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永遠なる魂
109.永遠なる魂(2) 万物の支配者
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話しながらノルトの顔を見つめていたヴィクトリアが不意に怪訝な顔付きになった。
「あれ? ノルト。ネルソとエキドナは?」
刹那ノルトに蘇る嫌な記憶。
それは忘れたくても忘れられない。
ロン=ドゥからまさに脱出する寸前、ネルソに命を救われた。
その代償はあまりにも大きい。
「おふたりは……リドに殺されました。僕のせいで」
「まさか!」
ヴィクトリアが信じられないとばかりに大きく口を開く。
「そんなバカな。彼らは貴方が死なない限りは死なないはず。そういう楔を打ち込んでおいたのに……一体どうして?」
「リドにやられました。魔を喰らう剣とかで……最初からロゼルタさんもネルソ様も僕に逃げろと言っていたのに。……怒りで我を忘れた僕が言う事を聞かなかったから」
ほろほろと涙を流すノルトを前にどうしたものかといった表情でヴィクトリアが狼狽える。
ノルトの肩に手を置き、気配を探るように目を閉じた。
暫くして目を開いたヴィクトリアの顔は、ホッとした様に笑っていた。
「ノルト。安心して下さい。ネルソとエキドナは、生きています」
「え!」
それはノルトだけではなく、テスラ、ロゼルタの声とも重なった。
「マ、マジか!」とロゼルタ。
「ええ。大丈夫と言うには危う過ぎますが、とにかく生きている」
「でも何度も問いかけているんですが、声が全然聞こえません」
「今、彼らは貴方の中にはいません。彼らがいるのは……リドの魔剣の中です」
「ええええ!?」
テスラ達も皆、一様に驚愕の表情を浮かべた。
「そして、まだ貴方との楔は消えていません。痣は消えた様に見えますが、その輪郭が僅かに残っているのがわかりますか?」
慌ててシャツを捲り、自分の胸を見るが、今までタトゥーのように色濃くあったそれが綺麗に無くなっているため、ノルトにはわからない。
アンナがノルトの体に顔を近付け、凝視する。
「あ……確かに。残ってるわ!」
「マジか」
「ええ。ここ」
「……なるほど。言われてみりゃ」
ネルソとエキドナの魔紋の輪郭がよく見なければわからないほど薄く、残っていた。
テスラとロゼルタもそれに加わり、皆でノルトの胸や首元をジロジロと見る。
「あ、いや、ちょ……」
思わずノルトは顔を赤くし、背けた。
だがその目からはツッ……と涙が零れ落ちる。
(そうか。リドに刺し殺されそうになったあの瞬間、ネルソ様は『わからんが多分ダメ』と言った)
(それは逆に言えばダメな可能性は高いけどひょっとしたら何とかなるって事だったんだ)
(30年前もあの魔剣にやられたネルソ様はあの剣の特性が分かってたんだ)
ノルトが小さく拳を握る。
(僕が絶対に、絶対に復活させます)
そう心に誓った。
「取り敢えずはこれで一安心」
胸を撫で下ろすヴィクトリアを見てロゼルタが言う。
「なんつーか……オメー、凄いんだけど何でも出来る、知ってるって感じでも無さそうだな」
ヴィクトリアは笑顔で頷く。
「勿論です。光の下級精霊が出来ることなんてたかが知れてます。ノルトの不幸な境遇も、リドの魔界討伐も、分かっていながら何もできなかった。その点、アルメダは貴方達を引き合わせたのだから流石だわ!」
「そのアルメダって人……私と何か関係があるの?」とアンナ。
「大アリですよアンナ。ノルトが私の影響を強く受けているのと同じく、貴女は彼女の影響をとても強く受けている」
「影響って、その……なんかテイム出来る能力のこと?」
「そうです。世界中にいるテイマー達は皆、多かれ少なかれアルメダの影響を受けています」
ロゼルタが怪訝そうに口を挟む。
「いや、こいつの力はそんなもんじゃねーぞ? 魔物や魔神までテイムしたんだからな。そんなテイマーは聞いた事がねー」
ヴィクトリアは待ってましたと言わんばかりに得意げな顔で話し出した。
「アンナが普通のテイマー達と異なるのはアルメダの影響をとても強く受けているという点です。彼女はこの世のあらゆる生物の支配者でした。彼女の力はこの地上において唯一無二、万物の支配者と呼ばれる所以です」
「万物の支配者……アンナはそれを受け継いでる、と?」とドーン。
「しかもその影響の深さから見てかなりの能力を」
そう言われてもノルト同様、アンナにもあまり実感がない。
彼女が自身の異変に気付いたのはごく、最近の事なのだ。
その胸の内を見透かした様にヴィクトリアがアンナに言う。
「貴女がノルトに出会い、彼に付き添うと自分で決めた時にアルメダの能力が発現したのです。最初は戸惑って魔物を惹きつけるばかりだったと思いますが、今ここでアルメダを認識した貴女はこれまでより正確に彼女の力を振るえるはず」
「いやそんな事言われても……」
と言い掛けたアンナがそこで息を呑み、次いで目を見開く。
(な、ななな、なにこれ!?)
頭の中にこれまで出会った全ての生物、魔物、そしてメルマトラに住まう怪物達までもが、その姿と共に名前や能力までもが鮮明に頭の中に浮かび上がる。
突然の事に驚いた彼女が頭を抱えて「なに? なに!?」と蹲る。
慌ててノルトがその肩を抱くと、アンナがその体重を預けた。
「ウフフ。やはり貴女達も仲良しなんですね? 私とアルメダもとても仲が良かったのですよ? うふふふふ」
「いや、んな事言ってる場合か。なにが起こってんだ?」とロゼルタ。
「ご心配無く。恐らくアルメダの能力に目覚めたアンナの、これまでの体験が知識として一気に押し寄せているんでしょう」
不意に顔を上げたそのアンナを見てノルトがギョッとした。
瞳が銀色だったのだ。
「あ……アンナ……目が……だ、大丈夫?」
口を開け、放心状態に見えたアンナの眉がピクリと動き、
「大丈夫。多分」
と言った。
その時には既に瞳は元の深い茶色に戻っていた。
「ノルトも私と出逢った事で、今までよりも魔王達と仲良くなれているはず。なんてったって私は彼らの先祖達からの仲なんですから」
腰に手を当て、少し自慢げに言うヴィクトリアだった。
だが戯けていたのはそこまでだった。
「で……結局どうすれば魔王達は蘇るのじゃ」
ドーンが口を挟んだ。
「あれ? ノルト。ネルソとエキドナは?」
刹那ノルトに蘇る嫌な記憶。
それは忘れたくても忘れられない。
ロン=ドゥからまさに脱出する寸前、ネルソに命を救われた。
その代償はあまりにも大きい。
「おふたりは……リドに殺されました。僕のせいで」
「まさか!」
ヴィクトリアが信じられないとばかりに大きく口を開く。
「そんなバカな。彼らは貴方が死なない限りは死なないはず。そういう楔を打ち込んでおいたのに……一体どうして?」
「リドにやられました。魔を喰らう剣とかで……最初からロゼルタさんもネルソ様も僕に逃げろと言っていたのに。……怒りで我を忘れた僕が言う事を聞かなかったから」
ほろほろと涙を流すノルトを前にどうしたものかといった表情でヴィクトリアが狼狽える。
ノルトの肩に手を置き、気配を探るように目を閉じた。
暫くして目を開いたヴィクトリアの顔は、ホッとした様に笑っていた。
「ノルト。安心して下さい。ネルソとエキドナは、生きています」
「え!」
それはノルトだけではなく、テスラ、ロゼルタの声とも重なった。
「マ、マジか!」とロゼルタ。
「ええ。大丈夫と言うには危う過ぎますが、とにかく生きている」
「でも何度も問いかけているんですが、声が全然聞こえません」
「今、彼らは貴方の中にはいません。彼らがいるのは……リドの魔剣の中です」
「ええええ!?」
テスラ達も皆、一様に驚愕の表情を浮かべた。
「そして、まだ貴方との楔は消えていません。痣は消えた様に見えますが、その輪郭が僅かに残っているのがわかりますか?」
慌ててシャツを捲り、自分の胸を見るが、今までタトゥーのように色濃くあったそれが綺麗に無くなっているため、ノルトにはわからない。
アンナがノルトの体に顔を近付け、凝視する。
「あ……確かに。残ってるわ!」
「マジか」
「ええ。ここ」
「……なるほど。言われてみりゃ」
ネルソとエキドナの魔紋の輪郭がよく見なければわからないほど薄く、残っていた。
テスラとロゼルタもそれに加わり、皆でノルトの胸や首元をジロジロと見る。
「あ、いや、ちょ……」
思わずノルトは顔を赤くし、背けた。
だがその目からはツッ……と涙が零れ落ちる。
(そうか。リドに刺し殺されそうになったあの瞬間、ネルソ様は『わからんが多分ダメ』と言った)
(それは逆に言えばダメな可能性は高いけどひょっとしたら何とかなるって事だったんだ)
(30年前もあの魔剣にやられたネルソ様はあの剣の特性が分かってたんだ)
ノルトが小さく拳を握る。
(僕が絶対に、絶対に復活させます)
そう心に誓った。
「取り敢えずはこれで一安心」
胸を撫で下ろすヴィクトリアを見てロゼルタが言う。
「なんつーか……オメー、凄いんだけど何でも出来る、知ってるって感じでも無さそうだな」
ヴィクトリアは笑顔で頷く。
「勿論です。光の下級精霊が出来ることなんてたかが知れてます。ノルトの不幸な境遇も、リドの魔界討伐も、分かっていながら何もできなかった。その点、アルメダは貴方達を引き合わせたのだから流石だわ!」
「そのアルメダって人……私と何か関係があるの?」とアンナ。
「大アリですよアンナ。ノルトが私の影響を強く受けているのと同じく、貴女は彼女の影響をとても強く受けている」
「影響って、その……なんかテイム出来る能力のこと?」
「そうです。世界中にいるテイマー達は皆、多かれ少なかれアルメダの影響を受けています」
ロゼルタが怪訝そうに口を挟む。
「いや、こいつの力はそんなもんじゃねーぞ? 魔物や魔神までテイムしたんだからな。そんなテイマーは聞いた事がねー」
ヴィクトリアは待ってましたと言わんばかりに得意げな顔で話し出した。
「アンナが普通のテイマー達と異なるのはアルメダの影響をとても強く受けているという点です。彼女はこの世のあらゆる生物の支配者でした。彼女の力はこの地上において唯一無二、万物の支配者と呼ばれる所以です」
「万物の支配者……アンナはそれを受け継いでる、と?」とドーン。
「しかもその影響の深さから見てかなりの能力を」
そう言われてもノルト同様、アンナにもあまり実感がない。
彼女が自身の異変に気付いたのはごく、最近の事なのだ。
その胸の内を見透かした様にヴィクトリアがアンナに言う。
「貴女がノルトに出会い、彼に付き添うと自分で決めた時にアルメダの能力が発現したのです。最初は戸惑って魔物を惹きつけるばかりだったと思いますが、今ここでアルメダを認識した貴女はこれまでより正確に彼女の力を振るえるはず」
「いやそんな事言われても……」
と言い掛けたアンナがそこで息を呑み、次いで目を見開く。
(な、ななな、なにこれ!?)
頭の中にこれまで出会った全ての生物、魔物、そしてメルマトラに住まう怪物達までもが、その姿と共に名前や能力までもが鮮明に頭の中に浮かび上がる。
突然の事に驚いた彼女が頭を抱えて「なに? なに!?」と蹲る。
慌ててノルトがその肩を抱くと、アンナがその体重を預けた。
「ウフフ。やはり貴女達も仲良しなんですね? 私とアルメダもとても仲が良かったのですよ? うふふふふ」
「いや、んな事言ってる場合か。なにが起こってんだ?」とロゼルタ。
「ご心配無く。恐らくアルメダの能力に目覚めたアンナの、これまでの体験が知識として一気に押し寄せているんでしょう」
不意に顔を上げたそのアンナを見てノルトがギョッとした。
瞳が銀色だったのだ。
「あ……アンナ……目が……だ、大丈夫?」
口を開け、放心状態に見えたアンナの眉がピクリと動き、
「大丈夫。多分」
と言った。
その時には既に瞳は元の深い茶色に戻っていた。
「ノルトも私と出逢った事で、今までよりも魔王達と仲良くなれているはず。なんてったって私は彼らの先祖達からの仲なんですから」
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