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永遠なる魂
103.蛮王オーグ
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「交感せよ! 光の精霊王キジェシス」
サラがノルトの前で祈りを捧げる。
(キ、キジェシス様との交感! は、初めて見た……)
シュルスが目を丸くしてサラを見た。
それはノルトの母マリヤの喉から蟲を取り出した時にサラが行った精霊魔法だ。
だがあの時とは症状が違い過ぎた。
ノルトの喉から黒い虫が苦しそうに這い出るが、途中で分裂し、片方はそのまま動かなくなったがもう片方は健康体となり、再びノルトの体内に潜り、更に分裂を始める。
「クッ……ノルトさん!」
キジェシスの降霊は終わり、光の霊気がスッと消える。
「ど、どうすれば……あっ!」
サラが唇を噛み締めたその時、突如ノルトの体から黒い霊気が立ち上る。
ドーンが真っ先にその正体に気付き、近くまで飛んで来た。
「ランティエ様じゃ!」
喉を中心に胸、肩など虫が移動していた辺りで次々と小さな爆発が起こり、一瞬でノルトの体が血塗れとなった。
「ノルトさん!」
目の前でそれを見ていたサラの悲鳴が響く。
だがドーンがサラの背後から声を掛ける。
「落ち着けサラ。蟲はランティエ様が退治した。治癒をかけてやれ」
「は……わかりました!」
慌てて治癒を唱え、ノルトの体を瞬く間に修復した。
一方のマクルル。
テスラに「俺と代われ」と言い、彼を下がらせると得意の肉弾戦で怪物と渡り合い始めた。
バーバリアンである彼の打撃には一切の魔力が乗らず、戦い方はとてもシンプルで、ただその恐るべき力と速さで相手を圧倒する。
かつてはリドもその攻略には苦慮し、結局は策を弄する他なかった。
だがそのマクルルをもってしてもその黒い怪物は手に余る相手だった。
(斧は効いている筈だが、再生力が異常に高いのか)
人化状態の彼は大剣を使うが、本来の彼はマッカと同じく戦斧を得意とする。
その大きな斧で旋風が起こる程の回転の攻撃を繰り出し、怪物の尾を防ぐと共に確実にダメージを与えていた。
にも関わらず、怪物のスピードは衰えず、斬った部分から体液らしきものは出るものの、ものの数秒で再生が始まるのだ。
(こいつは些か骨が折れそうだ)
やられはしないが倒すまでに時間がかかりそうだと感じた。
それを遠巻きに見ていたロゼルタとアンナ。
「マクルル……魔神にはならないのかしら?」とアンナ。
「きっと魔神化すると攻撃に魔力が宿ってしまうんだろう。だからならないんだ」
ロゼルタの答えに納得する。
と同時にノルトの方も気になった。
駆け寄りたい気持ちが溢れるが、万が一、変に動いた自分に怪物の攻撃が向かったら……それを防ごうとマクルルが隙を見せてしまったら、などと考えると動けなかった。
(ノルトが白く光ってる……サラの治療はまだ続いてるのね……頑張って、ノルト)
マクルルは全ての尾の攻撃を捌き、決着を付けるつもりで怪物の腹に一撃を入れた。
そのまま自慢の膂力で薙ぎ払い、真っ二つにするつもりだった。だがそれは途中でピタリと止まる。
(ぐっ……こいつ、体の中心に鋼でも生えているのか? 動かないっ……しまった、これはまずい)
マクルルは戦斧から手を離し、叫んだ。
「逃げろ!」
それは怪物へと向かう前に彼が言っていた事だった。
『俺が負ける様なら逃げろ。後の事は気にするな』
テスラとドーンは歯軋りをするが、自分達ではあの怪物とはやり合えない。
怪物は戦斧が腹に突き刺さったまま、痛そうなそぶりも見せず、胸と下腹部から尾が生えたと思った次の瞬間、目の前のマクルルの胸を突き刺した。
動きが止まったマクルルに止めとばかりに何本もの尾が更に乱れ撃たれる。
マクルルが死を覚悟したその時。
全く別の事に気付く。
(この霊気は!?)
マクルルの眼前に迫っていた何本もの尾は全て切断され、同時に怪物は初めて後ろへと吹き飛んだ。
目の前には真っ白な霊気に身を包ませ、真紅の瞳で眉を怒らせたノルトが立っていた。
彼の右上腕の痣は爛々と白く光り、完全に魔紋として浮かび上がっている。
「ノル……いや……オーグ様!」
片膝をつき、胸を押さえながら絞り出す様に言う。
ノルトの姿をしたバーバリアンの王、オーグがマクルルの方へと顔を向け、目を剥いて笑う。
「おいおい、マクルルともあろうものがこんな奴に勝てないだと? てめえサボり過ぎなんじゃねーか?」
「これは、返す言葉もございません」
「へっへっへ。嘘だよ。あいつは妙な奴だ。見た目は気にせずダメージを与え続けろ。あと一押しだ。今までのお前の打撃も効いている」
「畏まりました」
オーグは不意に手のひらをマクルルに向ける。
するとマクルルの胸の辺りに小さい爆発が起こり、どっと血が流れ出す。
「サラッ! 治癒!」
「はいっ!」
それはノルトに起こった現象と同じものだった。
先程の一瞬の攻撃でマクルルの体内にも蟲が入れられていたのだ。
だがランティエによってマクルルの体内に入った虫は殺された。
「バーバリアンの名がなくぜぇっ? 行ったらんかい!」
「ふ、ふふ……もちろん」
その返事を聞くとオーグは満足した様にニヤリと笑い、体勢を立て直そうとする怪物へと向かう。
マクルルもそれに倣い、2人がかりで左右から攻め立てた。
黒い怪物は突如迫り来る2人に凄まじいスピードの尾による攻撃を繰り出す。
2人はそれを素手で捌き、間合いまで近付くと、
「おらおらおらっ! 死にさらせっ!」
「フンッ!」
それぞれの拳をオーグは怪物の顔面近くに、マクルルは腹部の辺りに一撃ずつ撃ち込んだ。
その怪物はその衝撃から逃れる事ができず、まともに食らって後方の岩壁に激突し、ようやく動かなくなった。
サラがノルトの前で祈りを捧げる。
(キ、キジェシス様との交感! は、初めて見た……)
シュルスが目を丸くしてサラを見た。
それはノルトの母マリヤの喉から蟲を取り出した時にサラが行った精霊魔法だ。
だがあの時とは症状が違い過ぎた。
ノルトの喉から黒い虫が苦しそうに這い出るが、途中で分裂し、片方はそのまま動かなくなったがもう片方は健康体となり、再びノルトの体内に潜り、更に分裂を始める。
「クッ……ノルトさん!」
キジェシスの降霊は終わり、光の霊気がスッと消える。
「ど、どうすれば……あっ!」
サラが唇を噛み締めたその時、突如ノルトの体から黒い霊気が立ち上る。
ドーンが真っ先にその正体に気付き、近くまで飛んで来た。
「ランティエ様じゃ!」
喉を中心に胸、肩など虫が移動していた辺りで次々と小さな爆発が起こり、一瞬でノルトの体が血塗れとなった。
「ノルトさん!」
目の前でそれを見ていたサラの悲鳴が響く。
だがドーンがサラの背後から声を掛ける。
「落ち着けサラ。蟲はランティエ様が退治した。治癒をかけてやれ」
「は……わかりました!」
慌てて治癒を唱え、ノルトの体を瞬く間に修復した。
一方のマクルル。
テスラに「俺と代われ」と言い、彼を下がらせると得意の肉弾戦で怪物と渡り合い始めた。
バーバリアンである彼の打撃には一切の魔力が乗らず、戦い方はとてもシンプルで、ただその恐るべき力と速さで相手を圧倒する。
かつてはリドもその攻略には苦慮し、結局は策を弄する他なかった。
だがそのマクルルをもってしてもその黒い怪物は手に余る相手だった。
(斧は効いている筈だが、再生力が異常に高いのか)
人化状態の彼は大剣を使うが、本来の彼はマッカと同じく戦斧を得意とする。
その大きな斧で旋風が起こる程の回転の攻撃を繰り出し、怪物の尾を防ぐと共に確実にダメージを与えていた。
にも関わらず、怪物のスピードは衰えず、斬った部分から体液らしきものは出るものの、ものの数秒で再生が始まるのだ。
(こいつは些か骨が折れそうだ)
やられはしないが倒すまでに時間がかかりそうだと感じた。
それを遠巻きに見ていたロゼルタとアンナ。
「マクルル……魔神にはならないのかしら?」とアンナ。
「きっと魔神化すると攻撃に魔力が宿ってしまうんだろう。だからならないんだ」
ロゼルタの答えに納得する。
と同時にノルトの方も気になった。
駆け寄りたい気持ちが溢れるが、万が一、変に動いた自分に怪物の攻撃が向かったら……それを防ごうとマクルルが隙を見せてしまったら、などと考えると動けなかった。
(ノルトが白く光ってる……サラの治療はまだ続いてるのね……頑張って、ノルト)
マクルルは全ての尾の攻撃を捌き、決着を付けるつもりで怪物の腹に一撃を入れた。
そのまま自慢の膂力で薙ぎ払い、真っ二つにするつもりだった。だがそれは途中でピタリと止まる。
(ぐっ……こいつ、体の中心に鋼でも生えているのか? 動かないっ……しまった、これはまずい)
マクルルは戦斧から手を離し、叫んだ。
「逃げろ!」
それは怪物へと向かう前に彼が言っていた事だった。
『俺が負ける様なら逃げろ。後の事は気にするな』
テスラとドーンは歯軋りをするが、自分達ではあの怪物とはやり合えない。
怪物は戦斧が腹に突き刺さったまま、痛そうなそぶりも見せず、胸と下腹部から尾が生えたと思った次の瞬間、目の前のマクルルの胸を突き刺した。
動きが止まったマクルルに止めとばかりに何本もの尾が更に乱れ撃たれる。
マクルルが死を覚悟したその時。
全く別の事に気付く。
(この霊気は!?)
マクルルの眼前に迫っていた何本もの尾は全て切断され、同時に怪物は初めて後ろへと吹き飛んだ。
目の前には真っ白な霊気に身を包ませ、真紅の瞳で眉を怒らせたノルトが立っていた。
彼の右上腕の痣は爛々と白く光り、完全に魔紋として浮かび上がっている。
「ノル……いや……オーグ様!」
片膝をつき、胸を押さえながら絞り出す様に言う。
ノルトの姿をしたバーバリアンの王、オーグがマクルルの方へと顔を向け、目を剥いて笑う。
「おいおい、マクルルともあろうものがこんな奴に勝てないだと? てめえサボり過ぎなんじゃねーか?」
「これは、返す言葉もございません」
「へっへっへ。嘘だよ。あいつは妙な奴だ。見た目は気にせずダメージを与え続けろ。あと一押しだ。今までのお前の打撃も効いている」
「畏まりました」
オーグは不意に手のひらをマクルルに向ける。
するとマクルルの胸の辺りに小さい爆発が起こり、どっと血が流れ出す。
「サラッ! 治癒!」
「はいっ!」
それはノルトに起こった現象と同じものだった。
先程の一瞬の攻撃でマクルルの体内にも蟲が入れられていたのだ。
だがランティエによってマクルルの体内に入った虫は殺された。
「バーバリアンの名がなくぜぇっ? 行ったらんかい!」
「ふ、ふふ……もちろん」
その返事を聞くとオーグは満足した様にニヤリと笑い、体勢を立て直そうとする怪物へと向かう。
マクルルもそれに倣い、2人がかりで左右から攻め立てた。
黒い怪物は突如迫り来る2人に凄まじいスピードの尾による攻撃を繰り出す。
2人はそれを素手で捌き、間合いまで近付くと、
「おらおらおらっ! 死にさらせっ!」
「フンッ!」
それぞれの拳をオーグは怪物の顔面近くに、マクルルは腹部の辺りに一撃ずつ撃ち込んだ。
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