【R18/完結】4人の魔王をその身に宿す少年は魔神達と共に人間の英雄を倒し、魔界の復興を目指す

南祥太郎

文字の大きさ
109 / 154
永遠なる魂

109.永遠なる魂(2) 万物の支配者

しおりを挟む
 話しながらノルトの顔を見つめていたヴィクトリアが不意に怪訝な顔付きになった。

「あれ? ノルト。ネルソとエキドナは?」

 刹那ノルトに蘇る嫌な記憶。

 それは忘れたくても忘れられない。

 ロン=ドゥからまさに脱出する寸前、ネルソに命を救われた。

 その代償はあまりにも大きい。

「おふたりは……リドに殺されました。僕のせいで」
「まさか!」

 ヴィクトリアが信じられないとばかりに大きく口を開く。

「そんなバカな。彼らは貴方が死なない限りは死なないはず。そういう楔を打ち込んでおいたのに……一体どうして?」
「リドにやられました。魔を喰らう剣とかで……最初からロゼルタさんもネルソ様も僕に逃げろと言っていたのに。……怒りで我を忘れた僕が言う事を聞かなかったから」

 ほろほろと涙を流すノルトを前にどうしたものかといった表情でヴィクトリアが狼狽える。

 ノルトの肩に手を置き、気配を探るように目を閉じた。

 暫くして目を開いたヴィクトリアの顔は、ホッとした様に笑っていた。

「ノルト。安心して下さい。ネルソとエキドナは、生きています」
「え!」

 それはノルトだけではなく、テスラ、ロゼルタの声とも重なった。

「マ、マジか!」とロゼルタ。
「ええ。大丈夫と言うには危う過ぎますが、とにかく生きている」
「でも何度も問いかけているんですが、声が全然聞こえません」
「今、彼らは貴方の中にはいません。彼らがいるのは……リドの魔剣のです」
「ええええ!?」

 テスラ達も皆、一様に驚愕の表情を浮かべた。

「そして、まだ貴方との楔は消えていません。痣は消えた様に見えますが、その輪郭が僅かに残っているのがわかりますか?」

 慌ててシャツを捲り、自分の胸を見るが、今までタトゥーのように色濃くあったそれが綺麗に無くなっているため、ノルトにはわからない。

 アンナがノルトの体に顔を近付け、凝視する。

「あ……確かに。残ってるわ!」
「マジか」
「ええ。ここ」
「……なるほど。言われてみりゃ」

 ネルソとエキドナの魔紋の輪郭がよく見なければわからないほど薄く、残っていた。

 テスラとロゼルタもそれに加わり、皆でノルトの胸や首元をジロジロと見る。

「あ、いや、ちょ……」

 思わずノルトは顔を赤くし、背けた。
 だがその目からはツッ……と涙が零れ落ちる。

(そうか。リドに刺し殺されそうになったあの瞬間、ネルソ様は『わからんが多分ダメ』と言った)
(それは逆に言えばダメな可能性は高いけどひょっとしたら何とかなるって事だったんだ)
(30年前もあの魔剣にやられたネルソ様はあの剣の特性が分かってたんだ)

 ノルトが小さく拳を握る。

(僕が絶対に、絶対に復活させます)

 そう心に誓った。

「取り敢えずはこれで一安心」

 胸を撫で下ろすヴィクトリアを見てロゼルタが言う。

「なんつーか……オメー、凄いんだけど何でも出来る、知ってるって感じでも無さそうだな」

 ヴィクトリアは笑顔で頷く。

「勿論です。光の下級精霊ウィル=オ=ウィスプが出来ることなんてたかが知れてます。ノルトの不幸な境遇も、リドの魔界討伐も、分かっていながら何もできなかった。その点、アルメダは貴方達を引き合わせたのだから流石だわ!」
「そのアルメダって人……私と何か関係があるの?」とアンナ。
「大アリですよアンナ。ノルトが私の影響を強く受けているのと同じく、貴女は彼女の影響をとても強く受けている」
「影響って、その……なんかテイム出来る能力のこと?」
「そうです。世界中にいるテイマー達は皆、多かれ少なかれアルメダの影響を受けています」

 ロゼルタが怪訝そうに口を挟む。

「いや、こいつの力はそんなもんじゃねーぞ? 魔物や魔神までテイムしたんだからな。そんなテイマーは聞いた事がねー」

 ヴィクトリアは待ってましたと言わんばかりに得意げな顔で話し出した。

「アンナが普通のテイマー達と異なるのはアルメダの影響を受けているという点です。彼女はこの世のあらゆる生物の支配者でした。彼女の力はこの地上において唯一無二、万物の支配者ドミネイターと呼ばれる所以です」
万物の支配者ドミネイター……アンナはそれを受け継いでる、と?」とドーン。
「しかもその影響の深さから見てかなりの能力を」

 そう言われてもノルト同様、アンナにもあまり実感がない。
 彼女が自身の異変に気付いたのはごく、最近の事なのだ。

 その胸の内を見透かした様にヴィクトリアがアンナに言う。

「貴女がノルトに出会い、彼に付き添うと決めた時にアルメダの能力が発現したのです。最初は戸惑って魔物を惹きつけるばかりだったと思いますが、今ここでアルメダを貴女はこれまでより正確に彼女の力を振るえるはず」
「いやそんな事言われても……」

 と言い掛けたアンナがそこで息を呑み、次いで目を見開く。

(な、ななな、なにこれ!?)

 頭の中にこれまで出会った全ての生物、魔物、そしてメルマトラに住まう怪物達までもが、その姿と共に名前や能力までもが鮮明に頭の中に浮かび上がる。

 突然の事に驚いた彼女が頭を抱えて「なに? なに!?」と蹲る。

 慌ててノルトがその肩を抱くと、アンナがその体重を預けた。

「ウフフ。やはり貴女達も仲良しなんですね? 私とアルメダもとても仲が良かったのですよ? うふふふふ」
「いや、んな事言ってる場合か。なにが起こってんだ?」とロゼルタ。
「ご心配無く。恐らくアルメダの能力に目覚めたアンナの、これまでの体験が知識として一気に押し寄せているんでしょう」

 不意に顔を上げたそのアンナを見てノルトがギョッとした。

 瞳が銀色だったのだ。

「あ……アンナ……目が……だ、大丈夫?」

 口を開け、放心状態に見えたアンナの眉がピクリと動き、

「大丈夫。多分」

 と言った。
 その時には既に瞳は元の深い茶色に戻っていた。

「ノルトも私と出逢った事で、今までよりも魔王達となれているはず。なんてったって私は彼らの先祖達からの仲なんですから」

 腰に手を当て、少し自慢げに言うヴィクトリアだった。

 だが戯けていたのはそこまでだった。

「で……結局どうすれば魔王達は蘇るのじゃ」

 ドーンが口を挟んだ。













しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...