欲望を満たすだけの部屋となっているその異常な空間。この中に放り込まれた全ての女性は皆震え、怯え、涙を浮かべていたものだが、今、目の前の女性は頭がおかしいのかと疑うほど一切の怯えを見せていない。

 部屋の中程で少し足を開いて美しく立つロゼルタと目が合った。

「う、うおっ……」

 そう呻いてマッカは数秒固まった。

「どうだ兄貴。嘘は吐いてなかったろ?」
「こんな綺麗な女、久々に見たぜ」

 それに答えることをせず、よろよろとロゼルタへと近付く。

(チッ。こんな状況でこいつと出会っちまうとは……どうする?)

 鋭い目付きでマッカを睨み、彼女は考えを巡らせる。

 やがてマッカの口からは涎がぽたりぽたりと垂れだした。

「クヌム、ヨアヒム……よく、よくやった。こいつあ、メイに勝るとも劣らねえ」
「だろ?」
「こいつで我慢してくれよ。メイは継続して探しているからさ」

 ウンウンと頷きながら、さらに一歩、二歩とロゼルタに近付き、

「なんて、綺麗な女だ……ヒ……ヒ、一日中、いや生涯、嬲り尽くしてやる」

 少し上向きの鼻の穴を更に広げる。背中を丸め、少しでもロゼルタの顔に近付くようにした。

「フ、フフッ。これからお前は一生俺の奴隷だ。怖いか?」
「は? 寝言言ってんじゃねー」
「おおお……俺に対してここまで強気な女はいなかったな。これは素晴らしい拾い物だ」
「チッ。豚クセーツラ、近付けんじゃねーぞ」

 その言葉にマッカだけではなく、クヌム、ヨアヒムまでもが息を呑んだ。

「お前、俺が誰だか分かってないらしいな」

 ギラリと殺気を孕む目付きに変わる。
 それに対してロゼルタはフフンと鼻で笑って応える。

「知ってるぜ。マッカだろ。女の尻ばかり追いかけている」

 一瞬マッカの殺気が膨れ上がったものの、すぐにそれは消え、代わりに大きな笑い声が部屋に響き渡った。

「そうかい。仰る通りだ。お前も穴だらけにしてやる」

 言い様、マッカがロゼルタに抱き着いた。

「ん? ……あれ?」

 だがその腕の中にロゼルタはいない。
 クヌムが叫ぶ。

「兄貴、左!」

 マッカがそちらを見る間も無く、ザンッと脇腹に短剣が突き刺さる。
「あ?」マッカがその傷を確認する間もなく、ロゼルタの姿は消え、今度は反対側からマッカの側頭部を狙った一撃を放つ。
 だがそれは上げられた右腕に刺さり、致命の一撃にはならなかった。

「ウッ」

 ロゼルタの顔色が変わる。短剣が引き抜けないのだ。

「チッ。無駄な筋肉つけやがって」

 肉に埋もれた短剣を諦めて距離を取った。

「お前、ただもんじゃないな。女でそれ程の動きが出来る者などこの国にはいねえ」
「兄貴!」
「す、すまねえ。まさかこれほどの手練とは思わず、装備とかそのまんまにしちまった」
「気にするな。大丈夫だ、これくれえ」

 狼狽えるクヌムとヨアヒムの2人を制すると、ロゼルタの方へと向き直り、ニタリと笑う。

「こんな狭い部屋の中でいつまでもヒラヒラと逃げられるもんじゃねえ。お前のその綺麗な身体に俺のをブチ込むまでの余興だな。さ、せいぜい頑張って俺から逃げてみろ」

 己の力に絶対の自信を持つマッカに対してロゼルタの額に癇筋が浮かぶ。

「はあ? 逃げるだあ?」

 刹那、部屋中に凄まじいロゼルタの霊気が渦を巻く。その赤い霊気は血飛沫のように彼女の周囲を意思があるかのように周り、踊る。

「ナニモンだてめえ……まさか、魔族か?」

 真紅の霊気が彼女を覆ったほんの一瞬のうちにロゼルタの体は彼女本来のものへと変わった。

「ナメんじゃねーぞ豚野郎。30年前の恨み、今こそ晴らしてやる」
「30年前、だと?」

 黒と赤のドレス、雪の様な白髪、王女のような気品を醸し出す吸血鬼の女王ヴァンパイアクイーン、ロゼルタ本来の姿が呆気に取られる彼らの目の前に現れる。

「き……あ? てめえ見たことが……まさかメルタノのロゼルタか?」
「テメーをぶち殺す為に地獄から戻ってきたぜ」
「バカな。てめえはこの俺が真っ二つに……」

 マッカ、ヨアヒム、クヌムの3人はそれ以上声も出せず、硬直してしまった。

 テスラに魔族の交信を使うか悩んだロゼルタだったが、

(ここがどこだかわからねー。あいつを呼んだところで、か……)

 と断念する。

 つまり自分1人でやるしかない。相手が驚愕している今がチャンスと残像が残るほどのスピードでマッカの背後に周ると、ダズにした様に喉元へと牙を突き刺した。

 が、そこはさすがに英雄パーティのナンバー2、いつまでもただ突っ立ってはいない。相手が吸血鬼の女王であれば体液を入れられるといかに自分であっても眷属化は免れないとすぐにロゼルタの頭を掴み、グルンと前へと背負い投げた。

 凄まじい音と共に床に打ち付けられる。痛みと衝撃で顔が歪むがすぐさま覆い被さろうとするマッカを紙一重で避け、距離を取った。

 ゆっくりと膝を立て、ロゼルタの方へと振り向き、驚愕の表情から、やがて不遜な喜びの表情へと変わる。

「ク、ククク……不思議な事があるもんだ。真っ二つにした奴が生き返るなんてな」

 立ち上がり、体を震わせた。

「あの時、貴様を見てリドだけでなく、俺も滾ったんだぜ。お前みたいないい女は見たことがなかった」
「ハッ。テメーみてーな豚に褒められても嬉しかねー」
「それだ、その性格。ムッチャクチャにしてやりたいと思ってたんだ。勝気なお前が泣いて慈悲を乞う顔になる……それが見れる事はもうないと思っていたが」

 立ち上がり、フンと力を入れる素振りをすると元々ロゼルタより三回り以上大きかったその体は、更にひと回り大きくなった。

「こんな嬉しい事はねえぜ。とはいえ魔神ロゼルタが相手だ。俺も力を出させて貰う。こいつが、オークチャンピオンの……力だ」

(オーク化、か)

 マッカの瞳は黒を包む深い緑になり、上半身が裸となり、これも濃い緑色の肌になった。黒い霊気の渦が爆発的に発生し、周囲の数々の器具が吹き飛んだ。

 その姿はメルタノ侵略時、ロゼルタを頭から一刀両断、真っ二つにしたあの時のマッカと同じ姿だった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...