【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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永遠なる魂

087.悦ぶリド

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「ん…………」

 激しい足の痛みでロゼルタは目を覚ます。

 辺りは暗闇だった。

「なんだこりゃ……一体ここは……」

 何かぶよぶよとした柔らかい物に背中を預け、地べたに座り込む様な形で気を失っていた様だ。

 暫く頭を巡らし、ぼやけていた記憶の糸を辿る。
 やがて両足を切断され、ロン=ドゥの黒い手に捕まり、食われた事を思い出した。

 直前に見たノルトの悲痛な顔が鮮明に思い出される。

「へっ。ま、何にせよあいつが無事なら問題ねー」

 そう嘯くと状況を確認し始めた。

 ロゼルタの瞳孔が大きく開く。

 所々で何かが小さく光っている。
 吸血鬼である彼女の目はその僅かな光で全てを見渡す。

(結構広いな。やはりあのバケモンの腹ん中の様だぜ)

 色まではわからないが、様々な突起や陥没がある。
 地面に触れる尻や手に伝わる感触はグニュグニュと柔らかく、体を溶かす酸のような液体が沸き出ている。

 振り向くと自分が背にしているものも数ある突起のひとつだという事がわかった。

 更に目を凝らし、観察する。

 あちらこちらに大きな骨らしきものが散乱していた。恐らくここで溶かされ、ロン=ドゥの栄養分となったオーガなどの魔物のものだろう。

 小さな光は骨の近くにあるところを見ると、魔物と一緒に食われた苔もしくはカビの様なものか。

 立ち上がろうとしたロゼルタは膝から先が無い事に気付く。

「おっと……まだ再生中か。道理で痺れて感覚がない訳だ。……てことは気を失ってから大して時間は経ってねーな」

 しかしゆっくりはしていられない。

 彼女の体はその尋常ならざる不死の力で、怪我をしても高速に治癒してゆく。

 とはいえ、ここは溶解液のような酸が常に放出されている。
 このままここにいれば周囲で無惨に散らばる骨達の仲間入りをすることになろう。

 だがもっと近々の危険に気付いた。

「! ……クソヤロー、こんなとこまで」

 やがて大きな突起物の影からぼうっと黒い霊気で鈍く光る人影が現れた。

 リドだ。

 赤い瞳をした黒髪のリドが慎重に足元を確かめながらも真っ直ぐにロゼルタ目指して歩いて来る。

(あたしがいるのを感知して目指してきたな)

 リドの感知力はスルークから遠く離れたセントリアに及ぶ程だ。

 立てないロゼルタには逃げる事など叶わない。

(だがあの感じじゃあ魔人化しててもヤツには殆ど見えてねー)

 恐らくロン=ドゥの内蔵であろう、近くの肉片を引き千切り、両足の無い自身の形に模して作る。自身のマントをかけ、そのすぐ裏へと這いながら隠れた。

(相討ちなら上等)

 暫くしてリドの足がピタリと止まった。

「……ク……クク」
「何がおかしい」
「ほう、答えるのか。俺がほとんど見えない事をいいことに、てっきり息を殺して縮こまるかと思っていたがな」
「ハッ。ざけんじゃねーぞ」
「フッフフ」

 再び歩み始めたリドがロゼルタが作った肉人形のすぐ近くまできて腰を下ろす。

「なんだ、お前この化け物にやられたのか? 足がないではないか」
「……」
「暗くてほとんど見えないが……こうしていてもお前の柑橘系の良い匂いがわかる。お前は美しい」
「テメーに褒められても全く嬉しくねー」

 その言葉にリドの口元が歪む。

「それだ。お前のそういうところが最高に俺の好みなのだ。幸い魔素排出の縄マナレイン・ロープがあるし、メルタノの続きを楽しもうか」
「マナレイン・ロープ?」
「なんだ知らないのか。メルタノでお前を縛ったロープだ。魔素が抜けていき、どうにもならなかったろうが」

 ハッとした。

 エキドナの死、自らの死、手も足も出せずリドに犯されそうになった事などをいくつも思い出し、ゾッとする感覚を必死で押し込める。

「たかがロープに名前までつけやがって……ほんと悪趣味だな」
「あれの考案者はお前の盟友だぞ? ああ、がつくか。フッフフ」
「チッ。クリニカか」

 クリニカはサキュバスでありつつ、ハルヴァラと並んで非常に頭の良い魔族だった。彼女ならそれくらいの発明はやってのけるだろうと思えた。

「テメー、ヒューリアにもそのロープを使ったのか」
「そんな必要はない。あの淫乱エルフは自ら気持ちよさそうに腰を振っていたぞ。もう終わろうとしていた俺の足を掴んで『もっともっと』と懇願までしてな。クックック」

 胸糞の悪さに吐き気がした。

 その時のヒューリアが何を思い、何を守ろうとしていたかを考えると、彼女の長としての高潔さと女としての無念さがよく分かる気がした。

 ふとロゼルタはそのヒューリアが言っていた事を思い出す。

『ノルトさんの中には誰か、高貴な方が居られるように思います。が、それと似たような雰囲気をあのリドという者からも感じます』

「リド」
「なんだ」
「テメー、中に何を飼っている?」

 それはリドにとって予想外の言葉だったらしい。数秒、間が空き、「どう言う意味だ?」と返す。

「人間が魔族になるわけがねーだろう。テメー、何かに憑かれてんじゃねーのか?」

 リドの眉に皺が寄る。

「……少々、お前達を見くびっていたようだ。なかなか、良い勘をしているではないか」
「見破ったのはテメーが無茶苦茶にしたヒューリアだぜ」
「そうか。だが教える事は出来んな」

 目を剥くと同時にリドの手刀がロゼルタの首の付け根にズブリと刺さった。

「むっ?」

 その妙な手応えにすぐ気付くが、その時を待っていたロゼルタは既に突起物を利用してリドの背中に飛び掛かっていた。

「ブラッド……クロウ!」

 刹那、ロゼルタの両手の先から赤黒い鉤爪が現れた。

 ロゼルタの手刀はリドの体を貫けなかったがその鉤爪は鎧と皮膚を難なく貫通し、その肉体を激しく抉る。

「ぐあっ!」

 それはロゼルタが初めてリドに有効打を浴びせた瞬間だった。

 下半身が覚束無い状態で距離を取られれば勝ち目は無い。といって至近距離でも剣士のリドが有利だ。
 そこで彼女は超超接近戦を選んだ。

「ロゼルタァァ」
「ぶち抜け、ブラッドシュート!」

 体内にめり込んだロゼルタの手のひらから血の弾丸が散弾銃のように放たれた!

「ぐおおおおお!」

 それはリドの体内をメチャクチャに破壊しながら体の前方から飛び出し、そこかしこのロン=ドゥの内蔵の壁に穴を開けた。

 噴水の様に血を撒き散らしながら、リドは体を丸めた。

「どうした? これくらいで参るテメーじゃねーだろう」
「う……ゴフッ……そ、の通りだ」

 吐血しながらニヤリと笑う。

 その直後。
 ロゼルタは体に違和感を感じた。

 急速に魔素が抜けていくのだ。

(なんだこの感じ……ハッ!)

 慌てて膝までしかない自分の足を見る。

 そこにはリドが体を丸めた時に括り付けたのであろう、魔素排出の縄マナレイン・ロープと呼ばれたロープが巻きつけられていた。

「しまっ……」
「終わりだ、ロゼルタァァ!」

 そのロープを取ろうと左の鉤爪をしまい、急いで腕を太腿へと伸ばす。

 あとほんの少しというところでその手はリドの剣に貫かれた。

 そのまま力任せに押し倒された彼女は柔らかい地面に深く磔にされてしまった。

「あああっ! ってーな、このクソッ……タレ!」

 残る右手に再び鉤爪を纏わせてリドの顔を狙う。だが難なく手首を掴まれ押さえ付けられた。

「詰みだ、ロゼルタ。俺の魔剣『魔喰』の能力を使えばお前の魂は一瞬でこの剣に吸い取られ、お前は死ぬ。だがそうはしない。何故だかわかるか」
「……?」

 リドは嬉しそうに舌舐めずりしながら顔を歪める。

「ククク。アーハッハ! 遂にこの時がやって来た。いただくぞ、お前を! 精が尽き果てるまで! 隅々まで味わい、犯し尽くしてやる」

 仰向けのロゼルタに跨り、ギラつく目で見下ろし、リドは咆哮した。









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