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最終章 魔王をその身に宿す少年
135.チョロゴッド(前)
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(虹の指輪を儂に思い出させるのは)
(ノルトじゃない。ランティエ様じゃ!)
(そうか。クリニカめ、レイドックの指輪の能力を使ったのか)
ノルトの体で捲れ上がったスカートの内側を拙い動きで弄る。
(ランティエ様が持っていたふたつのリング)
(レイドックの指輪はクリニカが)
ドーンの指先がひとつの金属のリングを探し当てた。
(そしてもうひとつは)
すぐにでも落としてしまいそうなそれを慎重に掴み、顔の前まで持って来た。
それは七色に煌めく美しい指輪。
(儂が持っている)
指輪を指に嵌め、
「すべての状態異常を、解除せよ!」
と叫んだ。
まるで自分の寝言の大きさで起きたかの様に目を開ける。
今、目を覚ましたような感じを受けたが、体の上には彼女に覆い被さるノルトがいた。
「な、なん……」
(まだ術が解けないのか?)
(いやでもこのノルトの重さ、感触は……現実)
更に周囲の暗く広い部屋を見、現実に戻ってきた事を確信する。
先程までのノルトとの淫らな行為が死霊レイドックによる呪いの淫術だとすれば、きっとあれは自分の中だけの夢か幻の類であったに違いない。
「ノルト、ノルト……」
ドーンの声で彼女の首元に顔を埋めていたノルトがゆっくりと震えながら辛うじて片目を開ける。
「やっと……起きたか。吾輩だ」
「やはりランティエ様か。面目ない」
「ノルトも吾輩もあの淫術には抗えん。虹の指輪はつけたな?」
こくりと頷く。
夢の中だけでなく現実でもつけていたらしく、その左手には七色に煌めくそれがつけられていた。
虹の指輪 ――
かつてメルマトラ国王だったヴィクトリアの配下で、抜きん出て有能だった死霊使いのリディル=バイドが作った指輪。
死霊使いのみ着用可能。
強い呪いがかけられており、着用している間は全ての身体能力が大幅に落ちる。
その呪いを受け入れる代わりに極めて短い時間、着用者の魔力を飛躍的に向上させる。
更にその時かけられている全ての状態異常効果を打ち消す。
「呪いのせいで全てのステータスは落ちるが魔力だけは飛び抜けて向上する。後は任せたぞ」
「お任せあれ」
ノルトの体をゆっくりとどかし、立ち上がる。
クリニカは驚いた顔をして口に手を当てた。
「あらぁ。ドーンちゃん、もう気がついたのお?」
「ああ。これのお陰でな」
左手の甲を顔の前に持ち上げ、クリニカに向ける。
「あれ? それ見た事あるわねえ」
顎に手をやり暫く考えていたクリニカがやがて大きく口を開けた。
「あ――! それ私がアクセサリーにしてた指輪じゃない! いつの間に盗んだのよぉ!」
「馬鹿者。ふたつの指輪はいずれもランティエ様のものじゃ。盗人猛々しい。ちょうど良いわ、この場でレイドックの指輪も返して貰おう」
頰を膨らませてドーンを睨んでいたが、不意に何を思い付いたのか、腰に手を当て前屈みになった。
「ウフフ。さっきどんな淫夢を見てたのか、教えてくれたら大人しく返してあげようかなあ?」
探る様に上目遣いでニヤリとするクリニカ。
ノルトとの痴態を思い出したドーンの顔は一瞬で赤くなった。
「う、ううううるさい! 問答無用じゃ! 来いっクリニカ!」
爆発的に霊気が噴き出した。
腰までの美しい直毛の黒髪は足元ほどまでの長さとなり、その毛先はそれ自身が意志を持つかのように様々な方向へとくねる。
瞳孔は猫の様に細くなり、肌の色は薄い紫へと変わった。
その強大すぎる魔力のせいで黒い霊気の隙間から見える魔神ドーンの姿は何重にもぶれる。
「魔族はどこまでいっても魔族。私には全く効かん」
クリニカの前に移動し、ドーンに体を向けて姿勢良く立つ。
だがメルマトラでメニドゥラがクリニカにそうしたのと逆で、今度はクリニカがそれを制した。
「ドーンちゃんは私をご指名だわ」
クリニカの瞳の色が黒みを帯びた血の様な赤となり、肌はドーンよりも濃い紫となる。
ドーンと同じく、クリニカもブレている様に見え、空気が歪んでいるかの様だ。
2人の魔神の圧倒的な力は城全体を震わせる程のものだった。
「うふふ。ファトランテ、デルピラ……これで3回目ね? 今日はやっつけちゃうわよぉ」
「それはこちらのセリフじゃ」
その時ロゼルタから念話が入る。
(ロゼルタ! 無事じゃったか!)
が、到底今、それに集中出来るような状況ではない。
それに気を取られた一瞬の間にクリニカの背後に無数の氷の塊が現れていた。
「『闇の氷塊ツォルサイト』」
恐ろしい勢いでドーン目掛けて次々と発射される。
それを皮切りに彼女らの闘いが始まった。
ドーンは高レベルのファントムを何十体と周囲に召喚し、クリニカの魔法攻撃へのバリアとした。
ブツブツと何かを言うたびに死霊の数は増えていき、浮遊するドーンがどこにいるかとてもわかりにくいものとなる。
一方のクリニカ。必殺の捕縛魔法はドーンが空中にいるため使いにくく、冥府の炎と氷で攻め立てた。
その闘いの最中、メニドゥラはノルトの側へと瞬時に移動すると意識を失っているその体を抱き、何か考えていたがスッと広間の端に移動し、そこに寝かせた。
「ノルト……すまないが私達はお前と共に歩むことは出来ない」
悲しそうにノルトに一瞥し、すぐにドーンの方へと爪先を向けた。
が、その足をノルトの手が掴む。
「メニドゥラさん」
「ノルト! 気がついたのか」
驚いて振り向いた。
「どうしてですか?」
「……」
「ひょっとしてあの時、メルマトラでリドに……?」
ハッとした顔でノルトを見る。
「やっぱり。契約した、いや、させられたんですね。もし裏切ればクリニカさんや大事な人が死ぬと」
驚いた顔で暫くノルトを見ていたが、やがて目を伏せる。
数秒、彼女の様子を見つめていたノルトがゆっくりと立ち上がる。
「メニドゥラさん。ひとつだけ、お願いがあります」
「なんだ」
「僕はメニドゥラさんと、キ、キス……したいです」
目を丸くしてノルトを見返した。
「は……ははははあ!?」
透き通るような白い肌は、あっという間に赤く染まった。
(ノルトじゃない。ランティエ様じゃ!)
(そうか。クリニカめ、レイドックの指輪の能力を使ったのか)
ノルトの体で捲れ上がったスカートの内側を拙い動きで弄る。
(ランティエ様が持っていたふたつのリング)
(レイドックの指輪はクリニカが)
ドーンの指先がひとつの金属のリングを探し当てた。
(そしてもうひとつは)
すぐにでも落としてしまいそうなそれを慎重に掴み、顔の前まで持って来た。
それは七色に煌めく美しい指輪。
(儂が持っている)
指輪を指に嵌め、
「すべての状態異常を、解除せよ!」
と叫んだ。
まるで自分の寝言の大きさで起きたかの様に目を開ける。
今、目を覚ましたような感じを受けたが、体の上には彼女に覆い被さるノルトがいた。
「な、なん……」
(まだ術が解けないのか?)
(いやでもこのノルトの重さ、感触は……現実)
更に周囲の暗く広い部屋を見、現実に戻ってきた事を確信する。
先程までのノルトとの淫らな行為が死霊レイドックによる呪いの淫術だとすれば、きっとあれは自分の中だけの夢か幻の類であったに違いない。
「ノルト、ノルト……」
ドーンの声で彼女の首元に顔を埋めていたノルトがゆっくりと震えながら辛うじて片目を開ける。
「やっと……起きたか。吾輩だ」
「やはりランティエ様か。面目ない」
「ノルトも吾輩もあの淫術には抗えん。虹の指輪はつけたな?」
こくりと頷く。
夢の中だけでなく現実でもつけていたらしく、その左手には七色に煌めくそれがつけられていた。
虹の指輪 ――
かつてメルマトラ国王だったヴィクトリアの配下で、抜きん出て有能だった死霊使いのリディル=バイドが作った指輪。
死霊使いのみ着用可能。
強い呪いがかけられており、着用している間は全ての身体能力が大幅に落ちる。
その呪いを受け入れる代わりに極めて短い時間、着用者の魔力を飛躍的に向上させる。
更にその時かけられている全ての状態異常効果を打ち消す。
「呪いのせいで全てのステータスは落ちるが魔力だけは飛び抜けて向上する。後は任せたぞ」
「お任せあれ」
ノルトの体をゆっくりとどかし、立ち上がる。
クリニカは驚いた顔をして口に手を当てた。
「あらぁ。ドーンちゃん、もう気がついたのお?」
「ああ。これのお陰でな」
左手の甲を顔の前に持ち上げ、クリニカに向ける。
「あれ? それ見た事あるわねえ」
顎に手をやり暫く考えていたクリニカがやがて大きく口を開けた。
「あ――! それ私がアクセサリーにしてた指輪じゃない! いつの間に盗んだのよぉ!」
「馬鹿者。ふたつの指輪はいずれもランティエ様のものじゃ。盗人猛々しい。ちょうど良いわ、この場でレイドックの指輪も返して貰おう」
頰を膨らませてドーンを睨んでいたが、不意に何を思い付いたのか、腰に手を当て前屈みになった。
「ウフフ。さっきどんな淫夢を見てたのか、教えてくれたら大人しく返してあげようかなあ?」
探る様に上目遣いでニヤリとするクリニカ。
ノルトとの痴態を思い出したドーンの顔は一瞬で赤くなった。
「う、ううううるさい! 問答無用じゃ! 来いっクリニカ!」
爆発的に霊気が噴き出した。
腰までの美しい直毛の黒髪は足元ほどまでの長さとなり、その毛先はそれ自身が意志を持つかのように様々な方向へとくねる。
瞳孔は猫の様に細くなり、肌の色は薄い紫へと変わった。
その強大すぎる魔力のせいで黒い霊気の隙間から見える魔神ドーンの姿は何重にもぶれる。
「魔族はどこまでいっても魔族。私には全く効かん」
クリニカの前に移動し、ドーンに体を向けて姿勢良く立つ。
だがメルマトラでメニドゥラがクリニカにそうしたのと逆で、今度はクリニカがそれを制した。
「ドーンちゃんは私をご指名だわ」
クリニカの瞳の色が黒みを帯びた血の様な赤となり、肌はドーンよりも濃い紫となる。
ドーンと同じく、クリニカもブレている様に見え、空気が歪んでいるかの様だ。
2人の魔神の圧倒的な力は城全体を震わせる程のものだった。
「うふふ。ファトランテ、デルピラ……これで3回目ね? 今日はやっつけちゃうわよぉ」
「それはこちらのセリフじゃ」
その時ロゼルタから念話が入る。
(ロゼルタ! 無事じゃったか!)
が、到底今、それに集中出来るような状況ではない。
それに気を取られた一瞬の間にクリニカの背後に無数の氷の塊が現れていた。
「『闇の氷塊ツォルサイト』」
恐ろしい勢いでドーン目掛けて次々と発射される。
それを皮切りに彼女らの闘いが始まった。
ドーンは高レベルのファントムを何十体と周囲に召喚し、クリニカの魔法攻撃へのバリアとした。
ブツブツと何かを言うたびに死霊の数は増えていき、浮遊するドーンがどこにいるかとてもわかりにくいものとなる。
一方のクリニカ。必殺の捕縛魔法はドーンが空中にいるため使いにくく、冥府の炎と氷で攻め立てた。
その闘いの最中、メニドゥラはノルトの側へと瞬時に移動すると意識を失っているその体を抱き、何か考えていたがスッと広間の端に移動し、そこに寝かせた。
「ノルト……すまないが私達はお前と共に歩むことは出来ない」
悲しそうにノルトに一瞥し、すぐにドーンの方へと爪先を向けた。
が、その足をノルトの手が掴む。
「メニドゥラさん」
「ノルト! 気がついたのか」
驚いて振り向いた。
「どうしてですか?」
「……」
「ひょっとしてあの時、メルマトラでリドに……?」
ハッとした顔でノルトを見る。
「やっぱり。契約した、いや、させられたんですね。もし裏切ればクリニカさんや大事な人が死ぬと」
驚いた顔で暫くノルトを見ていたが、やがて目を伏せる。
数秒、彼女の様子を見つめていたノルトがゆっくりと立ち上がる。
「メニドゥラさん。ひとつだけ、お願いがあります」
「なんだ」
「僕はメニドゥラさんと、キ、キス……したいです」
目を丸くしてノルトを見返した。
「は……ははははあ!?」
透き通るような白い肌は、あっという間に赤く染まった。
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