【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

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永遠なる魂

094.夜の秘め事

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 2人は並んでマヤが住むという家に向かう。

 マヤの、敬語やめよう、という提案でノルトもやっと打ち解け始めた。

(アンナも旅が始まってすぐに敬語やめろって言ってたな)
(そういえばずっと前にロゼルタさんも……)
(敬語って壁を作っちゃうのかな)

 そんな事を考えているとドールの村と呼ばれる、住宅がポツリポツリと離れて立っているような、過疎の村に着く。

「ここって……魔道具屋さんはないのかな」
「あ――、ここにはないかな」
「そっか……」

 それはロゼルタ達と連絡が取れない事を意味する。だがまた他の町に行けばいい、と考え直した。

「ねえノルト。ずっと気になってたんだけどさ」
「うん」

 突然、マヤがノルトのシャツを捲る。

「ひえっ」
「プッ。可愛い声出さないの。これってさっきのオークにやられたの?」

 右の上腕にある痣と背中にある痣を指して言う。

「あ、いや、これは」
「違うの? どこかでぶつけた?」
「いやこれは生まれつきなんだ」
「そうなんだ」

 興味深そうにその痣を見て、やがてにっこりとノルトに笑い掛け、

「かっこいいね」

 そんな事を言った。

「え?」
「ん?」
「いやそんな事言われたの、初めてだよ」
「そうなの? めっちゃ格好いいじゃん! なんか……そう、悪魔みたいで格好いいよ!」

 だがふとノルトの顔色を伺い、あ、気にしてたらごめん……と小さく言う。

「大丈夫。これのお陰でたくさん良い出会いがあったんだ」
「へえ。詳しく教えてよ」
「ダメ。秘密さ」
「え――! なんでぇ!」

 そうして2人はマヤの住む小さな掘っ建て小屋に着いた。


 ◆◇

「取り敢えずこれ、どうぞ。晩御飯はちょっと待ってね。簡単なものしかないけどすぐ準備するね」

 甘い茶葉からとれる薄く緑がかったリーンティーがテーブルに置かれた。

「ありがとう」
「熱くないから一気にどうぞ――」

 喉が乾いているだろうとのマヤの気遣いだった。

「んん! とっても美味しい!」
「そ? よかった」

 やがて肉の焼ける香ばしい匂いが充満する。

「う、う、う、良い匂い……」
「これは精がつくよ? 君、ちょっと痩せすぎだからいっぱい食べてよ。でももっと火を通さないといけないから先にお風呂入ってて?」
「お、お風呂! いやそんなものまでいただく訳には」
「いいから行っといで。上がったら出来上がってるからさ」


 そんなこんなで風呂と晩御飯を済ます。
 言うだけあって彼女の焼いた肉は確かに食べる程に体が暖かくなる感じがし、元気が出た気がした。

 リーンティーを飲むノルトをマヤがテーブルに頬杖をついて眺める。

「あの」とノルト。
「なに?」
「ここって、どこ?」
「はあ?」

 ガクンと頬杖が外れ、ゆっくりと首を傾げる。

「冗談、言ってる感じじゃないね?」
「僕はこの国の人間じゃないんだ。ドールの村って言われても一体どこにあるのか」
「あ――なるほどねぇ」

 再び頬杖をついて、ニコリと笑う。

「ここはデルピラの王都ジ=クーンだよ」
「ジ=クーン……聞いた事がないなあ……は? デ、デルピラ!?」

 思ってもいない場所だった。

 デルピラとは昔、リドに滅ぼされた魔界で、マクルルの祖国だ。

 一体どういう経路でデルピラになど来てしまったのか。

「は? そこ!? 国から? 一体ここをどこだと思ってたの?」
「い、いやてっきりロトス王国かと……」

 真面目くさって言うノルトの顔を見て、マヤが腹を抱えて笑い出した。

「ひ――っ! ほ、方向音痴にも程があるでしょ……おっかし!」
「いやあ……」

 ぽりぽりと頭を掻く。

「気がついたらここにいて……」
「どういうこと?」

 ノルトはリド達の事は隠し、ロン=ドゥに出会し、仲間とはぐれ、気付いたら川辺だったことを話す。

 マヤは目を丸くしてノルトの話に聞き入った。特に殆ど伝説の類ぐらいに思っていたロン=ドゥについては異様に興味を示した。

 紙とペンを取り出し、ノルトに特徴を聞きながら絵を描く。

「こんなの?」
「すごい。上手だね。全部をちゃんと見れた訳じゃないんだけど、ほとんどあってると思うよ」

 マヤは「はあぁぁ」と感嘆の溜息を漏らし、自分が書いた絵を見て、

「すごい。こんな生物がいるなんて……ワクワクするね!」
「あ……」

 不意にネルソの最期を思い出す。
 あの時ネルソが自分と入れ替わってくれなかったら死んでいたのは自分なのだろう。

 それを思うとなんともやるせない気持ちになった。

 沈痛な面持ちのノルトを見てマヤがしまったという表情に変わる。

「ごめん。ひょっとしてつらいこと、あったのかな」
「いや、マヤさんは悪くないよ。悪いのは僕なんだ」
「そか。やっぱ何かあったんだね。本当にごめんね?」
「いえ……」

 マヤはノルトの隣に座り直し、彼の肩を抱く。

 彼女の頭がノルトの頭にコツンとぶつかり、また甘い香りが広がる。 

「じゃあ、その仲間達のところに帰らないとだね!」
「うん」
「取り敢えず今日は泊まっていって。明日、あたしも途中まで送るよ」
「ありがとう。本当に」
「部屋がここしかないから一緒に寝るけどいい?」

 言われてみれば、テーブルがあり居間の様ではあるものの不自然に空いている空間があった。
 きっとマヤはいつもそこで寝ているのだろう。

 だがこの家に入った時、最初にトイレがあり、その後この居間に至るまでにもうひと部屋あった。
 扉がなく、カーテンで隠れてはいたがそこは外でも風呂でもなく、部屋だった気がする。

「あれ? 手前にもうひと部屋あったよね? 僕はどこでも良いけど……」
「あそこは……」

 初めてと言っていいほど、マヤは困惑の色を浮かべ、

「ダメなの。絶対に入らないで」

 と言った。

「は、入らないよ。もちろん」

 マヤの顔付きが変わったのを敏感に察知し、そう言った。


 マヤは布団を取り出すと居間の端に敷いた。

「ごめんね――。ベッドなくてさあ。床に寝るなんて初めてでしょ?」
「ううん。昔は布団も無くて藁の上とか、ゴミの上で寝てた事もあるから大丈夫だよ」
「なんだそれ。ノルト君、逞しい!」

 自ら布団に入り、おいで、と誘う。
 それにはさすがに抵抗があった。

「いやいや……僕はここで」
「何言ってんの。そんな椅子で寝れる訳ないじゃん。いいからこっちおいで」
「いや、本当、大丈夫……」
「いいからおいで!」

 結局マヤのに負け、布団に入る。

「そんな端っこにいないでさ。こっちおいで」

 言葉では「おいで」と言いながら彼女はノルトの意思など無視して両脇に腕を入れ、軽々と自分の方へと引きずった。

(うっわ……本当に力、強いんだ)

 だがそこからは優しく、後ろからそっとノルトを抱く。

 それほどでもないマヤの胸がノルトの背中に当たる。

 さすがのノルトもそれに意識がいかない訳はなく、顔を赤くしてただ鼓動だけが早くなる。

「あ、ごめん。刺激が強過ぎたかな?」

 言葉が出ず、ただ頷いた。

 マヤは小さく笑うとノルトの頭を撫で出す。

「ノルト君はおひさまの匂いがするね?」

 突然一日の疲労がどっと押し寄せた。
 頭を撫でられるのと、マヤの体温と、その声が心地良過ぎてノルトはドキドキしながらも知らないうちに眠りに落ちた。


 ◆◇

 ふと目が覚めた。

 明かりは小さな魔法トーチが光っているのみ。
 恐らく夜中なのだろう。
 外では小さく虫の声がし、それ以外はシーンと静まり返っている。

 寝入るまで背中にあった温もりが無くなっている事に気付き、恐る恐る振り向いた。

「あれ……マヤさん?」

 マヤがいない。

 不安に駆られ、部屋を出た。

 もしトイレだったらすぐに戻ろう、そんな事を考えながら部屋を出た。

 すぐにカーテンの部屋が目に付いた。

『絶対に入らないで』

 そう言ったマヤの顔が頭に浮かぶ。

 その前を通り過ぎようとした時。
 中から聞き慣れない音が聞こえて来た。

 まるで小動物が水でも飲んでいるかのような音。
 それに混じって鼻から抜ける様な呼吸の音。

(ん? マヤさんか?)

 何故そうしたのか、自分でもわからない内に壁を背に聞き耳を立てた。

「……ん……ん」
「ふぅ、ふぅ、はあああ」
「……ん、息遣い、もう少し小さくして」

 小声だったがそれはマヤの声、激しい息遣いは男の様だった。

「こんな気持ちいいの、我慢できる訳ねえだろ。いいからもう一度咥えろ」
「ん……んん!」

 ノルトには中で何が行われているのかよくわからない。わからないが、聞いてはいけない内容の気がして急いで部屋に引き返そうとした。
 その瞬間、また男の声が耳に入る。

「あああ、こんな可愛い子に……ああマヤの口、最高だ」
「んん……ん……」
「なあたのむよ。金を増やしてやるからさ、やらせてくれよ」
「ん、んあ……ふう、ダメですそれは」
「いいじゃねえかよ」
「あ、ちょっと、いや! やめて!」

 部屋に戻ろうとしていたノルトはその声で振り返る。

「やらせろっつってんだ! 処女でもあるまいし」
「わ、たし、したことなんか……」
「マジか? 処女かよたまんねえな」
「ねえお願い。隣に大事なお客さんが寝てるの。大きな声出さないで」
「てめえが大人しくしてりゃあ声ださねえよ。さ、大人しく股開けよ」
「いやあ……」

 ノルトの額に癇筋が畝る。

 サッとカーテンを開け、大声で「やめろ!」と怒鳴った。

 そこには床に仰向けになり涙ぐんでいるマヤと兵士らしき上着の男がいた。

 男の下半身は何も身につけておらず、そのモノを突き出し、彼女を襲おうとしている所だった。









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