【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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砂漠の王太子

063.囚われのロゼルタ(後)

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 マッカがブンと音が鳴るほどの勢いで腕を振る。それだけで風圧がロゼルタを襲う。彼女の背後の壁がミシミシと音を立て、ヒビが入った。
 この部屋はマッカが愉しむ為、他の部屋よりもかなり強度を増して改築されている。それがなければ壁は粉々になっていただろう。

「フン。そんなそよ風じゃああたしは倒せないぜ」
「当然、今のはただの見せ技だ。さ、行くぜ」

 次の瞬間、左の裏拳がロゼルタの顔面に襲い掛かる。ロゼルタはそれを鼻先数ミリで躱すと、左の拳をマッカの右の脇腹にめり込ませる。

「ごえっ」

 魔力が込められたその拳はマッカの強靭な皮膚、そして筋肉をも突き破り、体内へと侵入した。更にその体内で爪を伸ばし、五指が届く範疇にある内臓を盲滅法に切り裂いた。

ででで!」

 そんな叫び声を上げながらも目ではロゼルタを追い、両手でその体を捕捉せんと掴みにかかった。が、その時にはもうロゼルタはマッカの背後にいた。

「ハッ。案外、柔らかい豚肉じゃねーか、マッカ」
「ぐおおおお! ロゼルタァァァ!」

 鬼の形相で振り返り、大きく叫ぶマッカに対してロゼルタは指先を向け、「ブラッドシュート」と唱えた。

 瞬時に彼女の指に血の様に赤い霊気が集まりだし、それらはまるで弾丸のような小さな塊となり、マッカ目掛けて一気に何十発と撃ち放たれた。

「ぐ、がががががががっ」

 体中にロゼルタの魔素の弾を浴び、マッカは穴だらけになる。

「いいザマだぜ、マッカ。これで終わらせてやる」

 続けて両手のひらに霊気を集中させると複雑な紋様がそこに浮かぶ。そのままとどめを刺すべくマッカに飛び込んだ!

 が、実のところ、マッカのダメージは見た目程はなかったのだ。『不死身のマッカ』とも呼ばれる彼はほぼ全てのダメージは受けた次の瞬間から治癒し始める。それはヴァンパイアであるロゼルタをも上回るほどの治癒力だった。

「つ、かまえだぁ」

 口から血を吐きながら目を剥いて笑うマッカの両手はロゼルタのウエストを包み込む様に完全に捉えた。

「さあ、いまからお前を気絶させ、気付いた時には手も足も出ないようにしてやる。あああ綺麗な顔だなあ」

 オークチャンピオンの強烈な腕力と握力は魔神ロゼルタをして内臓が破裂する程の力だった。ロゼルタの口からも血が噴き出す。だが何故かロゼルタはそこで不敵に笑う。

「あん? 苦しくて頭がパーになったか?」
「……ケッ……これで終わらせてやると……言ったはずだぜ、豚野郎」
「なに?」

 紋様が浮かんだままの両手のひらでマッカの両腕を掴む。

「へっ、吸血鬼の女王ヴァンパイアクイーン、ナメてんじゃねーぞ……生命の吸引エナジードレイン!」
「うがあ!」

 あと一息でロゼルタは気を失うと思われたが、何故かマッカは両腕を離し、それどころかそのまま後頭部から倒れ込んでしまった。

「兄貴!」

 クヌムとヨアヒムが初めて見るまさかの事態に戸惑い、叫ぶ。

「クッ……馬鹿力め……だがこれで終わりだ。ズタズタに切り裂いて、やる」

 生命の吸引によって得た生命力と自らの治癒力を合わせ、内臓の破損が一瞬で治癒した。だがその対価としてほぼ全ての魔素を放出した。
 痛みだけが僅かに残る脇腹を抑えながら白目を剥いて仰向けに倒れているマッカに近付く。

 明らかに失神している筈のマッカの体の筋肉が痙攣し、波打ちだすのに気付く。

(なんだ? 生命の吸引エナジードレインでこいつに生命力なんざ殆ど残っていないはず……)
(あたしも殆ど魔素が切れている。これでもまだ回復するというなら今こいつを殺すのは無理か)
(仕方ねー。こいつの血なんざ吸いたくもねーが、眷属にするしかねー)

 一度、クヌム達の方を見てギロリとひと睨みして牽制し、すぐさまマッカの首元へと牙を立てようとした。

 だがその瞬間!

 ロゼルタの牙が折れた。
 いや、正確にはマッカの手刀によって折られてしまった。

「な、なん……」

 驚くロゼルタだが、その彼女の体を今度こそマッカの両腕ががっしりと抱き締めた。

「バ、バカな……なぜ……」

 マッカの様子がおかしい。

 青い頭髪は黒に変わり、長くなり、異様に逆立っている。瞳は相変わらずなく、白目を剥いているところを見ると気は失っているように見えるのだが、上半身全体が明らかに膨張していた。

「なん……」

 背骨が全て折れた音がし、だがそれでも止むことのない怪力の抱擁でロゼルタは口から血を噴出し、そこでプツンと気を失ってしまった。

 しっかりとは聞こえなかったが、最後に耳に入ったのはクヌムとヨアヒムの「兄貴が……」「オークキングに……」という悲鳴だった。


 ◆◇

 それからどれほど時間が経ったのか。

 ヴァンパイア本来の治癒力により、ロゼルタは目覚めた。

 先程目覚めた時と同じ風景という事はまたベッドの上なのだろう。先程と違うのは魔人の姿であることと手足の自由が効かないことだった。マッカによって折られた牙も今は復元している様だ。

 どうやら手足がロープで縛られている。
 少し力を入れてそれを引っ張って見るが、ビクともしない。ならば魔力を込めて本気で、と思うがどうにも力が出ない。魔素が殆ど体内に存在しないのだ。

(こいつあ……あれか、昔リドに縛られた時のロープ……ドーンが磔にされたのも同じ……魔素を吸い出すやつか)

 ふうとひとつ息を吐くと、部屋の中に気配がある事に気付いた。と同時に足元から響く野太い声がした。

「お目覚めかい、女王様」

 それは人化状態に戻ったマッカだった。

 ロゼルタと同じく不死身と言える治癒力でその体は何事もなかったかの様に傷のひとつもなく、『生命の吸引』で吸い取った筈の生命力も元通りになっているようだった。

 ロゼルタは少し頭を上げて足元を見、ハアと溜息をついて諦めた様にバタリとまた天井を見上げた。

「ククク。降参か。ま、こうなっちゃー、お前に出来る事は俺を気持ち良くさせる事だけだからな」
「ハッ。しょうもねー。ほんと、オスってのはクズばっかだな」

 ダンッ!
 その言葉に怒ったのか、それとも楽しんでいるのか、不意にマッカが飛ぶ様にロゼルタの上に跨り、彼女の顔の両横に手を置いてその端正な顔を見下ろした。

 一切の怯えを見せず、冷めた目でマッカを見返すロゼルタの顔をマジマジと見つめてニタリと笑った。

「クッククク。最高、最高だ、お前。本当なら道具で痛めつけたりしてえとこだが、無理だ。もう我慢できねえ」

 ロゼルタの腹の上でどんどんと硬く大きくなっていくそれを前後に擦り付け、マッカは愉悦の表情を浮かべ始めた。

「た、たまんねえ。なんて柔らかい体だ。俺はこれからメルタノの三賢者とヤレる……リドだけじゃねえ、俺も……」

 不意にロゼルタの視線が敵意の無い、穏やかなそれに変わる。それはロゼルタの最後の反撃を成功させるためのものだった。

(魔素が抜けていく今、この状況を切り抜けるにはこいつを眷属にするしかない)

 その為には口元にマッカの首筋を持って来させなくてはならない。いやそこまで来なくても近寄りさえすれば、噛みついて死んでも離れない位の覚悟はあった。

「マッカ」

 それまで黙っていたロゼルタが突然名前を呼ぶ。それは敵意の無い、むしろ穏やかで艶めかしくもある話し方だった。

「な、なんだ?」

 逆に狼狽えたのはマッカの方だった。

「なあ、提案があるんだが」
「言ってみろ」
「ひとつだけ、教えてくれ。そうしたらあたしはお前のやりたいことを全て受け入れてやる。口でやれというならいくらでもナメてやるぜ」
「おおお、おおお!」

 喜びに打ち震えるマッカは天井を向いて雄叫びを上げた。既にロゼルタは魔素抜きの術式が施されているロープで四肢を拘束している。魔族は絶対に自力でこれからは抜け出せないのだ。

「いいだろう、いいだろう。お前の従順な姿も見たい。言ってみろ」
「お前さっき、リドだけじゃなく自分もメルタノの三賢者とヤレるって言ったな。それはハルヴァラの事だろう? 彼女は今、どこで何をしている?」

 ロゼルタの質問が意外だったのか、少し驚いた顔をし、そしてまたニタリといやらしく笑った。

「ほう、そんなことか」

 自らの一物をロゼルタの腹にグイッと押し当てながら、手で彼女の顎をクイッと上げた。

「そうだ。ハルヴァラのことだ。あいつはこの30年、ずっとリドに囚われたまま、これからお前が俺にされる様なことをされ続けているはずだぜ」
「どこに、いるんだ?」

 嫌悪感で顔を引き攣らせながらロゼルタが声を絞り出す。マッカは自らの怒張しきった巨大なそれを、遂にロゼルタの下半身へと手で持っていき、その股間へ当てがった。

「うーん、どうしようかなあ。教えて欲しいか? でもさっき、ひとつだけって言ってたよなあ」
「頼む、教えて、くれ」
「グフフ……たまらんなあ、ロゼルタ」

 その大きな手で彼女のドレスの一部を破く様に剥ぎ取り、露わになった白い乳房を荒々しく揉みしだく。それと同時にロゼルタの秘部への圧力も高めていった。

「ま、待て、マッカ。キス……キスしてくれ」
「うおおお! ロゼルタがあ! 堕ちたぁ!」

 喜び勇んで鼻がくっつくほどの距離まで顔を近づけた。

(今だ!)

 口を開け、一気にマッカの首元へと襲い掛かる。だがそれより一瞬早く、マッカの両手がロゼルタの顔をがっしりと掴む。

 そこでピタリと動きを止め、ロゼルタの顔を見回しながらニタニタと笑った。

「ざぁんねぇん! ククク。残念だったなあ、ロゼルタ。こうされると俺の血を吸う事は出来まい?」
「クッ……ウッ!」

 ロゼルタの最後の抵抗は絶たれた。

「終わりだ、ロゼルタ。これから死ぬまで何百年あるか知らないが、よろしくな」
「この……クソッタレのゲス豚がっ!」

 ズンッ!

 直後、ロゼルタは途轍もない衝撃を受け、体中が仰け反った。






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