【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

文字の大きさ
101 / 154
永遠なる魂

101.リド、マッカ、クリニカ、そして……

しおりを挟む
 ノルトがロン=ドゥの尾に跳ね飛ばされ、ミゼラン川へ落ちた後のこと。

    思いもがけず魔王ふたりを一気に消滅できたリドはしばらくの間、ロン=ドゥの体内に開いた穴の中で笑いが止まらなかった。

「これは愉快だ。ロゼルタを抱き損ねたのは残念だったが俺に歯向かっても無駄だとわかっただろう。代わりに久々にハルヴァラを抱くとしようか」

 ノルトが開けたその穴からスッと飛び出すとロン=ドゥの姿を観察しながらそのまましばらく浮遊する。

 巨大な顔の前まで飛び、何を思ったかそこで止まった。

 ロン=ドゥの顔は非常に整った、人間の女性のような顔立ちをしていた。

 だがその目は開いておらず、捕食は下側にある巨大な口から行う事を考えると、それは何のためにあるのかわからないものだった。

「美しい顔をしているが……一体お前は何者だ? 知性はあるのか? なんとも興味深い生物よ。クリニカに研究させてみるか?」

 そう独り言を呟いていたが、すぐに首を振り、

「いや万が一、奴がこれを飼い慣らしてしまうと厄介だ。俺が何とかしてみよう」

 地上を見下ろし、シオンの姿を見つける。
 そこまで飛んで行き、目の前で着地した。

「ふう」
「如何でしたか?」
「ネルソとエキドナをこの剣で喰らった。これで奴らの戦力は半減だ」
「そうでしたか……それは、よかった」

 シオンが浅く頭を下げる。リドはそれを笑うでもなく見つめながら、

「ところでお前は何をしていた?」

 シオンの長い耳がピクリとゆれる。
 胸を張り、正面からリドを見据えた。

「サラと交戦しておりましたが逃げられました」
「フン……妙な動きをすれば、わかっておろうな?」

 すぐにまた頭を下げ、目だけをギョロリとリドに向ける。

「もちろん」
「よし、まずは成果は上々だ。一旦スルークに戻る。奴らはその内ラクニールからスルークへとやって来よう。マッカにはそのままラクニールで奴らを待ち構え、1人でも多く殺せと伝えておけ」
「クリニカ様へは?」
「主力を引き連れてスルークへ来いと伝えろ」
「畏まりました」

 上機嫌でリドはロトスからノルト達を追って来た道を戻って行った。



 ◆◇◆◇

 ラクニールに向かっていた筈のマッカは、少し道を逸れ、広大なシャルトルの森にいた。

 その奥地にあるオーク達の集落。そこには屈強なオーク達が住まう。

 その中にマッカの父、ブシュカルがいた。

 彼は純粋なオーク種であり、マッカ同様数少ない上位種のオークチャンピオンであり、全オークの王である。

 父親であり、種族の王であるそのブシュカルは今、息子のマッカの前で息絶え、血まみれで横たわっていた。

 マッカは父の背中を拳で突き刺し、その心臓をブチブチブチと引き抜くと口の中に放り込んだ。

 同時に沸き起こる歓声。
 それは彼ら2人を囲んだ多くのオーク達。

 ノーマルオーク、ハーフオーク、ハイオーク、オークロード、オークメイジ、オークチャンピオン。

 それら恐るべき者達がマッカを新しい王と認めた。

「ふいぃぃ。親父の心臓、確かに貰ったぜ。漲ってくるぁ……」

 呟きざま、彼はオークキングへと変身した。
 ロトスでその姿を見せ、ロゼルタを一瞬の内に失神に追いやった時、彼は狂戦士化しており、自我を無くしていた。

 だが今、それを克服し、その上でベースとなる体力、筋力が異常な程上がった。

「フッフッフ。これがキングの力かぁ。初めて体感したぜ。これで俺は最強だ。待ってろサラァ。ズタズタに犯し尽くしてやる」

 その彼の顔の近くで突然、光の下級精霊ウィル=オ=ウィスプが現れた。

「ああん?」
『……か? 聞こえ……すか? マッカ様』

 揺らめく発光体から声が聞こえてきた。

「シオンか?」
『はい。リド様から伝言です』
「なんだ」
『我々は奴らと交戦しリド様はネルソとエキドナを殺しました。一旦スルークに戻られるそうです』
「そうか。で?」
『恐らくサラ達はラクニールからスルークに来る筈。予定通りラクニールにて待ち伏せ、1人でも多く殺す様にとの仰せです』

(1人でも多く、だと?)

 その言われ方はまるで捨て駒にされた様な印象を受ける。

(なめやがって)

 種族最強の心臓を取り入れた事でオークの限界を超えた彼はリドの圧力に対して苛立ちを覚える。

 だがまだ表立って反抗する程準備が整った訳ではない。リドと対抗するには個の強さだけではなく、一国の軍を相手にしなければならないのだ。

「……取り敢えず、わかったと伝えろ」
『畏まりました』

 光の下級精霊ウィル=オ=ウィスプはひとつ揺らめくと徐々にその光を小さくし、消え去った。



 ◆◇◆◇

 魔神ドーンに首を切られた後、再生したクリニカは三角座りで頬杖を突きながらひとりで黄昏れていた。

「ふう……あ――あ。こんなとこで殺されちゃった。『復活』は1回しか効力がないのに」

 ドーンには不死身になったと強がっていた彼女だったがどうやら事実は違うらしい。

「レイドックの指輪の効果がひとつ消えちゃったわねぇ」

 妊婦の様に下腹を摩りながら溜息をついた。が、不意に何を思い出したのか口元がニヤつく。

「それにしてもノルト君。優しくて、可愛かったなぁ。あの子はきっと……私にメロメロね!」

 ホクロに指をつけて嬉しそうに笑う。

「さ、リドちゃんの為にやる事はやったし、後は私の為に久々にメルマトラに行ってみましょうか」

 彼女は表面上、リドの指示でノルトを捕らえにデルピラに来たものの、本当の狙いはそれではない。

「美少年の次はまたが欲しくなっちゃったなぁ」

 悪びれずに言うと立ち上がり、尻を叩く。

 その彼女の顔の近くに光の下級精霊ウィル=オ=ウィスプが現れた。

「あら……シオンちゃんかしら?」
『クリニカ様。お久しゅう』
「どうしたの?」
『ネルソとエキドナはリド様が亡き者に。リド様はそのままスルークに戻られます。クリニカ様も配下の主力を伴ってスルークに来て欲しいとの仰せです』

 目をパチクリとさせ、数秒その光体を見詰める。

(ネルソ様とエキドナ様を? 道理でノルト君にランティエ様だけが出てきた訳ね)

(う――ん。ドラックちゃんを捕まえたかったんだけどなぁ)

「わかったわぁ。了解って伝えておいて」

 マッカの時と同じ様に眩い光体は徐々に光を弱くし、消えていった。

「何よもう……でもなんか言われても面倒だしなぁ」

 つまらなそうにしていたクリニカだったが、やがてサニュールに念話を送る。



 ◆◇◆◇

 彼の周囲の景色は死の色で満ちていた。

 葉のない枯れ木。
 多くの穴が空いた乾燥した岩。
 紫と緑と黒が合わさったような色の水溜り。

 雪の様にチラチラと降っているそれは吸い込むと立ちどころに呼吸器官に支障を起こし、数分で死に至る。


 ここはメルマトラの大地。

 ロスの町の東、『セントリアを守る山々』を超えた先はもう死の世界だった。

 その地を今、1人の屈強な戦士が歩いている。

 彼は背中まで伸びる長い銀髪の上に竜の頭の様な被り物をしていた。

 半裸の上半身は無駄な脂肪はひとつもない芸術的な筋肉美を見せる。

 右手には赤く、それ自体が生命を持つかのように霊気オーラを纏う槍を担ぐ様にして持っていた。

 彼の名はドラック=フォニアといい、リドとクリニカがそれぞれの思惑で探していた人物だった。

「思い出すだに恐ろしい。クリニカ……奴には二度と会いたくない。とても勝てん。あの声が無ければ身も心も奴に捧げるところであった」

 クリニカの絶対の魅了グランド=チャームであっという間に魅了されてしまった彼はその間の記憶、もちろんドーン達と戦った事も含めて朧げながら覚えている。

 彼の頭に直接語り掛けてきたドーンの声。

『ドラック……クリニカの魅了に抗え。ドラック』

「彼女のお陰で何とか自分を取り戻せた。この恩は返さねばならぬ。そして……」

 独り言を呟いていた彼の前に体長数十メートルはあろうかという巨大なトカゲの様な怪物が現れる。

「ニドラか。そういえば腹が空いたな」

 彼がニドラと呼んだ怪物、皮膚は岩肌の様で刃物などの類は通しそうになく、何より巨大な顎は飛竜ですら一撃で噛み砕けそうだ。

 それを前に何とも呑気な感想を言った彼は槍をくるくると器用に回すと、ピタリと怪物に照準を合わせた。

 刹那、その怪物は顎を大きく開くと予想もしないスピードでドラックに襲い掛かった!

「竜槍……極突」

 槍の霊気オーラが渦巻く。

 その槍はドラックの手から離れ、襲い来るニドラの数倍の速さで口から背中へとその体内を燃やし、破壊しながら貫いた。

 彼の槍、その名を赤槍バルチカという。
 それは明らかに自らの意思で動き、宙を飛んで再びドラックの手元へと帰って来た。

 がっしりとそれを掴むと先程の独り言の続きを語り出す。

「そして……そしてリド=マルスト。奴の悪事、許すまじ。必ず正義の鉄槌を下してやる」

 そう言うと彼は忌々しげに空を睨んだ。









しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...